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社会科準備室を掃除

 集めた提出物を置く場所がないので、ふと、思いついた。
 そうだ、社会科準備室っていうものがあるんだった。あそこに置けばいいんじゃない?




 提出物を抱いて、職員室の鍵BOXから社会科準備室の鍵を取る。
 階段を上って3階に上がると、図書室。その向こうに社会科準備室はある。
 3階の廊下を歩いていると、中庭の向こうに、去年の若者たちが問題を解いている教室が見える。中間考査中。教室の窓から、彼らの肘から上の橫姿が見えている。
 そのまま、進んでいくと、社会科準備室。社会科準備室・社会科教室の前の中庭には、3Fまで余裕でとどくほどの大きな木が2本生えていて、ここはまるで「ジャックと豆の木」状態だ。



 実は去年まで、わたしは社会科準備室にほとんど行ったことがなく、鍵のありかさえ知らなかった(知ろうともしなかった)が、今年来られた新しい地歴科のT 先生が、親切にも、
「ここに鍵がありますから、使ってください。」
と、教えてくださった。
 なんと、きちんとした紳士な方。まだ、何がご専門かさえ、わたしは知らなかったりする。前のM先生は大筋さえ正しければ逆に細かいことはあまり気にしない、日本史の先生だったけど。



 さて、はじめて鍵を使って開ける社会科準備室……。…おじゃましま……す?……。









 あれ……?








 お~!! 想像の10倍きれい!










 前に来たときは、地球儀とか、大きな世界地図とか、古い教科書見本とかが、出しっぱなしになっていて、たぶん代々散らかったまま。
 誰かの家の倉庫みたいになっていたのに、今日はちゃんと地球儀は棚の上に、世界地図は壁に、教科書見本は本棚に、ちゃんと収まっている。

 どうやらM先生が、転出ついでに片付けられたもよう。知らなかった……。





 提出物を、ほこりをかぶった4つある机の1つに、適当に重ねて置いて、そのついでに、入り口とは反対側の窓から、専門棟との間の中庭を見下ろすと、こちらの中庭には、植えられた何本かの木と、草が生えて生態系の出来ていそうな池がある。
 何か、魚とか、住んでいるのかな……?



 職員室と違って、静かで、なんかいいところね。
と、思う。
 なんだかここって、屋根裏部屋みたいじゃない?

 T 先生のじゃまにならないように、T 先生が授業の間だけ、提出物のチェックなんかは、ここに来てやろうかな~、と、思いたつ。



 



 ちょっと、蛾の亡骸やほこりが床に積もっているので、社会科教室から箒を持ってきて床を掃く。机や棚にもほこりが積もっているので、置いてあるぞうきんを廊下の水道で勝手に濡らして拭く。
 棚に、オーストラリアのお土産らしき、手が洗濯ばさみのようになっていてくっつけられるコアラの小さなマスコットがたくさん、ごちゃっと置かれていたので、あちこちにくっつけて飾ってみる。内線電話のそばにある、小さな古いカレンダーを捨てて、「今年のを家から持ってきてあげようかな~」と思う。





 T 先生はこんなことでは、きっと気を悪くされたりなんてしないだろう。

 あと……。
 M先生、ずっとけっこうおおざっぱ派だとか、ごちゃっとした机だとか(自分のことは棚に上げて)思っていて、ごめんなさい。
 3年間、大変お世話になりました。わたしたちにこんなにさっぱりした準備室を残してくださって、ありがとうございます。

と、伝えられるなら伝えたいものだ。
(”おおざっぱ”と”ごちゃっとした”のところは省いて。)

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