9年の時を経て
機内が揺れた。ミシミシと言う音ともにうわぁという声が響く。
羽田行きの飛行機はついさっき函館を離陸した。
いや、羽田行きではない。この飛行機は現実行きだ。
ひいばあちゃんの13回忌という名目に9年ぶりに過ごした函館での4泊5日も、もう終わった。
今は、夢なんじゃないかと思っている。
これから始まる現実の辛さよりも、楽しかった数日間への寂しさと、人間は年老いていつかは死んでしまうという儚さで、真正面から現実を直視するこどができない
そんなところだろうか。
いつも時間ギリギリを攻める私が2時間半前に空港に着いたのは、楽しみの表れだった。
ワクワクした気持ちで荷物を受け取り、レンタカーで向かった先は、おじちゃん夫婦の新居。
茅ヶ崎に住んでたおじちゃんたちは、定年してから2人の地元の函館にマイホームを建てた。
前回函館に来た時はまだ茅ヶ崎に住んでいたから、家に入るのは初めて。
海外を何回も旅するジェントルマンこだわりのお家。
入ると、ここはヨーロッパなのかと錯覚する景色が広がっていた。
クラシック好きのジェントルマンの趣味で、棚にはすごい量のCD。
これまでは、誰がこんな本見るんだ、買うんだ、と思って見向きもしなかったゴッホや有名な人物の作品が載った本や、その他海外アーティストの作品が載った本など、とにかく私の中での“普通”とは到底遠く、興味しかなくなった。
私たちの到着に合わせて、もう1組のおじちゃん夫婦が特特上寿司を持って現れた。
姪っ子の子どもという立場である私たちは、おじちゃんにもおばちゃんにも何もしてあげたことがないのに、何から何までしてくれるこの始末に、「親に孫の顔を見せろ」とはこのことか、と感じた。
お酒好きの母の血は間違いなくこの家の血だと確信した。
なくなったと思えば、新しい北海道ビールの缶を開けるプシュッという音。
全てジェントルマンのシワザだ。
月に10回行くという、趣味のゴルフで真っ赤に焼けたジェントルマンの顔はさらに赤くなっていた
運転できる大人になった私たちを存分に利用して、母は気にせず飲んでいた。
ここに来たらいつもは大人の母もどこか子ども。幸せそうだった
スシローの3倍は分厚くて大きいネタの寿司とオレンジ色のメロンに正直なところシロップ薬の匂いと味のガラナ。
初日のおもてなしにお腹も心もいっぱい。
そして何より9年前と変わらないおじちゃんおばちゃんたちが私は1番だった。
夜、runningをしながら見た、勝浦よりキラキラした、夜の海と街並みのせいで増してしまった帰りたくないという想いは、ホテルのサウナで汗とともに流した。
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