ついに判明!コスパの良い都立高校(前編)

こんにちは。元高校事務の人、ひろかです。
今回は都立高校の中でも「親にとってコスパの良い」高校、生徒一人当たりにお金のかかっている学校をランキングにし、ジャンルごとに紹介していきたいと思います。

0 (前提)コスパの算出方法

まずはじめに、コスパの算定方法ですが、令和元年度まで都立学校で実施していた「バランスシート」の支出額を令和元年5月1日時点の生徒数で頭割りした金額を基にします。なお、生徒数は全日制・定時制の生徒数とし、通信制の生徒は除外しました。
バランスシートの支出額には、教員・事務職員などの人件費の他、学校の維持管理に必要な経費、教材(個人で買うものを含まない)費などが含まれます。つまり、1年間に税金を使って払ったものがすべて含まれるんですね(一部の備品や工事などを除く)
様々な費用が算入されていますので、生徒数の少ない学校ほど金額が大きくなることでしょう。
また、学校の収入となる授業料や入学料については考慮しません(授業料が直接各校の使える金額とならないため)
今回のランキングでは令和元年度時点で学科改編中・閉校直前・開校直後の学校などは除外しました。また、令和5年度時点で閉校している学校も除外しました。

1 集計結果・概要

都立高校191校を上記の方法で集計した結果、概要は以下のとおりでした。

・生徒一人当たりの平均支出額 110万2千円
・学校当たりの支出額の中央値   99万1千円
・最高支出額の学校の一人当たり支出額 2399万2千円
・最低支出額の学校の一人当たり支出額   71万円

1人当たりの支出額が高額になる学校の傾向としては
おおむね以下の順番で並んでいることが分かりました。
① 島しょの学校(全体1~7位を7校で独占)
② 専門高校(工業学科・農業学科など)
③ 専門高校(その他の学科)
④ 昼夜間定時制
⑤ 専門高校(商業学科)
⑥ 総合学科高校
⑦ コースなど特色のある学校
⑧ 進学〇〇校
⑨ 普通校(①~⑧以外の普通科の学校)

それでは、ここからは各カテゴリーで1位となった、コスパ最高の学校を見ていこうと思います。

① 全体1位は島の高校「三宅高校」(三宅村)

栄えある(?)1位は東京都の三宅島にある三宅高校でした。
年間支出4億8千万円に対し、生徒数は20人
1人当たりコストは2399万円で、2位以下を突き放して圧倒的です。

<1位の理由>
なんといっても、全校生徒20人(3学年で20人ですよ)ながら、普通科と併合科(農業科と家庭科)という2クラスを持っているので、先生の数がとても多く結果的に人件費が上がっています。
もうここまでくるとマンツーマンくらい手厚い体制ですね。

<オススメできるか?>
大人数の教室は苦手…という方にはとってもおススメできますが、
何しろ島の学校(それも中心部からバスで行く?)なので、様々な条件をクリアしなければなりません。
また、もし島以外の場所から進学すると、小学校(以前)から出来上がっている関係性の中に入るため、最初は何かと気を遣う可能性はあります。
しかし、学校のこの手厚い体制と周囲の雄大な自然環境はめちゃくちゃ良い! と自信を持って言えます。
最近の島の高校は若くて熱心な先生が増えてきているので、勉強の対応もおおむね安心できるのではないでしょうか。
ちなみに卒業後の進路は国立大学・私立大学とも増えている印象です。
島の高校の進学の仕方はこちらから→

② 専門高校の1位は大島海洋国際高校(水産科)、2位は下でご紹介

専門高校1位は島の高校でもある大島海洋国際高校でした。
この学校は令和4年の入学生から水産科の学校になったので、授業料は据え置きで、現在はもっとコストが上がっていることでしょう。
支出額は12億3200万円に対し、生徒数は221人
1人当たりのコストは558万円でした。

<1位の理由>
こちらの学校は、水産科という特殊な学校で先生が多いことや実習助手もいることに加え、全寮制の学校のため、寮の運営費や寮を管理する先生方の人件費などが専門高校1位になった理由のようです。
もしかすると寮は結構古いため、管理費なども多めにかかっているのかもしれません。(何かと普通の学校とは違うため、一概に比べられないのにここに無理やり持ってきたのがいけなかったかしら…。)

