感想『ヒトはなぜ自殺するのか 死に向かう心の科学』しきの読書記録

!!注意!!

 タイトルから分かるかとは思いますが、センシティブな内容を含みます。「自殺」「自死」という言葉が何度も出てきます。

 去年の5~7月頃に読み、自分のノートにまとめました。現在、買った本が手元にないため(置いてきた)、そのノートを見ながら、内容を思い出しつつ書いています。

『ヒトはなぜ自殺するのか 死に向かう心の科学』
ジェシー・べリング 著
鈴木光太郎 訳
(株)化学同人

大まかな内容

 動物の中で人間だけが自殺をする。それは「他者の中に要いる自分」を見るからなのか。進化心理学の立場から分析する(Amazonの説明より)。人が自殺に至るまでの経過や、実際に自殺した少女の日記、自殺しそうになった自身の経験を収録している。

何故この本を買ったか

 昔から自死に興味がある。どうして自殺をしてはいけないのか、納得のいく説明を得られたことがないからだ。先に断っておくと、この本からその答えは得られなかった。

印象に残ったところ

 以下の内容は、本を読み、私が自分なりにまとめたものである。私というフィルターがかかっていることを念頭に置いて読んでほしい。

ロイ・バウマイスターによる「自己逃避としての自殺」

人が自死に至るまでには、6つの段階があるそうだ。

  1. その人が個人的に設けた基準現在の生活の状態との差異・落差の程度が大きいこと。自分の成功について、実現の難しい基準を設けており、期待値と現状とのギャップに悩む。

  2. 悪い事の原因が自分にあると思い込むこと。自分自身を嫌う、他の人は皆良いのに、自分だけが悪いという誤った認知。

  3. 自分の欠点について執拗に考えること

  4. 「否定的感情」これから逃げたいという欲求が自死につながる。「リストカットは心の痛みを体の痛みに変える装置」

  5. 「認知的解体」世界が頭の中ではるかに簡単になる。時間がおそろしくゆっくり過ぎる。

  6. 「抑制解除」道徳的に良くない、などというストッパーがなくなる。死への恐怖が軽減される、身体的苦痛への耐性が増加すること→自死のための能力の獲得。

 (「」は引用)必ずしもこの段階を1から順に上るわけではなく、戻ったりスキップしたり、重なり合ったりもする。どの段階からも降りることができるが、高い段階へ行くほど降りにくくなる。

 去年これを読んだときは、段階2か3まで来ていると記している。けれど、その後、段階5までは行ったように思う。自分の状態を客観的に知ることで、階段を降りようとすることができるようになるのだろう。

第五章 ヴィクがロイレンに書いたこと

 飛び降りてしまったヴィクの日記が紹介されている。ヴィクが悩んでいる様子、自死に至るまでの思考の経過が分かる。読みながら、これは私だと思った。勉強ができずに(出来不出来の問題ではなく、取り組めない)自分を責めている様子が私自身と重なった。ぜひ読んでほしい。

自死する人の思考に関すること

  • 「自殺学でもっとも危険な言葉は『だけしかない(only)』である」シュナイドマン

  • 自分の命を絶つ決心をする人→二分法的思考(白黒思考)にはまり込んでいる。

  • 感情を絶望に支配される→「生きるのを諦めるべきか、いつ諦めるか」を理性的に判断できなくなる。意志決定に歪みが生じる。

共感したこと

  • 「自殺の想念にとらわれているものを苦しめるものの一つ」→「時間がのろのろ過ぎること。終わりのない地獄のように見える。」

  • 「自殺のリスクは理想的な生活状態にあるほど高くなる」→「幸せに高い基準を設けてしまうから」

  • 「自殺しようとしている人間は必ずしも鬱のように見えるわけではない(体裁を保つために隠しているから)」「未来を捨てる決定をしたことで穏やかになることも」

読み終えて、感想

 読みながら、自分や友人と重ねていた。耳の痛い話もあった。私が死ななかったのは、家族に迷惑をかけたくなかったから。下宿先が事故物件になったら、家族が損害賠償を払うことになってしまうだろうし、死ぬ前に捨てたいものも多かったし。そういうことを考えると、自殺するのって難しい。そうなるようにできてるんだろうけど。

 人間はただここに存在しているだけで、人生の目的や生きる意味などはない、と今のところ思っている。だから、生きる価値なんてものはそもそもないのだ。ただの粒子の塊なんだから。ということを再確認した。

 夏目漱石の「こころ」を思い出していた。以下、ネタバレ注意(一応)。

 Kは、理想に届かない自分を見て、嫌悪していたのではないか。ロイの言うところの段階2,3くらいまでは確実に進行していたと思う。とても具体的な、淡々とした遺書だった。これは、この本(ヒトはなぜ自殺するのか)に記述されていた実際の遺書の特徴とも重なる。しかも、確かKは家族と縁を切っており、その上で「私」は「お嬢さん」と結ばれた。自分が邪魔者であるように、不必要であるように、孤独であるように感じたのかもしれない。

 この本を読んだことで、自殺に至るプロセスや思考などの理解が深まった。どうにか死なないように気をつける方法も学ぶことが出来た。人は事故や事件など、外的な要因は予防するが、自死という内的な要因はあまり意識していないのではないか?私が死なない理由は「そうするのが困難だから」であり、いつかしないとも限らないなとは思うのだが、私を愛してくれる家族が生きている限りはどうにか生きていくつもりだ。

おわりに

 繰り返すが、私が読んで考えたことも交えて書いていることを忘れないでください。この本に興味のある方は、ご自分で購入して読まれることをお勧めします。何かの参考になれば幸いです。

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