ミラノ風

主に映画の感想を書いています。

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最近の記事

映画レビュー 『監督・ばんざい!』 (2007年)

なんとも無茶苦茶な作品で、後半の展開には気味悪さすらあります。そしてまたそのような作品の嫌悪感も、北野武監督による意図的なものであるのは明白です。本作は作品単体で意味するものはなく、北野武というキャラクター性や、自己の映画キャリアとの連関性において意味を成す作品だと思います。 この作品は、前作『TAKESHIS'』と、次作『アキレスと亀』を含めて3部作を名乗っているそうですか、その直前に娯楽作として大ヒットした『座頭市』との作風の落差のありようは『ソナチネ』〜『みんな〜やって

    • 映画『メッセージ』(2016年) とドゥニ・ヴィルヌーヴ監督について

      この作品がSF映画として傑作であるのは周知の事ですが、ひとつ気になる事があるので書いておきます。 それは本作の監督であるドゥニ・ヴィルヌーヴについてです。 この映画には原作の小説があり、脚本化が仕上がった後でドゥニ・ヴィルヌーヴに監督の依頼があったという流れだったそうです。原作を読んでも映画のストーリー的にも、本作は監督が違えば全く違う風合いの作品になったであろう事が予測できる作品であり、それが独特のトーンを持つ作品に仕上がった事は、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のセンスが高く評

      • 映画レビュー 『プリデスティネーション』 (2014年)

        個人的に大好きなイーサン・ホークが主演しているSFサスペンスです。 ハイラインの古典SF短編を原作とした、タイムパラドックス物の作品です。まさにハイラインらしい、タイムパラドックスネタの作品であり、この映画はそれを忠実になぞりながらもプラスアルファの要素も含んでいます。イーサン・ホーク主演作品らしい中小規模の作品であり、大袈裟なCGもなく、ハイラインの世界にどっぷり浸かれる感じのSF映画でした。そしてイーサン・ホークが出演すればハズレはないですからね。その演技力によって作品

        • 映画レビュー『ブルーに生まれついて』(2015年)

          1950〜80年代に活躍していたジャズトランペッター、チェット・ベイカーの伝記映画です。白人であり、アイドル的人気とともに実力も兼ね備えていたジャズマンだったそうで、私はこの人を知りませんでしたが、本作はとても質の高い伝記・ジャズ映画だと思います。 チェット・ベイカーを演じる主演のイーサン・ホークが物凄い名演をしています。イーサン・ホークの事は漠然と知っていましたが、50歳を過ぎてこんな名優になっていたとは知りませんでした。ネットの情報によると、親友だった同世代の大スター、

          映画レビュー 『MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間』 (2015年)

          ジャズトランペッターで「ジャズの帝王」と呼ばれているマイルス・デイヴィスの映画です。当時映画館に観に行った時は、ジャズファンと思しき客層で館内は良い雰囲気でした。まず先に私の感想の結論を言いますと、マイルスを演じている主人公の俳優がハンサムでないという一点においてこの映画は残念でした。マイルス・デイヴィス本人は、絶世のハンサムです。そしてまたそのルックスと彼の音楽性とには連関性もあると思います。ですからその伝記映画を手がける時にはルックスというものが演技力より大事になるものな

          映画レビュー 『MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間』 (2015年)

          映画レビュー 『アキレスと亀』(2008年)

          私は北野武の映画を観る時に、感情移入とか、感動といったようなものは期待しないので、ストーリー上のテーマ性も気にしません。北野武監督作については、どんな映画的表現をしているのかという事に着眼して観る癖がついてしまっています。 本作についても、画家の主人公の人生を通して「芸術の事がよくわかった」などという事は思いませんでした。北野武の映画ではよく、とんでもない大馬鹿を主人公にしており、本作もそうです。私は、北野武という監督は馬鹿を描かせたら天下一品というように思っていて、そこが

          映画レビュー 『アキレスと亀』(2008年)

          映画レビュー『あの夜、マイアミで』(2020年)

          制作国 アメリカ 監督 レジーナ・キング 出演者 キングズレー・ベン=アディル イーライ・ゴリー オルディス・ホッジ レスリー・オドム・Jr 他 この映画は実話が基になっていて、モハメド・アリが初めて世界チャンピオンになった夜に、モーテルに集まった4人の著名な黒人達の室内劇です。 集まった面々はモハメド・アリとその知り合いの3人、黒人解放運動指導者であるマルコムXと、人気アメフト選手のジム・ブラウン、人気ソウル歌手のサム・クックという超豪華メンツ。1964年に実際にあ

          映画レビュー『あの夜、マイアミで』(2020年)

          映画レビュー『愛のコリーダ』(1976年)

          ネトフリにあったので観てみました。最初は再生しながら横目で別の事をしてたんですが、中盤からはちゃんと観ました。その程度の鑑賞での感想なんですが、この映画がセンセーショナルな作品だという事は以前から知ってたし、また阿部貞事件という実際にあった出来事だという事で、結末もわかっていたわけですが、横目で観ているうちに引き込まれてしまいました。それは絵作りが素晴らしかったからです。ほとんどのカットがフィックスで、ものすごく落ち着いた品のある画面になっており、カット割りやアングルもバシバ

          映画レビュー『愛のコリーダ』(1976年)

