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江部航平
2023年10月1日 15:52
「ねえ果子。今度駅前にカフェができるらしいんだ。一緒に行こうよ」「嫌。どこにも行くたくない」 ソファに沈む彼女の声は薄く、どこか浮ついた調子だった。ソファから垂れた彼女の腕は白く、二の腕から肘先ときて手指に至る線がなめらかだ。その中を静脈の青が枝を分けていて、彼女はもう人間とは別の、透き通った神聖な生き物のようにも見える。 同居を始めてから彼女は部屋から出なくなった。外に出ようと誘っても、日