好きじゃないけど幸せでいて/夫婦の共通点
わたしは、好きな人が極端に少ない人間です。
突き詰めて考えたら、本当に心から好きな人は夫だけ…かもしれないことに気付きました。
好きな所もあるけど、こういう所本当嫌い、とか
良い人だけど、なんっか好きになれない、とか
一緒にいて楽しいけど、半日が限界だな、とか
大体、そんな感じです。
知れば知るほど嫌いになってしまう可能性が高いから、出来る限りそれぞれ適切で安全な距離を保っていたい、という願いを持っています。
今まで好きになった人も、何かのタイミングで「あ、無理だ」となってお別れすることが多く、だから夫と出会ってから今まで、10年以上もずっと好きでい続けているなんてことはわたし史上初の出来事であり、なかんずく稀有です。
そんな夫が、偶然ついていたテレビを眺めていて、一言呟いたのです。
「こういう人、苦手だな。」と。
その方は、数多の苦境にもめげずに元気に明るく前向きに頑張っていて、テレビの前で「周りの皆さんのおかげです。感謝でいっぱいです。」と爽やかに笑っていらっしゃいました。
「すごいのは分かる。でも、あんまり大きな声では言えないけど…苦手だな。」
「わかる。尊敬する気持ちと苦手だと思う気持ちって、両立するよね。」
外では大手を振って言えないことを家では安心して言えるって、実は当たり前のことではないと思います。
昨日母親に打ち明けた内緒話を、翌日ご近所さん全員が知っていた経験のあるわたしは、余計しみじみとそう感じるのかもしれません。
ネットで呟いたら本人の目に触れてしまう可能性があるし、外で発言したら壁に耳があったり障子にメアリーがいたりするかもしれません。
でも、窓を閉めたリビングで信頼する相手に呟く本音は、どこにも漏れません。
「こういう人苦手」という意見が、好きな人と一致すると存外嬉しいものです。
なぜでしょう。「こういう人好き」という意見が一致するよりも、爆発的な喜びがある気がします。
夫と、件のお方について、ひとしきり「どういう部分が苦手か」という話に花を咲かせたあと、ふと、だからと言ってわたしたちは、その人の不幸を願ったりはしないね、ということに思い至りました。
偽善者の裏の顔を暴いてやろうとも思わないし、噂話を流してやろうとも思わない。
実は悪どいくせに、何故か露呈せずにいい目を見ている人が転落すればいいのに…とはたまにちょっと思うけれども、だからといってその為に積極的に働きかけたりはしない。
好きな人は多くない。
出来れば放っておいてほしい。
適切な距離感でいてほしい。
でも、それぞれ幸せでいてほしいとは思ってる。
わたしたち夫婦は、他者との関係性の捉え方が似ているのかもしれません。