【MTG レガシー】 「青黒ダークデプス」の挑戦その7/タイプ:「いとしいしと」 【初心者、復帰勢、自分と同じ親に向けて】
1.先月。《オークの弓使い》装備型の「青黒ダークデプス」をご紹介させてもらったワケですが。
「指輪物語:中つ国の伝承」発売から1ヶ月が過ぎ、今の「レガシー」環境は、文字通りに無数の「矢」が飛び交う戦場です。サツバツ! ほとんどの黒いデッキがこの“名が無い《オーク》”を装備し、そのために他のデッキも無理やりにでも「黒」を足してきて……。
そのあいだ、「アーボーグ型ドゥームズデイ」で大会に出てみたのですが、自分からライフを半減させる《最後の審判》には、まあ、《オークの弓使い》の蔓延がツラいったら。この記事は矢が眉間に突き刺さった状態のままで書かれています。
反面、ここまで環境が真っ黒だと……「ダークデプス」の立ち位置は悪くないかも、と感じました。
土地コンボなので手札破壊や打ち消し呪文に強い代わりに、《剣を鍬に》や《カラカス》を擁する「白」を苦手とするのが、このデッキ。ところが、大型大会の結果をざっと見る限りでは印象が薄くなっており、現に前回の大会では「エスパーブレード」以外とは出会う機会がありませんでした。
「《オークの弓使い》を除去するために《オークの弓使い》を積む」というカオスが今の「レガシー」環境。当然の発想として、前回のように《オークの弓使い》を活用する側ではなく、極力、無視できる側の「青黒ダークデプス」も組んでみたくなります。……やるか。デッキリストは、こう!
2.「青黒ダークデプス」改。《一つの指輪》採用型。前回までの「クロックパーミッション」型とはゲームプランが異なり、《暗黒の儀式》をフル搭載し、初速とカード単体のパワーを重視したタイプです。
《意志の力》や《目くらまし》などの打ち消し呪文で守りつつ、早期の「ヘックスメイジ・デプス」完成を目指すのが基本形。
別の記事で言及したとおり、「青黒ダークデプス」は《渦まく知識》や《思案》でデッキ全体の安定性を確保しながら、同時に《意志の力》などを採用し、呪文の撃ち合いにも対応したタイプ。
ただし、「緑」を用いる一般的な「デプス」と異なり、「青黒」は土地の扱いが不得手な組み合わせ。デッキ内の大量の土地(24~26枚!)が手札に溜まって、ゲーム終了時までに使いきれないことが構造的な欠点でした。
《マリット・レイジ》は追放除去や小型飛行ブロッカーに弱く、初撃を凌がれたあとのリカバリーも難しいので、「レガシー」のコンボとしては脆さが目立ちます。
その弱点を補うため、《帳簿裂き》4枚を採用し、「謀議」で手札の土地を有効札に変換しつつ、《濁浪の執政》も交えて継戦能力を担保したのが従来の型。
ところが「《一つの指輪》型」のアプローチは、このとおり。以前の記事の順番にしたがえば、
①「デプス・コンボ」の初撃を防がれたあと、2撃目へのリカバリーが難しい → 「《暗黒の儀式》+《黙示録、シェオルドレッド》による“攻撃を介さない”ライフ喪失プランを用意。また《一つの指輪》の大量ドローで後続を無理やり確保」
②デッキ内に土地カードが多いため、ゲーム終了時までに置ききれないものが手札に貯まって無駄になる → 「《暗黒の儀式》+《水蓮の花びら》による開幕攻撃に重点をおき、土地総数そのものを削減。《一つの指輪》の大量ドローにより、使い捨ても含めた追加のマナソースを無理やり確保」
③青いキャントリップでコンボパーツを集めるのでテンポ損しやすく、「デプス」同系の中では遅い → 「“ヘックスメイジ・デプス”or《一つの指輪》or《黙示録、シェオルドレッド》のいずれかで開幕攻撃をしかけられるよう、キープ基準を拡大し、1、2ターン目の密度を向上。《一つの指輪》の大量ドローで、どんなデッキでも間違いなくウンザリする質量の妨害を無理やり確保」
おっけーおっけー。殴らないで。まだ殴らないで。言いたいことはわかる気がしますから。じつはこのデッキの原型は7/6に記事にした、これ↓です。《一つの指輪》のパワーで《甲鱗のワーム》を支えれば、どんなことになるかという実験機。
そのときも、さんざんテストプレイして《一つの指輪》の邪悪さに肌が冷える思いを味わったのですが……特に今回の場合、《これ》↓が4枚フル搭載された「コンボデッキ」をイメージしてくだされば分かりやすいかと思います。
