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【詩】老いゆくもの

人の暮らしを懐かしむ

人の暮らさぬこの家は

温度も色も失って

忘れ去られた残骸と

傾く屋根と崩れた壁と

最期のときを待つばかり


声に包まれ生きて来た

みんなを支えたこの家は

大事なことに気がついた

凹んだドアも歪んだ窓も

何も言わずに飄々と

柱が支えていたことを 



まっすぐ立てぬ身になって

柱は昔を振り返る

雨風しのぎ生きてきた

みなに囲まれ生きてきた

自分の役目は果たしたと

継ぐ手をそっと差しのべた














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