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常に被害者、なんてことは

「趣味は、被害者ポジションの確保です。」

面接や履歴書、あるいは自己紹介、もしくはサイン帳(懐かしい)でそう書いたり言ったりしても差し支えないのではないかと思う人が、います。

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夫に浮気されているかもしれない
夜遅く帰ってきて、御飯を作らされる
わたしは早朝に起きるからいつも睡眠不足で
土曜日出社があることを夫に言ったら
「その会社選んだの自分でしょ」と言われたの
お前ってほんとバカだなってよく鼻で笑われる

出会って間もない頃に彼女からこの話を聞いたとき、わたしは心底同情しました。

え、なにその夫。
配慮が無さすぎる。

そんな彼女に違和感を覚えたのは、それから数か月経ったある日のこと。

他部署にわざわざ書類印刷して持っていくの、大変ですよね…と彼女がぼやいていたので、あ、データ送信でもいいみたいですよ、この前担当者に聞いたらデータでもいいって言ってましたと伝えたら、彼女はさっと青ざめ、こう言ったのです。

え…わたし、そんなこと教えてもらってない…
わたし、嫌われてるのかな
ショック…

いやいやいや!
わたしも別に教えてもらったわけじゃなくて、自分から「データでもいいですか」って聞いたんですよ
そしたらいいよって言うからそうしただけで…
ごめんなさい
そのときにお伝えすればよかったですね

懸命に釈明しても

はぁ…わたしバカみたいですね
1人で一生懸命、書類持って行って
受け取るときに言ってくれればいいのに…

いやいや、そうじゃなくて…

「教えてもらっていない」
「嫌われている」
「ショック」

そう言い張って、全然話が通じないのです。

彼女はそれからも常に、この姿勢を崩しません。

仕事を引き継げば
はぁ…わたしが引き継いだ途端、トラブルが起きるんですよね…

議事録の当番が回ってくれば
わたしのときばっかり、会議の雰囲気悪いんですよね…

雨が降れば
洗濯物干してきちゃいました…

風邪をひけば
うつされた…

部内の誰かが風邪をひけば
忙しくて大変…

相手の言っていることが理解できないと
言い回しが難しくて…

相手が理解してくれないと
分かってもらえないんですよね…

なんで

あなただけ

常に

被害者?

ここまで徹底していると、もしかして冒頭の夫の話も眉唾なのではないか、という気すらしてきます。

夜遅く帰ってくる
=仕事が長引いているだけ

御飯を作らされる
=自ら作っているだけ

「その会社選んだの自分でしょ」
=正論

「お前ってほんとバカだな」
=言い方によっては愛情表現

真相は不明ですが、彼女の話では明らかに「ひどい夫」にも、もしかしたら違う側面があるのかもしれないな、と思うのです。

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