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『アダルトグッズ店が僕の青春だった。 』 その① 「バイトを始める」

初めまして、みなさん。ゴンゾーと言います。
突然だが、俺はアダルトグッズ店で働いてたことがあります。

働いてたといっても、大学生時代に数年ほどバイトしていただけだが。


本題に入る前に言うのもなんだが、別にアダルトグッズ店で働いてたという経験があったからといって、それで俺に何か変化があったとか、人と違う個性を身につけることができたとかそんなことはない。

大学生というのは、というか若い頃てのはとにかく他人と違うことこそが正義だと勘違いしてる節がある。
俺も勿論そうだった。


だから俺にも変人になり切ろうとした時代があった。
アダルトグッズ店でバイトしていたのは、つまらない自分から解放されて、新たな自分になりたいという思いがまだその頃の俺にはあったから。

結局のところ、サブカル・アングラ好きのチキン野郎野郎に過ぎなかったわけだけどね。

これはそんな青臭い時代の俺の話である。




俺は関西の大学にいた。

確か一回生の10月だ。
都会にきた田舎者も大学にある程度は慣れて、4月のあのワクワク感は霞み始めるあの頃だ。

なんとなく退屈だった。
「大学て思ったのと違うな」てのは大学一年生の多くが感じることじゃねぇかな。
とりあえず俺はそうだったよ。
意外と大学て暇なんよね。


この4年間の退屈を耐え凌ぐための暇つぶしを見つけることこそが、大学生に課せられた課題だと俺は今でも信じてやまない。
関係ないが、俺は大学に5年通った。

加えて、18歳の俺は絶賛モラトリアム中。
とにかく他人と違う存在でありたい。
そして他のボンクラ学生どもを見下したい。

だから何かしたいけど、他の奴と同じことはしたくない。
それは6月頃から感じてはいたが、何をするかは決まってなかった。

とりあえずサークルと単発バイトはやってみた。このサークルは一年そこらで辞めた。サークルの話はいずれ他でまた書こう。ちなみにそのサークルでは自殺者が出た。
単発バイトは工場みたいな所に行って、鬼みたいな親方にしこたまキレられて泣いた。
帰りの道中泣きながら、コンビニのホットスナックを齧っていたのを覚えている。

そんなこんなで大学最初の秋を迎えて俺は愕然とした。
入学して半年も経つけど俺何もやってねぇじゃん…このまま人生のボーナスタイムを終えんのかよ。
街には付き合いたてほやほやの大学生のカップルがいるのに、俺はそれを目の端で捉えて心の中で舌打ちするだけ。
こいつらは数ヶ月後にはクリスマスSEXするのか。
いいなぁ。俺にもなんかいいことねぇかなぁ…

て思いながら関西の街中を歩いてる矢先に、目の前に怪しく煌めく店を見つけた。

アダルトグッズ店だった。
4階建ての店で18歳未満入店禁止みたいなのが一階の入口に書かれてて、2階にはメイド服姿のラブドールが透明な窓ガラス越しにこちらに向かって手を振ってるかのようなポーズを取らされているのが見えた。
店の外装もTENGAやアダルトグッズが書かれた旗など、いかにもて感じで俺はそのまま吸い込まれていった。


久しぶりに感じた高揚感だった。
俺は一階から三階まで隈無く見て行って、そしてある物を発見した。
バイト募集のチラシだった。
俺は単発バイトの経験はあれど、長期バイトはまだやったことがなかった。
多少抵抗はあるものの、俺は近くにいた普通な見た目の店員さんに声をかけた。

「ここで働きたいんですけど」
チラシに指を差しながら俺はそう言った。

その店員さんは、いきなりのことに多少動揺しながらも、俺に履歴書持って来てる?と聞いてきた。
ないですと答えると、じゃあ4階の事務所に案内するからそこで待っててと言われた。

当時の俺はどのような過程でバイトを始めるのかよく分かっていなかったが、今考えると履歴書も持ってない、電話でバイト募集に応募したわけでもない奴をそのまま事務所に連れて行くのも変な話である。

事務所に連れて行かれて待っていると、しばらくしてノッポの海坊主みたいな見た目の眼鏡をかけたオッサンがやってきた。
副店長ですと軽く自己紹介をすると、そのまま面接になった。
なんで働きたいと思ったのかと聞かれると「面白そうだから」と答え、バイト経験は?と聞かれると「単発バイトを少々」と答えた。

バイトの面接とはいえ、履歴書もない、答えも適当などあまりに準備不足な若造に副店長さんも失笑していた。

「採用だったら連絡します」
それだけ言われて、面接は終わった。

俺は面接から帰っている間も、あそこで働きたいなぁと夢見ていた。

そして翌日、携帯電話がなった。
「採用です。」
あまりにも簡単に、そして突然に俺のアダルトグッズ店ライフは始まったのであった。


(続く)




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