【短編】夜と朝の自分

 吐きそうだ。本当に吐きそう。
 とにかく気持ち悪い。今ここにいる自分がとても気持ち悪い。
 憂鬱な気分でいるはずなのに、どこかそれに興奮していて、誰とも関わりたくないと思っているのに、友人から連絡がくれば心が躍って。
 そんな自分のことが、とても大好きな自分が本当に気持ちが悪い。
 黒くてドロドロしたものが内から湧き出てきそうだ。絶対に血ではない何か。今日食べた焼きそばでも、さっき吸い込んだ空気でもない。
 そんな変なものが胸の中でうごめいて、のたうち回って、口から外に出ていきそうだ。
 助けて。
 
 昨日の自分がそう記していた。
 午前八時、目が覚めてスマホのロックを解除すると、すぐメモ帳アプリに書かれたこの字面が映し出された。
 昨夜、寝る前寸前に自分が書いたであろうそれを、僕は画面に2度触れるだけで消した。
 迎えた今日の朝には、そんなことはどうでも良くなっていた。恥ずかしささえ浮かんでくる。
 それでも今晩もきっと苦しくなるのだろう。
 明日の晩も、明後日の晩も。
 それでもその翌日目覚めるたびに僕は、その前日の夜の自分を否定するのだろう。
 もし、夜の自分を認められる朝の自分が訪れるのであれば…。
 その時僕はどうするのだろうか。

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