[小説] のっとんの地震記録-令和6年石川県能登半島地震-
のっとんは、髪の毛が能登半島型になっている、男の子。家は、金沢。実家は、珠洲。塩田を使っての塩作りが有名。年末年始に帰省する。
ある日、のっとんは塩田に出て、のとじいが作る塩作りのお手伝いをしていた。すると…
(地震速報の音)
(津波警報)
「ギャー!!」
のっとんが叫ぶ。津波がのっとんに迫ってくる。のっとんは、山手に逃げ込んだ。
その頃、のとじいも作業をやめて、
「山手に!」
と家の中に向かって叫び、それから走っていく。家族全員無事だった。
のっとんたちは、山手にある公民館に避難した。のっとんは、後ろから迫ってくる津波を見ていた。それを記録し始めた。と言っても、文字が震えて書けてないが。
「怖かった…」
のっとんの目には、涙が溢れ今にも泣きそうだった。お母さんに抱きついて離れなかった。しばらくして、津波を見た話をし、お母さんの胸の中で泣いていた。
これが、のっとんの令和6年石川県能登半島地震の体験だった。
次の日、のっとんとのとじいは、家の方を見に行った。津波に飲まれて、建物は潰れ、跡形もなくなっていた。2人は何も言えずに、立ち尽くすだけだった。のっとんは、のとじいの足にしがみついて
「津波、怖かった…塩、また作れる?」
と聞いた。
「このまんまじゃ、わからん」
のとじいの力ない声。のっとんはのとじいの塩作りを手伝えないと思うと寂しかった。涙がポタポタと落ちた。塩田も、隆起したところがあったからである。
「やだよ!…、やだよ!…」
「隆起しちゃあ、あがったりだよ」
「ゔぇーん、じいがやらんかったら、…」
「仕事があるだけ、まだマシだな」
のとじいは、仕事を続ける決意をした。のっとんも一安心したように、のとじいの足から手を離し、のとじいの横に立った。
のっとんたちに支援物資のご飯やおかずが配られた。レトルト食品が多い。水、電気が不通のため、冷たいものが多かった。
「そろそろ、温かいの食べたい」
のっとんは思っていた。
次の日、炊き出しが行われた。のっとんお待ちかねの温かいご飯。のっとんは、嬉しくて飛んでいった。
「美味しい!!」
のっとんは、ニコニコしながら、ご飯を頬張っていた。のっとんの家族全員、幸せを感じていた。その夜は、レトルト食品が配られた。
のっとんは、次の日のとじいと一緒に塩田の隆起したところを見に行った。それから、液状化がひどかった内灘まで、車を走らせた。そこには、のとじいの知り合いがいるようだ。が、道は隆起して、コンクリートがめくれているため、ガタガタでジェットコースターのようだ。のっとんは、何とも言えない感じを我慢しながら、耐えていた。その日ものっとんの記録は続く。
その日からのっとんは、地震の資料館ができたら、語り部をしようと思うようになった。語り継ぎたいと思うようになり、記録はどんどん細かくなった。
それから1年。のっとんは、地震の資料館の語り部になった。令和6年石川県能登半島地震を語り継ぐ役割を果たす。
(終わり)