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神々の遊び

「最近はどうしてやめてしまったのですか?」

神である私に無遠慮に聞く者がいた。

それは同じ神ではあるが格下の神だ。

「昔よくやっていた人間を集めて 闘わせるトーナメントまたやりましょうよ」

格下の神は嬉々として言う。

「我々、神々が人間にひとつだけ能力を授けることができ、最後に勝ち残った神々は格が上がるあのやつですよ」

格下の神はわかりきった事を言う。


あーあれやめたの。


私は冷たく言い放った。

「そんな!それでは格が上がらないではないですか」

そんな考え方だから格があがらないんだよ という言葉は言わずにおいた。

私は厳かな神なのだから。


しかし、あの神々の格を賭けた代理戦争はもうできないのだ。


私のためにも。




人間が殆ど猿だった頃から続いてるこの代理戦争。

その時の神々の気分で不定期に開催されていた。

時代によって人間の希望する能力は変化する。

優勝した人間はその授かった能力を獲得できる。

だから初めの方は力を強くして欲しいとか、寒さに強くして欲しい、炎を操る能力が欲しいとか微笑ましいものだったと聞く。

こうして人類は火の扱いを覚えたり、力でより大きな獲物を獲得したり、寒さに強くなって寒い地方へ領土を拡大したりと人間にも有意義なものだった。

しかし現代へ近付くほど、人間の欲する能力は神々の想像を超えてきた。


江戸時代ぐらいまでは可愛いもんだったのに と神々はよく愚痴を言っている。


美味しいお米が作れる能力を希望した奴もいたが、トーナメントで勝てるわけもなく神々は笑ったもんだ。

昭和になるとお金関連が増えた。
人間たちは神々の為に闘うという使命を忘れ、自分に利益のある能力ばかりになってきた。


そうなるとトーナメントはただの肉弾戦になり つまらない。


平成になると漫画やアニメの影響で能力は複雑化の一途を辿る。


全員が超サイヤ人のトーナメントもあれば、全員がスタンド能力を希望したトーナメントもあった。


もう神々にもなにがなんだかわからない攻防が繰り広げられる。

これもまたつまらない。

漫画のように解説はないのだから。


そして令和最初の代理戦争で事件は起きた。

ついに人間が神を超える能力を欲したのだ。

もちろんそんなストレートな要求なら却下されただろう。


しかし、要求された能力は

「ゲームチェンジャー」

だった。

ゲームのルールを変更できるという謎の能力。

当時の格下の神は強そうだな と深く考えずにその力を与えてしまう。


するとトーナメントが始まった途端にその人間は能力を発動させた。


「神々の考えたこのゲームのルールを変更する!」

「私がゲームマスターとなり神々はゲームマスターには勝てない」

「最後に勝ち残った人間は神へとなる」


そう高らかに宣言した。


神ですら勝てないゲームマスターに他の人間が勝てるわけもなかった。

そしてその人間は神となった。


そう私だ。


だから次の代理戦争を始めて、私と同じような事を言い出す人間がでては困るのだ。


私は神として神々かみがみをもっと神々こうごうしくしたいのだ。



さて、この鬱陶しい格下の神にはゲームチェンジャーの能力で…っと。


「代理戦争は未来永劫封印する」

「どんな神もこの封印を解除することはできない」

「神の格は評価で上がることとする」


ふう。

こんなもんかな。


格下の神はきょとんとした顔で私を見ている。

「あれ こんなところで何してんだろ、仕事しないと! あ、じゃあ失礼します」


最後まで格下感が拭えない神だな。

最近はこういう格下の神が増えた。

人間の信仰心が減っていることもあるが、完全に神の怠慢だ。

遊びなど不要。


働けッ!!!


私は社畜出身の神なのでこれでもヌルいぐらいだ。




こうして神々は唯一の遊びである「代理戦争」を封印され 未来永劫、仕事に追われる日々を送るのであった。






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