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夏休みの終わりに、ちょっとおもしろい科学のお話

今日はいきなり世界地図から。


この地図を見て、何か思い浮かぶことはありますか?
特に、中央下のアフリカ大陸と、中央左の北米・南米大陸の海岸線に注目。

あるとき、ドイツの気象学者アルフレッド・ウェゲナーは、世界地図を眺めていて、とんでもないことを思いつきました。

南米大陸の東海岸とアフリカ大陸の西海岸って、パズルみたいにピッタリくっつくんじゃね?

それだけではありません。
アフリカ大陸上部の西に突き出した海岸線は、南北アメリカ大陸を隔てるカリブ海にすっぽり収まり、さらに北米大陸東海岸のラインと合致します。

いやいや、グリーンランドとユーラシア大陸だって、引き寄せれば、うまいぐあいにくっつくぞ!
もしかして、世界中の大陸って、遠い昔は1個の巨大な大陸を形成していたのでは?
それが何らかのメカニズムで分離・移動して、現在の世界の姿になったのではないか?

こうしてウェゲナーが発表したのが

「大陸移動説」

しかし、当時の学会は、この斬新な発想を嘲笑で迎えました。

「でっかい大陸が動くだと? いったいどうやって?」
「んなアホな! ぎゃはははは!」

当時は、地震や噴火などで大地が隆起・沈降することは知られていましたが、地下深くには強固な岩盤があり、大陸があっちこっちへ移動するなんて「常識的にあり得ない」と考えられていました。

ウェゲナー自身も、大陸が移動する「何らかのメカニズム」を説明することができず、「すばらしい思いつき」を引っ込めざるを得ませんでした。


ところが、その後。

プレート・テクトニクス

という新しい理論が登場します。

大陸は強固な岩どころか、実際はプレートと呼ばれる板状岩盤の海上に突き出した部分であり、牛乳の表面に張った膜のようにマントルの上にぷかぷか浮いている状態であることがわかったのです。
マントルには温度差と地球の自転によって対流が生じるため、それに乗ってプレートも移動することが明らかとなりました。

プレート・テクトニクスはとても優れた理論で、プレート同士の衝突で海溝型地震の発生をうまく説明できます(私は、相対性理論、進化論、元素周期表と並ぶ科学界の4大発見の一つだと考えます)。


今でこそ「世界中の常識」となっている考え方ですが、ほんの1970~80年代くらいまで、

プレート・テクトニクスは単なる仮説にすぎない

とされていました。
その頃の科学書を読むと、しばしば「プレート・テクトニクスという新しい学説が正しいとすれば」と注釈が載っています。たった40年前の話です。

結局、ウェゲナーの思いつきは正しかった。

大陸はかつて一つに固まっていた時期があり、2億5000万年前に存在したとされるとその巨大な(地球上でたった一つの)大陸は、

超大陸パンゲア

と呼ばれています。

彼を嘲笑した科学者たちが、今では逆に嘲笑われる身となってしまいました。


これまで何度も「天動説と地動説」の話をしてきました。
ニュートン力学とアインシュタインの相対性理論もしかり。
かつては「常識」だと思われていたことが、後の調査・研究・発見で、まったくの誤りであったことが判明するなんて、科学の世界では日常茶飯事。

新しい説を「常識」にそぐわないと斬り捨てることは、極めて危険な行為であり、絶対にやってはいけないことです。ましてや、一介の政府や動画配信サイトごときが「事の真偽」を選り分けようなんて、思い上がりも甚だしい。どれだけ傲慢なのか。

神にでもなったつもりか?

と問いたい。そういえば、キリスト教の七つの大罪の一つが「傲慢」でしたね。
人間が神に近づこうとした結果、「バベルの塔」は崩壊しました(私はいっさいの宗教を否定していますが、示唆的な寓話としての価値は大いに認めています)。


真実を探求しようと思ったら、どんな意見も真摯・謙虚に受け止め、考察する姿勢を持たないといけません。
そのためには、あらゆる情報をオープンにし、いろいろな人が議論に参加できるベースを死守しないといけないのです。

「生物多様性」には、当然ながら「思想の多様性」「言論の多様性」も含まれます。
それは、誤りを修正するのと同時に、「遺伝子の変異」と同じく、種の絶滅を防ぐための保険でもあるのです。




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