見出し画像

JPHACKS2023優勝した話-AwardDay-


渋谷事変

AwardDayの審査は自分たちのプロダクトを8分間で紹介するプレゼン大会とブースに分かれて自分たちのプロダクトをポスター発表するEXPOの2部構成で行われる
このため我々はプレゼン資料とEXPO用のポスターは最低限準備しなければならない
また事前の打ち合わせプレゼン用にプロダクトの紹介動画を作っておこう、と話し合っていた

ただ、プロダクトの改善はギリギリまでかかり、AwardDay前日の時点でこの3つは影も形もない状態であった
ともかく、ハードウェアが私の手元にある関係上は動画の素材は私が撮らねばなるまいと思っていたので、AwardDay前日は早く起きて動画の素材作りのための撮影を実施した
M5 StickC Plus本体のLCD画面にも何か出た方がよかろうということで、動作状態を表す単語が表示されるように組み込んだ
本当は日本語で表示したかったのだが、フォントが容量制限で入らず断念した

この際、”乾燥中”を表現しようとしてこの世に生まれた新単語が「Drying」である
ちなみDryは形容詞なので進行形にはなり得ない
あと我々が全員学生生活最終年次であることにちなんでつけた参加チーム名「LAST YEAR」も「昨年」という意味であると指摘されて気づいた
これは現代社会の英語教育の敗北と言っていい
知らんけど

動画の構成はなんとなくデモを意識して、

  1. 家に人が帰ってきて

  2. 革靴を脱いでセンサーユニットをセットし

  3. くつろいで待ってたらLINEに乾燥完了の通知が来て

  4. シューキーパーを入れに行く

といった事を考えていたので、とりあえずは一連の動画を撮影し、あとは宿で調整するかーと思って新幹線の中でざっくり編集しながら上京した
追加でいくつかシーンを撮るかもと思っていたので、三脚を担いで行く羽目になったのだが、まぁいい思い出である

ポスターはTokuさんが大まかに構成を作ってくれ、みんなで意見交換しながらブラッシュアップしたあと、それをどこかで印刷する段取りだった
めちゃくちゃ探した結果、たまたま渋谷で土日でも24時間ポスター印刷してくれる店舗が見つかったので、Tokuさんに渋谷で待機してもらって完成版データを印刷してもらう手筈とした

TokuさんはAwardDay前日、朝7時から革靴を履いてやる気満々であった
どうやら前日の最終確認用として気合の入ったデータ取り用の革靴を提供してくれるつもりだったようだ
私が宿に着いたのは17時、Mottyさんが20時に到着し、渋谷のカフェからリモートで参加のTokuさんと繋がってポスターの最終調整が始まる
議論は白熱し、途中休憩や食事も挟みつつ、最終的に皆が「これで行こう!」と納得したポスターができて、印刷を終えてTokuさんが渋谷を後にしたのは23時を回ったあたりであった
渋谷って夜の帳下りると本当に出られなくなるんですね
とはTokuさんの弁
2023/11/18、渋谷事変は実際に起こっていたのだ
ちなみに我々が取っていた宿は浅草橋である

無事完成したポスター

「くさい」という歓声

Tokuさんが我々の宿に到着したのは24時過ぎ
私はTokuさんの移動時間中にプレゼン用動画の追加素材の撮影と編集作業をしながらMottyさんの「いやー実は昨日からサーバー死んでてですねぇ」という驚きの打ち明け話を聞いた
Mottyさんの合流が遅くなったのは関東住まいの有識者のところに助けを求めに行っていたから、だそうだ
おかげさまで今はめちゃくちゃサーバーが安定しているらしい
災転じてなんとやら、ハッカソンってのはこういうことなのかもしれない

Tokuさんが到着するなり、我々は最後のデータ取得にかかった
なんせ17時間ものの貴重な革靴なわけで、絶対にミスるわけにはいかない
ありとあらゆる環境をベストな形に整えた後、厳かにTokuさんは革靴を脱ぎ、すぐにセンサーユニットをセットする
右靴にセンサーユニット、左靴にセンサーだけを設置した比較実験である
本当に緊張の一瞬ののち、センサーユニットは靴内の湿気と高温を検知してブロワファンが回り始めた
そして実験用のLINEにはちゃんと乾燥開始の通知が届く
徐々に下がっていく湿度
そしてブロワファンの回転数が落ちてセンサーユニットは冷却モードに移行する
5分ほどしたのちにファンが止まってLINEに乾燥完了の通知が飛んだ

ここまでは成功
あとは効果確認である
靴の中に手を入れてみた触感と、あとは嗅覚による確認を行う
まずは左の靴
靴の中の手触りがなんかぬめっとしている!臭いは…..くさい!!
次に右の靴
靴の中の手触りがサラッとしている!あれ?臭いはしない?

Mottyさんにも同じように確認してもらう
左の靴!ぬめっとしてる!くさい!
右の靴!サラッとしてる!!くさくない!!

Tokuさんには順番を逆にして確認してもらう
右の靴!サラッとしてる!くさくない!
左の靴!ぬめっとしてる!くさい!!!

くさい!!!!!!

大成功、大歓声である
人生で靴がくさいとかくさくないとかでこんな盛り上がったことはない
Tokuさん、足がくさいって言ってごめんな、でも17時間はやりすぎだぜ

お気づきいただけたであろうか

こんなに盛り上がっている我々が、ここまで全くプレゼン資料を作っていないことに

ひとはしゃぎした我々は一旦休憩を取って深夜作業を再開する
私はここまでの中でプレゼンの構成台本を思いついていたのでざっと書いてTokuさんにプレゼン資料の作成をお願いした
実際17時間ものの革靴が乾くまでの時間が5分弱だったので、プレゼン用と思って途中まで制作していた動画はEXPOのブースで無限再生する用にして、プレゼンの中でデモを行う方針に切り替えた

ここでこの時書いた台本を残しておく

  • このプロダクトの必要性を訴える時間(寸劇1分)

  • Mottyさん革靴素人の意見→革靴のメンテ全然わからん!もう靴がボロボロだ!!

