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女子高生が銀行を潰しかけたお話     (愚痴日記 #19)

GW最終日。

お天気がイマイチだったから、
お買い物に出るのは止めて、
スマホ見ながら部屋でゴロゴロ。

宿題として見る羽目になった映画「メリーポピンズ」。
そこに出てきた取り付け騒ぎが、現代でも起こっていることが分かった。
で、昔もあったのかなあ・・・と探してみたら、
面白い(不謹慎かしら・・・)事例を発見した。

豊川信用金庫事件、女子高生が銀行を潰しかけた・・ていうの。

 1973年12月、愛知県の豊川信用金庫に、「倒産する」という噂が流れ、大量の預金が流出する事態に陥ったの。
 当時の新聞には、「5000人、デマに踊る」(朝日新聞)、「デマに踊らされ信金、取り付け騒ぎ」(読売新聞)なんて見出しが出たのね。
 完全なデマだったから、警察が捜査に乗り出した。そしたら、意外な事実が明らかになったのね。

 最初に登場するのは3人の女子高生。
 豊川信用金庫に就職が決まっていた子に対して、残りの2人が「信用金庫は危ないよ・・・」と言ったんだ。
 もちろん、女子高生が信用金庫の経営情報なんて持ってるはずがない。2人は「強盗とかに入られるから・・・」という意味で、軽いジョークのつもりで言ったの。
 ところが、信用金庫に入るくらい真面目だったその子は、家に帰ると親戚の1人に「信金って危ないの?」って聞いた。
 信用金庫の具体名を出さなかったんだけど、その親戚は豊川信用金庫のことだと考えて、本店近くに住む別の親戚に、「危ないのか?」と尋ねたんだ。すると、こんどはその親戚が、知り合いの美容院の店長に、「豊川信金は危ないらしい」と話した。
 美容院なんで噂の宝庫よね。で、ここから、伝言ゲームが始まったんだ。
信用金庫を巡る噂は、「危ないのか?」から「危ないらしい」となり、やがて「潰れる」となり、「明日はシャッターが上がらないだろう」となってゆく。ついには、「5億円を職員が持ち逃げした」、「倒産整理の説明会が開かれている」、「理事長が自殺した」と、デマは変化しながら拡散していったんだ。
 その結果、信金には預金を引き出す人が殺到し、大混乱になっちゃった。 「経営は大丈夫です」って言っても、誰も信じてくれない。このままだと潰れちゃうってことで、信金側は奥の手を繰り出す。
 日銀から大量のお札を取り寄せたの。そして、外からも見えるようにと、窓口に積み上げた。その大きさは高さ1メートル、幅5メートルだったというからビックリね。「皆さん、お金は十分にあるから、ほんとうに大丈夫なんです」ってメッセージだったわけ。
 この作戦に加えて、上部組織である全国信用金庫連合会や日銀、警察に新聞も協力したことで、ようやく騒ぎは収まった。約14億円もの預金が流出した豊川信用金庫だったけど、破綻の縁からなんとか抜け出すことができたの。そして、現在も地域経済を支える金融機関として、経営を続けているんだって。
 でも、この取り付け騒ぎ、一週間くらいかけて広がっていったの。噂の伝達手段が、顔を合わせてのおしゃべりだったり、電話だったりしたからね。昔の取り付け騒ぎは、のんびりしていたんだ。

 でも、今は違う。SNSなどのデジタルコミュニケーションによってあっという間に取り付け騒ぎが拡散しちゃう。これが「デジタル・バンク・ラン」だって、プロデューサーSが教えてくれた(「愚痴日記#18)。
 預金者がネット上で預金を引き出しちゃうから、銀行に走って行って、窓口に殺到することもない。静かに、でも、すごい勢いで預金が流出するから、「サイレント・バンク・ラン」、とも呼ばれているんだってさ。
 豊川信用金庫事件では、窓口にお札を積み上げたけど、今は意味ないよね。窓口に来る人なんてあまりいないからさ・・・。

 それにしても、ホントに噂って怖い。女子高生たちも、まさか、自分たちの一言が、新聞に出るほどの大騒ぎになるなんて、思ってもみなかっただろうね。やっぱり、お金の事となると、みんな真剣になるから、特に気をつけないと。
 私もオンエアでの不用意な一言で、銀行を潰しちゃうかもしれない。
 気をつけま~す。


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