1人回しの感触は……極めて良好。《甲鱗さま》のためのデッキが「スタンダード」を黒く染め抜いた「ネクロ・ディスク」だったなら、今回の「青黒ダークデプス」の使用感は「エクステンデッド」を支配した極悪デッキ「ネクロ・ドネイト」に近いです。
3.純粋なパワーとスピードでは《帳簿裂き》型を上回り、ぜひ実戦で試してみたいと思っているのですが……クリアすべき課題がいくつか。
まずは「値段」です。《一つの指輪》は最新セット「指輪物語:中つ国の伝承」のトップレアとして君臨しており、そう簡単に「4枚揃えて?(圧)」とは言いづらく……。値段の変動幅も大きく、来週8月7日に禁止改定が控えたタイミングだと、とてもオススメしにくいです。あと、このカードも問題。
一連の記事は「初心者、復帰勢、親であるプレインズウォーカー」のために安価なデッキを紹介する目的で書かれており、「デュアルランドなどの高額な“再録禁止カード”を使わない」という原則を設けています。
ひるがえって「高額カードの完全下位互換になる代替品を使わない」という裏の縛りがあり、本当は「ショックランド」も使いたくないのですが……1、2ターン目に《目くらまし》を構えつつ、《暗黒の儀式》も撃ちたい「《一つの指輪》型」では必須に近いです。
そうすると《湿った墓》の2点ライフロスが、《一つの指輪》の「重荷」も相まって、かーなーり痛ぇ。《目くらまし》で手札に戻したあと、改めて出し直すことも考えれば、なおのこと。
想定通りの速さで屠れれば、それで済む話なのですが……今までの記事の中で、もっとも切実に《Underground sea》が欲しいと思ったデッキでした。
この点については……いつか、考えます。“安価な普及用”という縛りを解いて、「どうしても“青黒ダークデプス”で勝ちたい」日が……やってくる予感もするからです。その日のために「完全版・青黒ダークデプス」を組み上げる準備と覚悟はしておこうと思います。
ま、フィニッシャーが《マリット・レイジ》と《黙示録、シェオルドレッド》でどちらも「伝説」なぶん、《カラカス》にめちゃくちゃ弱いのは一向に変わらないのですが。
この点の脆さは、通常クリーチャーで戦線を支える「《帳簿裂き》型」と比較にならないほどで、白いデッキの支配率が高い環境では、使用に勇気と工夫が要りそう。
あとは「《オークの弓使い》を無視できるコンボデッキ」という想定で組んだはずなのに、《一つの指輪》で大量ドローを繰り返すので、けっこう矢が痛いんだな……。
そう。《オークの弓使い》。それに《一つの指輪》も。いつもより駆け足ぎみで記事をまとめたことには、理由があります。来週の禁止改定で、これらのカードたちがどうなるか、“よくわからない”からです。
せっかく生まれて調整した「青黒ダークデプス」=「《一つの指輪》型」が、そのままの形で存続できるかも現時点では不明です。
もちろん、今回は「ノーチェンジ」という未来も有り得るでしょう。全く予想外のカードが禁止、もしくは解禁されて、新しい環境が生じる可能性も無いわけではありません。
しかし《一つの指輪》という真核を失い、デッキの形を保てなくなるかもしれない……そうでなくても《オークの弓使い》が去って、「“黒”が隆盛しきった環境」という前提のほうが崩れ去るかもしれない。
少なくとも、大きな変化への覚悟はしておいたほうが良さそうです。
……全ての現象と同じく、デッキの命にも限りがあります。多くのファンと幸運に恵まれ、環境を幾度も乗り越えて、長く生き抜くデッキはあるとしても。
たとえば、デッキパワーがインフレについていけなくなって。たとえば、キーカードを禁止されて。たとえば……単に忘れられて。
「青黒ダークデプス」然り、オリジナルデッキの命は特に儚いもの。なにしろ、ただ1人の使い手がいなくなれば、そのまま、時の彼方に置き去りにされる定めですから。
僕の記事は、そんな短い命の披露式でもあります。それにネットの片隅に種を隠しておけば、いずれ芽吹いて、別の形で火と花を咲かせるときもあるでしょう。つい忘れがちになりますが、この「青黒ダークデプス」自体が、誰かが落とした種を拾って、自分なりに育てたものでしたから。
さて。禁止改定か……。今のところは「不安7:期待3」ほどの割合ですね。読者のみなさんのデッキのために、善い未来が訪れればと願って止まないのですが。
あと、生きろ、「青黒ダークデプス」。それでは、また。
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