  • Tokuさん革靴玄人の意見→いい革靴買ったから履いた回数とか育て方でマウント取りたい!

  • 革靴の記録が見れたらいいのに!!

  • デバイスの概要説明(1分)

  • デモ(4分)

  • その場でTokuさんが靴を脱ぎ、センサの電源オンして靴に入れる

  • 乾燥中にアプリ機能の説明

  • シューキーパー入れるくだり

  • 今日のデータの話(2分くらい)、このシステムの有用性の説明

  • 17時間

「今日のデータの話」が生々しいw
しかし、デモをちゃんとやることにしたこの方針転換はすごく良かったと思う
深夜作業では私が動画編集し、Tokuさんがプレゼン資料を作ってくれた
私は動画編集終わりで寝てしまったが、なんとTokuさんは徹夜でプレゼン資料を仕上げてくれたらしい
AwardDay当日の朝、メンバー同士でプレゼン資料を一緒に手直しして、すべての準備物が出来上がったのは午前7時を回った頃であった

AwardDay

AwardDayは慌しかった
到着、即プレゼン大会、昼飯、即EXPO、結果発表みたいなイメージでバタバタしていた記憶がある

AwardDay会場準備の様子

AwardDay会場は東京大学武田先端知ビル
人生で東大に行くことがあると思わなかった
赤門を見ることは叶わなかったので、全然実感はなかったけども

さて当日朝7時にプレゼン資料が仕上がった我々にそのスケジュールでプレゼン練習するタイミングはない
とはいえ、この時の私は睡眠不足も相待って少々ハイになっていたので、まぁいうていけるでしょの精神になっていた
周りのみんな真面目そうな発表をするんだろうし、うちら寸劇とか入ってるし、まぁ笑いが取れたらそれでええか、みたいな

プレゼンの様子

多分周囲の人たちも我々のチームとさほど変わりなく寝不足だろうと思ったのでMottyさんには冒頭の寸劇でとにかく大声を出して注目させる、ということをお願いした
この作戦が上手くハマってくれたので、あとは司会に徹しつつ、脊髄反射でしゃべるだけの簡単なお仕事
正直こっから後のプレゼンやってる時の記憶はさっぱりないのだが、ぶっつけ本番ながら大体考えていた台本通り喋れたし、デモも時間内で成功した(革靴がちゃんと乾いてCompleteと表示された)し、なんか分からんけどめちゃくちゃウケたし、後何より時間が8分ぴったりで終われたのが気持ちよかった
時間は上司、これ一番大事

おかげさまでEXPOでのブースに来ていただいた方たちの感触もよく、後に企業賞を貰うことになったウルシステムズの漆原さんには沢山褒めていただいたのが印象に残っている

EXPOの様子

あと何人かに言われたのが「あんなに都合よく革靴が時間内に乾くわけないんだから、タイマー仕込んで乾燥開始から4分経ったら画面に”Complete”って出るようにしたんじゃない?」という疑問
せっかくなのでこの場を借りてはっきり明言しておこうと思う
その手があったか!!!

結果発表

EXPOの好感触とは裏腹に正直我々企業賞は奮わなかったと言っていいと思う
最後の最後にウルシステムズ賞をいただけてめちゃくちゃ報われた思いだったが、結果的にはあれだけプレゼン終わりに「確実でしょ」なんて周囲に煽られたBest Audience Awardも同率2位だったし、心の底から「あーま、こんなもんかー」って感じでMottyさんと「優勝はアレかな?いやアレかな?」と無邪気な予想大会をしていた
本当に自分たちが選ばれることはないと思ってたので、
あーJPHACKS楽しかったなー、懇親会どこのチームと話そうかなー
とか思っていた

江崎先生が「Best Hack Award欲しいひと!」とボケられた時に真っ先に手を上げれたのも気の緩みからである
完全にゆるゆるな状態でその時はやってきた
「JPHACS2023 Best Hack Award は KB 2315 B4_M2_D3 LAST YEARの革靴メンテなんです!です」
は?
今KBって言った?TKじゃなくて??
えっ俺ら?
うそ、いやそんなわけ…
といった風に久々に脳みそがバグるのを感じた
その結果、優勝者のコメントを…とマイクを持たされた瞬間出てきた言葉は10年くらい前の声優アワードで神谷浩史が言っていた
「高いところから失礼します」

直近の学園祭学園のライブMCで聞いた
「おんぶにだっこにベルトコンベアでここまでこれて」
だった(あたおかポイント)

そこから先の記憶はあまりなく、いっぱい褒められたり、インタビューされたりして、気がついたら新幹線に乗っていた
正直もっと他のチームと交流したかったし、次の日ちゃんと出社したの今考えるとマジで偉い!
(ごっつええ感じの世界一位のコントのノリで出社した)

まとめ

もう記憶の限りで書いていたらJAPAN誌の2万字インタビューくらいの長大さになってしまった
と思ってnoteの機能で確かめたら本当に2万字弱ありました
全部読んでくれた方、お付き合いいただきありがとうございました
意外とこういう作業好きなので、これからもいろんなテーマでちょこちょこ書いていきたいと思います
気に入っていただけたら幸いです

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?