<オススメできるか?>
以前、「そんなのあり!? 面白公立高校5選」でもご紹介した学校です。
最近、念願の5級海技士養成施設の登録を取り、「進路希望で船乗りになれる」が実現したようです。海のことや海を中心とした地球環境に興味のある人にはめちゃくちゃおススメできる学校です。
大学の進路実績も関係各方面に幅広く安心ですが、全員船での泊まり込みの実習があるので、「船はもう絶対ダメ!!」って人は自粛してください…。

③ 専門高校(島以外)の1位は六郷工科高校(工業科)

冷静に考えると島は条件違いすぎるよねってことで、
島以外の高校の中でコスト1位となったのは、大田区にある六郷工科高校でした。
支出額は13億7700万円、生徒数は482人
1人当たりのコストは257万円でした。

<1位の理由>
六郷工科高校は都立工業高校唯一の単位制工業高校です。
単位制についての説明はこちらから…

ある程度自由に選べる授業が多いため、他の学校よりも先生の数が多いのが特徴です。
また、もともと電気系の学科に強みのある学校を母体としているので、電気系の実習機器などで管理予算が多めにかかっていることも要因の一つかもしれません。

<オススメできるか?>
学科としてはプロダクト工学科、オートモビル工学科、システム工学科、デザイン工学科、デュアルシステム科の5つがあり、自分がやりたいことと合致すれば進学は検討の余地があります。
特に、高卒就職を考えている人には在学中に長期インターンシップ(最長で合計4月)ができるデュアルシステム科があり、インターン→そのまま就職ということも珍しくないようです。地元大田区ではロボット産業や輸出関連技術の開発などかなり企業支援が充実してきているので、町工場ながら先端技術を扱っているところも珍しくありません。また、工業高校では珍しくデザインや動画なども勉強する(デザイン工学科)ことができます。
実は近所にある日本工学院専門学校との連携も進んでおり、高校生のうちに授業を受けに行くことができる(進学後は単位認定される)制度もあったり、進学にも力を入れているようです。
デメリットは、なんといっても場所ですね…。最寄り駅が京急「雑色駅」となるので、大田区以外の場所から通うのはなかなか困難ではないでしょうか。地元からの進学者は結構いるようで、地元密着高校の典型のようです。

④ 昼夜間定時制の1位は大江戸高校

昼夜間定時制とは、朝から夜まで学校がやっているのを1~3部に分割して生徒が入れ替わり立ち替わり登校する学校です(ざっくり)1or2部を選べば全日制の学校と大きな差はなく、3年間で卒業することも可能ですが、こちらの1位は大江戸高校となりました。
支出額は7億8000万円に対し、生徒数は552人
1人当たりのコストは141万4千円でした。

<1位の理由>
実は昼夜間定時制は「普通の昼夜間」「チャレンジスクールの昼夜間(学びなおしがメイン)」「エンカレッジスクールの昼夜間(不登校対応がメイン)」があり、大江戸高校は「普通の昼夜間」なので、コストとしては下がるのかなと思っていたのですが、まさかの1位になりました(完全想定外でした)
昼夜間定時制高校のクラス数はぶっちゃけどこの学校も大差ないので、単純に「生徒数の差」によるものと考えられます。昼夜間定時制の多くはそうとは名乗っていなくても、全体的に元不登校の生徒や他の高校を中退した生徒、仕事や学校以外の勉強などで時間的拘束を受けている人なども一定数在籍しているため、生徒数の変動が大きいことが考えられます。
ちなみに2位は桐ヶ丘高校、3位は世田谷泉高校でしたが、どちらも一人当たりコストが130万円オーバーであるため、ほとんど差がないと言えそうです。

<オススメできるか?>
昼夜間定時制高校は「目的をもって」作られた学校ですので、その目的に合う人にはとってもおススメです。
よく聞いたのは「もう朝起きるのは絶対無理」という生徒さんが、昼又は夜の部から登校すると学力を順調に伸ばすことができたという事例です。
また、学校以外に趣味や好きなこと(仕事につながることなど)があって、特定の時間に学校にいることが難しい生徒も対応可能です。
大学進学実績も学校によりまちまちですが、悪くないので、進路を考えるにあたっても良いですよ。また、進路イベントが普通科の学校に比べて(目的をもってもらう方に)充実している点もおすすめです。


長くなってきたので、後編はまたにします…(いつ後編が書けるのかしら…)

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