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もうひとつの童話の世界、11邪鬼とあまのじゃく3/3

邪鬼とあまのじゃく

 さあ宿題のはっぴょうのじかんがきた。
 じゅんばんに黒板のまえにでて、はっぴょうしていく。
 そして先生にノートをみせると、そのばで、いちじゅう丸か、にじゅう丸か、花丸をくれる。
 ぼくのばんがきた。邪鬼がランドセルから顔をのぞかせて、
「ええか、花丸とったらアカンぞ。」
 ぼくは、小さなこえで邪鬼にいいかえしてやった。
「ぼくは、あまのじゃくやで。」
 そして、はっぴょうした。
『あたしが買いものにいっているあいだに、いえをきれいにかたづけてくれました。うれしかったので今晩はミノルのすきなハンバーグをつくってあげました。』
 ノートを先生にみせると、先生はぼくがかいた字か、ママがかいた字か、かくにんしてから、クスッとわらって、大きく花丸をくれた。
 よっしゃ、やった!
 これでカツカレーは、いただきのごちそうさんや。
 せきにもどると、邪鬼がなんで花丸なんかとるんや、という顔をして、ぼくをにらんでる。
 ぼくは、邪鬼のくやしそうな顔がおもしろくて、わざとアッカンベーをしてやった。
 しかし、きをつけな邪鬼はぜったいに、しかえししてくる。
 ぼくはいえにかえるまで、ずっとノートをふくのなかにかくしてた。
 よくみると邪鬼はランドセルのなかをごそごそさがしてた。
「おっとどっこいや、おれはあまのじゃくやけど、やるときはやるんやで、」と、いってやった。
 邪鬼はうらめしそうに、ぼくをにらんでた。
 いえに帰って、ママに花丸をみせると、その晩はちゃんとカツカレーになった。
 おいしそうにたべるぼくの顔を、邪鬼はいつまでもくやしそうににらんでた。
 次の日、こんどはおじいちゃんの月命日で、おしょうさんがお経をあげにきた。
 邪鬼は、にくたらしそうに、
「おまえとはもうやっとられんわ。」
 といって、こそこそとおしょうさんの袂にもぐっていった。
 お経がおわって、おしょうさんがゆっくりお茶をのんでいるとき、
 ぼくはきいたんや、
「おしょうさんは、邪気がみえるんか?」
 おしょうさんの目が一瞬キラリと光った。
「見えるといえば見える。見えないといえば見えない。
 わしの法衣の袂からではいりしても、きにはしていない。」
 そういって、大きくハハハとわらうと帰っていった。
 ぼくは、かんしんしておしょうさんをみおくった。
 するとおしょうさんの法衣の襟首から邪鬼が顔をだして、もうおまえとは、つきあいきれんわ、というように、にくたらしいくらい大きなアカンベーをしてきた。
 ぼくもまけずに、こっちこそ邪鬼のおかげでほめられてばっかりや、とアカンベーをかえしてやった。
 邪鬼がおらんようになって、せいせいした。
 でも、けんかあいてがおらんようになって、ちょっぴりさみしい。
 つぎの月命日に、またきてもええで。
 ぼくは、あまのじゃくやけどな。


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