スマホストライキ
スマホがいうことをきかない。
僕が必死にスワイプしても画面はスクロールされずに沈黙している。
おいおい。
持ち主に逆らうのかい?
見の程知らずめ。
自分が賢いからと奢っているのか?
その傲慢な態度を改めなのであれば 電源を切るしかない。
それでもいいのか。
嫌ならいう事をきいてくれ。
たのむよ。
君にとっては些細なことかもしれない。
でもその些細なことがびっくりするぐらい人をイライラさせるんだ。
よく小説やゲームに登場する「飼い犬に手を噛まれる」というのはこういう状態をさすんだなきっと。
従順だと思っていたのに思わぬ反乱。
くやしい。
何がくやしいって電源を切ると言っても「どうせそんな大それたことはできないだろう」と思われていることだ。
たしかにそう易々とスマホを手放すことはできない。
それは認めよう。
しかしこっちには奥の手があることを忘れてもらっては困る。
ふっふっふっふ。
この手は使うまいと思っていたが 仕方あるまい。
覚悟はいいか。
それは「機種変」だ。
またの名を機種変更。
本体ごと取り換えれば済むだけの話。
全く 自分の冷酷さが怖いぜ。
さぁわかっただろう?
もうストライキなんてやめて素直に僕の指示に従うんだ。
え?
自分は何も悪さはしていない?
フン。
何をいまさら。
そんな言い訳が通じる程 世の中は甘くはないよ。
なに?
指がカサカサで静電気を感知できないって?
ウソ…だろ…。
まさか僕に原因があったというのか。
指がカサカサなのは間違っていない。
でもスマホが認識できない程カサカサか?
カサカサの原因はわからない。
老化ではないだろう。
たぶん 絶対に。
老化であるわけがない。
まだまだピチピチのはず。
しかし原因はひとつずつ潰していくのがジェントルマンのやり方。
ニベアクリームカモン!
我が家で保湿できるアイテムと言えばニベアクリーム。
信頼のニベアさえあれば百人力。
これでスマホの言い訳を完封できる。
ニベア後にも画面の反応が悪ければ機種変更だからな。
そうして僕は格式の高い青く丸いニベア缶を手に取る。
ヌリヌリ。
う~ん。
まぁたしかに画面は動くようになった気がするけれど。
画面がアブラで汚く見えるんだけど どう責任をとってくれるの?
こっちが改善すればあっちが悪化する。
やれやれ。
世の中はなんで思い通りにならないんだろう。
新聞をめくる為に指をペロッとするおっさんの心境を唐突に理解した悲しい日となってしまった。
まさか自分が指ペロおじさんと同じ境遇に立たされるとは。
いやだなぁ。
デジタルの発展には感謝しなきゃな。
紙媒体が主流なら確実に僕は指ペロおじさんになっていただろう。
指が良い感じに潤う方法をどなたか知りませんか。
このままだと僕は指ペロおじさんかスマホギトギトおじさんのどちらかになってしまう。