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ドル紙幣って、地域で違うんだ    (愚痴日記 第4日)

 「アメリカの中央銀行システムって、ややこしいだろ。」

 先輩キャスターMに、その仕組みをレクチャーされていた私を見ていた、プロデューサーのSが声をかけてきた。
 
 もう、おなかいっぱい。
 放っておいて欲しいので、
「中央銀行の機能を持つ連邦準備銀行、地区連銀というのが12あるものの、それぞれにお札を出していたら混乱するので、統一した組織が作られているわけですよね。日本ではそれをFRBと呼んでるけど、これは間違ってて、アメリカ本国ではFedと呼ばれています。」

 Mに教えられたことを、そのまま言ってみた。
 私って、完璧じゃない?

「Mはそう言っていたんだ・・・。でも、Mもちょっと間違ってるね。12の地区連銀ごとに、違うお札を発行してるんだよ。」

お札が違う?
アメリカ国内で、違うお札が発行されているってわけ?
怪訝な顔をしていた私に、Sは財布からお札を取り出した。
アメリカの1ドル紙幣だ。

「このマークを見てごらん。」

アルファベットの「L」が描かれていた。

「このマークは、お札が発行された連邦準備銀行を示しているんだ。このお札は、サンフランシスコで発行されたものだ。」

「何でわかるんですか?」と聞くと、
マークをよく見ろという。
「L」を取り囲むように、アルファベットが描かれている。
「読んでみろ」とS。
 小さな文字に目をこらす・・・。
「FEDERAL RESERVE BANK OF SAN FRANSISCO CALIFORNIA、って書いてあります。」 
「よくできました!」

 中学生だって読めるよ。ほんと、馬鹿にしている。

「サンフランシスコ連銀は、12ある地区連銀の最後だから「L」なんだ。ちなみに「A」はボストン、「B」はニューヨーク、「C」はフィラデルフィア・・・という具合だな。」

「アメリカの1ドル紙幣には、12種類あるということなんですか?」
「その通り。地区連銀ごとに発行されているからね。もちろん、どのお札でも同じように使えるけど。」
「デザインが新しくなった際、ほとんどの紙幣でこのマークが消えてしまったけど、1ドルと2ドル紙幣は昔のデザインなのでそのまま残されている。そのほかの紙幣は、紙幣のシリアルナンバーの下に『A1』(ボストン)、『B2』(ニューヨーク)などと記されるだけになった。いずれにしても、ドル紙幣は、12の地区連銀がそれぞれ発行しているというわけなんだ。」

紙幣が地区ごとに違っている。
東京と大阪と福岡で、それぞれ別のお札が印刷されているというわけよね。
アメリカって、変な国。

「そもそも、なんで中央銀行が分かれているのかって思うよね。アメリカという国は、歴史的に州をはじめとした地方の独立性が強く、それを取りまとめた"United State"が、国家になっている。法律も州ごとに異なっているし、警察組織も地域の警察が基本だ。全米をカバーする組織がFBIだけど、その捜査権はテロとか広域犯罪に限定されていて、基本的には州警察や大都市の市警、例えばニューヨーク市警などが動いている。中央銀行のややこしいシステムも、そうした歴史を背景にしているというわけだな。」

ふーん、そうなんだ。

去年、ボストンを旅行した時に、現地で両替した1ドル紙幣があるはずだ。マークは「A」かな?
部屋に帰ったら、見てみようっと。

Sの話、ちょっとためになった。
合コンで自慢できるかも。
私、経済ニュースのキャスターしてるので、
詳しいんです・・・、てな感じで。
お財布に1ドル紙幣入れておこう。

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