          映画レビュー『ルパン三世 バビロンの黄金伝説』(1985年)

          すでに忘れ去られた感のある、存在感の薄いルパン三世劇場版第3作目「バビロンの黄金伝説」の感想文です。 ルパン三世の劇場版といえば、第1作目の「ルパンVS複製人間」(1978年) と、2作目の「カリオストロの城」(1979年) が名作扱いされてますね。そしてこのふたつは作風が全く違うため「どちらがルパン三世の最高傑作か」という論争の種にもなっています。 そして2作目から6年の間を開けて公開された劇場版3作目の「バビロンの黄金伝説」については、全く語られることすらありません。

          映画レビュー『ルパン三世 バビロンの黄金伝説』(1985年)

          映画レビュー『荒野の殺し屋』(2017年) ※Netflix

          制作国:ブラジル Netflixの映画で、あまり話題にされないでいるようですが、「最近制作されたマカロニウエスタン風の良作映画」を探している者からすると、めっけもんでした。ちなみに物語の舞台がブラジルだそうで、言語はポルトガル語です。 話がよく分からない所があったり少し残念な部分もありましたが、マカロニ的な作風のジャンルムービーとして理想的な作品でした。ハードな娯楽作です。

          映画レビュー『荒野の殺し屋』(2017年) ※Netflix

          映画レビュー『ヒットマン:レジェンド 憎しみの銃弾』(2019年)

          「ヒットマン:レジェンド 憎しみの銃弾」 (2019年) 製作国:イタリア・ベルギー・フランス たまたま見つけて何気に観た作品ですが、なかなか面白かったです。 イタリア映画です。ジャンル的にはハードボイルド・クライムアクション、となるそうです。 邦題とジャケットデザインがいかにものありがちな感じですが、そのようなありがちなアメリカB級アクション映画よりは面白いです。本作もB級感がある作品ですが、それなりにめっけもんという感じの内容でした。 一生懸命作ったイタリア映画と

          映画レビュー『ヒットマン:レジェンド 憎しみの銃弾』(2019年)

          映画レビュー『ハスラー2』(1986年)

          「ハスラー2」 (原題: 「Color of Money」) 1986年公開 監督 マーティン・スコセッシ 出演者 ポール・ニューマン トム・クルーズ メアリー・エリザベス・マストラントニオ 他 子供の頃に観て以来、最近ふと見直してみたら、物凄い名作だと気づいたので感想を書きます。 子供の頃見た時は内容をしっかり把握できず、トム・クルーズがかっこいいなという位にしか受け止めていませんでした。 しかし見直してみると、ポール・ニューマンは本作でアカデミー主演男優賞を受賞し

          映画レビュー『ハスラー2』(1986年)

          映画レビュー『ペイルライダー』(1985年)

          なぜ「ペイルライダー」の感想をnoteで書くのか?…というと、特に深い意味もないんですが、この映画自体がなぜ作られたのかよくわからない映画なので、そこの所を解説したいと思います。 本作は1985年公開の西部劇なんですが、作品として特になんの特徴もなく、また可もなく不可もなく、作品としてあまりに必然性がないので逆に不思議に思えてくるような感じがする作品です。 ハリウッドで西部劇が量産されなくなって久しい80年代になっても、イーストウッドというスター俳優にとってだけは、西部劇

          映画レビュー『ペイルライダー』(1985年)

          映画レビュー『さや侍』(2011年)

          なぜ今さらこの映画のレビューをするのか、特に深い意味もありませんが、書きたいと思っただけです。 この映画は "起承転結" の "起承" までは普通に面白いと思いますが、"転" で突然主人公が切腹し、何がしたいのかよくわからないまま終わる映画でした。 ラッパー宇多丸氏は、本作の笑いが "テレビ的な笑いだ" と批判していましたが、それはそれでよくわからない批判です。テレビ的な笑いなどという共有の定義はそもそもありません。私はこれで問題ないと思います。 一番の問題点だと思うのは

          映画レビュー『さや侍』(2011年)

          映画レビュー『大日本人』(2007年)

          何を今さらという作品レビューなんですが、特に今だからこそ、といったような根拠があるわけてもなく、単に書いてみたくなっただけです。 なぜこの作品は不評だったのかを分析してみようと思います。 【ドキュメンタリーになってない】 本作は画面に映らない声だけの出演で、ドキュメンタリーディレクターによるテレビカメラの視点でほとんどのシーンが描かれており、その質疑応答によって主人公の素性が詳しく語られるという作風になっています。しかしドキュメンタリータッチと言いながら、本作はドキュメ

          映画レビュー『大日本人』(2007年)

          映画レビュー 『セッション』(2014年)酷評 ※ネタバレ

          『セッション』 2014年公開 監督・脚本 デイミアン・チャゼル 出演者 マイルズ・テラー J・K・シモンズ ★第87回アカデミー賞受賞  助演男優賞、編集賞、録音賞 酷評する事を忘れてはならない義務感でこの作品の感想を書いておきます。この映画は酷評されるべきです。 公開当時、本作には賛否両論があり「音楽の事をわかっていない」という批判もあったようです。私は、初見の時は珍しい内容なので面白いと思いましたが、しかしその後で考えれば考えるほどに、これはとんでもないマズい映画

          映画レビュー 『セッション』(2014年)酷評 ※ネタバレ