定員の半分しかいない都立高校(続)

こんにちは。
元高校事務の人、ひろかです。
今日は前回の続き、定員の半分しか合格しなかった「杉並工業高校」についてです。
ちなみに、この令和5年4月から学校名が「杉並工科高校」に変わりました。。

前回のお話

なんだか考えながら書いているうちに怒りで文章が荒れていますね…
でも本当に、長年定員を割れ続けている高校は、税金ドロボウだと言わざるを得ません。
受け入れられる生徒数の半分しかいないのに、先生の数は変わらないし(授業が減るわけではないので)校舎もかかる経費も少なくならないし、
その数を受け入れられなかったせいで私立高校に生徒が流れ、授業料補助や私立高校の助成金などの金額が増えていきます。
もちろん、その学校の活力(学校行事や授業の規模、部活動など)も衰退してしまい、希望して入学してきた生徒への影響もありますね。

あ、政策でそういう場所に置いている(過疎地域や島など)は別ですよ。
それを上回るメリットがあるとして作っている学校なので。

というわけで(どういうわけだ)もし杉並工業高校を生まれ変わらせるとしたら…を考えていきたいと思います。

0 結論:杉並工業高校は国際科学高校にしたら良い

はい、もう結論はこれだけなんですけど、
英語と第二外国語と理科系・技術系に特化した学校です。
今の国が定める学習指導要領の中でもギリギリ作ることができますし、
地元のウケも良いハズです。
なぜ私がそう考えるのか、あまりにも簡単すぎる結論の理由を書いていきたいと思います。
都立高校の受検を考えている人には、学校選びの参考にもなると思いますし、
どうしてその学校がそこにあるのかなど、他の学校を見る視点も変わるかもしれませぬ

1 国際科学高校にした方が良い理由

1.1 周囲に工業高校が多すぎるから

これは前回も指摘したとおりです。
この地域(東京の城西エリア)では、杉並工業高校だけではなく、
練馬工業高校、中野工業高校、田無工業高校、北豊島工業高校など多くの工業高校が集まって同じような学科を置いています。
これによる競合も起きていて、令和5年4月入学の受検では全校が欠員状況となっています。
特に、中野・杉並・田無は西武新宿線の沿線で並んでおり、自転車でも通学ができることから、真ん中に位置する杉並工業高校は学校のコンセプトを変えて工業高校に興味のなかった層を受け入れるような学校に作り替える必要があります。

1.2 逆に周囲に理系を得意とする高校は少ないから

杉並区だけに限って周囲の高校を比較してみると、こんなかんじの分布になります。
私立高校は進学先を探しても大学名までしか記載されていないので定かではありませんが、大学付属の高校が多く、また(色んな意味で)特徴的な学校が多いです。
また、都立(公立)高校の進学状況を考えると、
「理系の大学にガンガン進学させる」タイプの学校は西高校だけだと言えます。
都立高校では似たよう学校で「科学技術科」がある科学技術高校と多摩科学技術高校がありますが、江東区と立川市にあるだけなので、中間の杉並区に1つあっても競合することもありません。
杉並工科高校は元々が名前の通り工業高校なので耐火の実習室や実験室が多く電気容量やガスの配線も一般的な高校と比較して充実していることから、理系の学校として転用するメリットは多くあり、更に周辺には匹敵するような学校がないことから、理科系の実験がたくさんできる学校として作り替えれば需要は見込めると考えます。


「みんなの高校情報」サイトより作成

1.3 地域の大学進学率が高いから

これ、よくよく考えたらネタの宝庫だったので、また別の記事にしたいと思いますが、
ご想像に難くないとおり、大学の進学率は上昇傾向にあります。
また、東京をはじめとする都市部の学生の大学進学率は全国と比較しても高く、大学進学を卒業後の進路のメインに据えた学校に置き換えることは、方向性としてはあっていると考えます。
(ちなみに現時点でも杉並工業高校の卒業生の5~6割は上級学校に進学しています)

1.4 自然科学は杉並区になじみのあるテーマだから

杉並工業高校が位置する杉並区は、かつては公害が問題になり、
「東京ごみ問題」や「日本初の光化学スモッグ」などが有名になりました。
このことは杉並区のホームページなどでも詳細に紹介されており、
こうした反省から、都内でもいち早く環境問題に取り組み始めた地域です。
現在では環境計画やみどり条例など、様々な行政計画を立案しており、環境に関する教育は地元の小中学校でも非常に熱心に取り組まれていることから、自然科学の中でも特に「環境」を主軸テーマに学校全体の学習を構築することができれば、小学校から高校まで一貫した学習をすることができますし、他の学校とは差別化された(でも大学進学にも対応できるような)主体的な学習を展開できる学校になることでしょう。

1.5 「環境」学習は海外に目を向けないといけないから

さて、最後は「国際」の部分ですが、これは卒業生が将来的にどこで活躍するのかをターゲティングした時に、この付加価値で勝負するのが良いのではないかと考えてのことです。
これからこの学校を理系バリバリの学校に軌道修正したとしても、残念ながら国内有数の大学の研究者になるような卒業生をバンバン排出することは難しいでしょう。また、現在の学校の形(工業高校で実習施設が充実している)から考えても、理論よりは体験や実験・観察を重視して探究的な学習を重視する学校に形を変える方が現実的で経済的です。
そうすると、学校が目指す人材育成像としては例えば「企業で環境や経営に携わる人材」「環境関係国際機関やNPO法人の職員」「科学コミュニケーター」など、「科学と人間の社会活動をつなぐ」ような形になるのが適当でしょう。
そのためには単純に理数科目ができるだけでなく、情報発信を含めたコミュニケーションのための語学や環境問題を取り巻く国際情勢などの理解も欠かせません。こうした科目を学校設定科目としてもOKですから、意欲ある先生を各科目集めて新しい学校をつくるのって夢があると思うのですがね…

2 生徒が半分しかいない学校は新しい姿を見てみたい

今回は立地が良くても不人気であるがゆえに定員の半分しかいない学校はどうしたらよいのか考えてみました。
生徒が半分しかいなくても、先生の数も変わらず、予算も変わらず、学校の面積が狭くなることもない都立学校は本当にもったいないと思います。
学校の先生たちは生徒が少なくても業務が少なくなるわけではなくとても忙しいので、ぜひ教育委員会にも考えてもらいたいなぁと切実に思います。
新しい学校の姿、見てみたくありませんか?

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