映画レビュー『あの夜、マイアミで』(2020年)
制作国
アメリカ
監督
レジーナ・キング
出演者
キングズレー・ベン=アディル
イーライ・ゴリー
オルディス・ホッジ
レスリー・オドム・Jr
他
この映画は実話が基になっていて、モハメド・アリが初めて世界チャンピオンになった夜に、モーテルに集まった4人の著名な黒人達の室内劇です。
集まった面々はモハメド・アリとその知り合いの3人、黒人解放運動指導者であるマルコムXと、人気アメフト選手のジム・ブラウン、人気ソウル歌手のサム・クックという超豪華メンツ。1964年に実際にあった有名な出来事で、この夜4人はモーテルで人種差別問題について語り合ったと言われています。ただしこの映画におけるその細かな内容は想像によるものだそうです。
ちょっとセンスの良いコメディタッチで、映画としても完成度が高く、また差別問題を取り扱った映画としても造詣の深さがあると思いました。
著名である4人が黒人の差別問題と戦うためにどうあるべきかと意見をぶつけ合う、面白い映画でした。モーテルの周りには噂を聞きつけて報道陣が集まってきています。この実際にあったエピソードを知らない人には内容がよくわからないかも知れませんが、周知の事として、ソウル・ポップスの創始者で伝説的シンガーであるサム・クックは、この語り合いの後日、不可解なトラブルに巻き込まれて銃殺されてしまいます。またマルコムXも翌年には暗殺されてこの世を去ります。この映画はその「後の悲劇」を予感させる所で終わるようになっています。
私はサム・クックが大好きなので、とても興味深い映画でした。ゴスペルを素地とし、華やかな音楽ビジネスの世界に身を置きながら、音楽のブラックパワーを確立しようとしたその志半ばで凶弾に倒れた、あまりに惜しい人物です。
2023年のいまだ解決しないアメリカの人種差別問題の、その大きな運動のうねりが始まった60年代の出来事として、考えさせられるものがありました。本作におけるその差別問題の議論は、同じ人種的マイノリティでありながら、各自に見解の相違がある事が表現されており、1964年の出来事を題材にしつつ、現代的な差別問題の掘り下げが観て取れます。差別はなくさなければいけませんね。
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