【心に残る友】
🌲看護師時代の友人
看護師時代の友人と連絡を取り合う機会はだいぶ減った。
年月を経て、友人から知り合いに変わったのだ。
この記事を書くに当たって思い出したことがある。
遠い昔になるが、志を持った者たちで、医療や看護について話し合う『夜会(当時はそう呼んだ)』をたびたび開いた。
当時、夜会の名付け親・K医師と看護師数名の有志で集まり、2月に1回は開いていただろうか。
飲みながら、今の医療はどうか、これから病院をどう改革していくか…など熱っぽく議論し合ったものだ。
K先生は精神科の医師である。
精神科は時間の流れがゆっくりだ。
時が止まったような月日の中で、看護師として、このままでいいのだろうかと悩んだことがある。
その中で、いつも穏やかな表情と口調で、医療に対する深い思いを持って話をされるK先生の姿を見ると、諦めずに一歩ずつ進もうという気持ちになれた。
夜会には、K先生が、決まってA3用紙いっぱいに書かれた議題を持参した。
飲みながらではあったが、それがかえって心を開いて話すきっかけとなり、楽しいだけではなく充実した時間となった。
若い者の愚痴も、K先生はゆったりと聴いてくださった。
医師だの看護師だのは関係なく、そんな枠を越えて話し合った時間は宝物だ。
K先生がお亡くなりになり、職場が変わり、時が経つと、当時の看護師仲間と会う機会はなくなった。
みなそれぞれ新しい環境で新しい友を得て、自分との関係は、すっかり過去のものになっていく。
看護師長や訪問看護ステーションの管理者…
昔の友人の活躍を風の便りに聞く。
元気に頑張っているんだなと、懐かしい気持ちにはなるが、それ以上の行動にはならない。
私自身も昔の友人との関係は、過去のものなのだ。
遠い過去は、風化され、一部美化されているとは思うが、確かに私の一部でありそこに存在していた。
だからこそ、昔の友人を失うことは、自分の過去まで失ってしまうような気がして、過去を繋ぎとめるために、
「また会いたいね」
と、会う予定もないのに年賀状に書いた。
でも、そんなうわべの付き合いは相手にも伝わるもの。
関係は希薄になり、少しずつ消滅していく。
「それが自然なんだ」
と考えるようになったのはここ5〜6年の話。
ひとりふたりと、看護師時代の友人はリストからいなくなった。
🌲こころの友
そんな中、お互いが引っ越したこともあり、連絡は取り合う機会は少ないものの、ずっと心で繋がっている友がいる。
私はそう思っている。
長い間会っていなくても、会えばつい昨日のことのように話ができるだろうと思う。
私より4つ年上の准看護師Mさんだ。
小柄で可愛らしいけれど、芯があって優しい人。
一見とっつきにくい感じはするけれど、親しくなれば、何でも話ができた人。
もちろん『夜会』のメンバーだ。
若い頃から苦労してこられた。
相手を立てることや、私のことを思って説教してくれるところも好きだった。
カラオケや食事、旅行など、ほぼ毎日連絡を取り合い一緒にいた。色あせない思い出だ。
友だちはたくさんはいらないけれど、自分が悩んだときに真剣に考えてくれる友だちがいると心強いものだ。
🌲ケアマネ時代の友人
近くで良く顔を合わせていれば、知り合いになり、縁があれば友だちへと発展する。
子育てをしていれば母親同士、ご近所同士、職場では仕事仲間、趣味仲間…
人と人との関係は続く。
私より一回り以上年上の、一緒にケアマネとして働いていたAさんは、1番の理解者であり、相談者だった。
看護師でケアマネと言う点で一緒。なぜ看護師ではなく、ケアマネを選んだのかと言う点でも思いは似ていた。
これほど気の合う人はいないのではないかと思うほど、時間に追われて仕事をしていても苦にはならなかった。
上手な冗談を取り入れた人とのコミュニケーション、事業所内外からの信頼度の高さ、丁寧な仕事…
何ひとつとっても、ずば抜けている存在だった。
Aさんと出会えたことは、私がケアマネとして働く意欲になり、Aさんのようになりたいと言う目標に繋がった。
そんなAさんは退職され、お孫さんの成長を楽しみに生活されている。
🌲これから
『出会いと別れを繰り返しながら、人は成長していく』と言う当たり前のことを学びながら生きている。
こんな小さな存在の私でも、器いっぱいに人を受け入れてきた。
無理をして器からこぼれてしまった関係もあったけれど、それもまた然り。
今は器に余力を残しながら、人との関係を築くようにしている。
友だちになろうとしなくても、自分も心のスペースを開けると人と人との関係がスタートする。
その中で選ばれた人が友へと進んでいく。
人との出会いがある以上、知り合いはこれからも増えていく。
全てが大事な出会いだったと思える今は、友人関係を築けなくても、人の価値観の違いを理解しつつ程よい距離感で付き合うことはできる。
あの頃の大切な思い出があれば大丈夫だと思える自分がいる。
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