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予備校帰りの電車の中で

 四月のことである。

 とある予備校生が電車で帰って来る夜の7時半ごろ、わたしの古いほうの勤務校のソフトテニス部の一団が、試合帰りで、ぞろぞろと電車に乗ってきたらしい。
「今日、古いほうの勤務校のソフテニ部に電車であったよ。やばい強豪校のオーラを出しとったから、すぐ分かった。」
と、帰ってきたとある若者は言う。

わたし:「へぇ、何か言ってたん?」
とある予備校生:
 「あ~、しゃべりはしたよ。オレが座っとるところになぜか、古いほうの勤務校生が来たんよ。生井金太郎が『あー!とある予備校生さん、こんなところで何してるんすか!』って。最近生井金太郎、なんでか敬語になったんよ😊。でも、みんなお母さんのことはぜったい言わんのよ。気をつかっとるんかね?」
わたし:「さあ、もう忘れてるんじゃない?」
とある予備校生:
 「でさあ、生井金太郎がやばいことになっとるらしいんよ。」
わたし:「へぇ、どうしたん。」
とある予備校生:
 「団体メンバーの座を剥奪されそうにになっとるんだって。」
わたし:「あらまあ、かわいそうに。」
とある予備校生:「誰にとられそうになっとると思う?」
わたし:「さあ……、誰?」
   (そんなこと分かるわけない。生徒の部活事情なんて。)
とある予備校生:「当てたら今日のお風呂はオレが入れてやるよ?」
わたし:!(急にやる気になる)

 う~ん・・・・・、と、頭の中にソフテニ部の後衛メンバーを思い描く。

わたし:「あ!木下斗真くん(仮)じゃない?」
とある予備校生が目を、パッと見開く。
とある予備校生:「うわ~!!正解!!なんで当ててくるんよ?」
わたし:
 「やっぱりねー。木下斗真くん(仮)、なんか授業中とか安定感あったからね~」
            
 木下(仮)くんは、あの、早弁ばかりして、元気あり余るワイルド科において、いちばん落ち着いて地味にしっかりしつつ、とても人当たりのよい少年だったので、だんだんいい意味で目立ってきてた少年であった。スーパープレイは出来なくても(出来ないかどうか知らないけど)、ああいう人がいてくれるから、世の中は回るんじゃないかと思う。
           
とある予備校生:
 「そうなんよ、木下斗真くん(仮)、すごくつき合いやすい、いいやつなんよ。プレイはね、ほんと安定しとって、隙がないんよ。
 どこ打ってもちゃんと拾ってくるって言うか、へんなやらかしミスがないから、やりにくいんよね~。
 最近その木下(仮)くんの才能が、古いほうの勤務校のエグい練習量で花開いたみたいでさ、絶好調で前の試合で大金星を上げてさ、生井金太郎もうまいんだけどさ、今勢いがあるのは、木下(仮)くんのほうでさ、……」

 と、とある予備校生、去年のインターハイ予選の思い出に浸りはじめる。

とある予備校生:
 「でもオレは、その木下(仮)くんには対戦して勝っとるからな ♪ 覚醒前の木下(仮)くんやけどな ♪  まあ、オレのほうが学年上なんやし、あたりまえっちゃあたりまえなんやけどね。それにオレがうまいんじゃなくて、後衛がうまいだけなんやけどね。」


 とある予備校生は、去年のインハイ県予選では、この木下(仮)くん戦のあとの生井くん戦で、フルセットで先に2回マッチポイントを握ったものの、最後に生井くんの驚異の粘りで得点をひっくり返されて、競り負けてしまって、かなり長いこと心を失っていたっけ。
 もうあれから1年!なつかしい!
 「いやぁ~、今までの中で一番いい試合やったんよぉ~。ぜったい◯◯大会(地方大会)出れると思ったんやけどな~。」と、今でも何回も思い出しては、幸せな思いに浸るとある予備校生……。


 さて、そんなわけでそこからは、とある予備校生が、いかにして去年のインハイ県予選で木下(仮)くんに勝ったか、という話が嬉嬉として始まってしまったので、割愛。



わたし:ふうん、楽しくてよかったね。……で、ほんとにお風呂入れてくれるの??
とある予備校生:え~~、……やっぱお母さん入れて。
わたし:うわぁ~、やっぱり~。
と、お風呂を入れに行くわたし。


つづきは次回。

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