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世界最古のカフェはヴェネツィアに

コーヒー文化を持ち込んだのはヴェネツィア人

サンマルコ寺院に向かって右側にある、カフェ「フローリアン」

朝のエスプレッソを飲まないと、一日が始まらないというイタリア人のみならず、コーヒーは私たちの暮らしに欠かせないアクセントのひとつになっています。

最近は、様々なカフェインの効用が発見されたりして、嗜好品とみなされていたコーヒーの意外な「おまけ」は、愛飲者には朗報ですが、その昔は高価な薬品として取引されていたのです。

13世紀には、すでにアラブの国々で飲まれていたものを、ヨーロッパに最初に持ち込んだのは、イスラムの国々と深い交易関係にあった、ヴェネツィア人でした。

1585年に、トルコのイスタンブールに派遣されていたヴェネツィア人大使、ジャンフランチェスコ・モロジーニが、「トルコ人たちは、“カーヴェー”という豆から抽出した、熱くて黒い眠れなくする物を好んで飲んでいる」とヴェネツィアの評議会に報告した、という資料が残っています。

資料として残っているのがこの年というだけで、中東を頻繁に行き来していた、好奇心旺盛なヴェネツィア商人たちは、間違いなくこの何年も前から、現地やヴェネツィアの家で飲んでいたに違いありません。

1638年にはサンマルコ広場で、煎って挽いたコーヒーの粉が「興奮剤」として高価な値段で初めて販売されたということです。

17世紀、サンマルコ広場に開かれた、初めての「コーヒー工房」は、それから1世紀の間に24件を数えたといいます。

コーヒーの人気が高まるに連れて、カフェは知識人達の社交場でもあり、同時に賭け事や愛人との密会の場所にもなっていきました。

当時のヴェネツィア共和国政府は、カフェにおける風紀の乱れをただそうと、女性の出入りを禁じたり、夜の12時には椅子を片付けさせるなど、店主に様々な義務を課したものの、効果はありませんでした。もはや、飲み物としてのコーヒーも、場所としてのカフェもヴェネツィア人の間に浸透していたのです。

その中でも一番エレガントな店として有名になったのが、現在も続く創業1720年の『フローリアン』です。フローリアンから遅れること55年、1775年に創業された『クワードリ』も現在のサンマルコ広場を飾る老舗カフェのひとつです。

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