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【MTG レガシー】 「青黒ダークデプス」の挑戦その5 旅立ち編 【初心者、復帰勢に向けて】

1.前回と前々回の記事では、《帳簿裂き》を4枚採用し、積極的に攻撃をしかけるタイプの「青黒ダークデプス」を対戦会で試してみました。その日に使ったデッキリストはこう。

まず対戦してくれた方々と、主催者さんに感謝。
この一連の記事では、①仮説・構築→②実践・情報収集→③検証・評価→①仮説・構築→②……という風に季節を巡らせながら、デッキの完成度を上げていきたいと考えているので……今回はまず、新カード《帳簿裂き》の評価付けからです。
キミは本当に「令和の《タルモゴイフ》」なのかい???

結論から述べると、ブロッカー、システムクリーチャーとしては、恐ろしく有能。しかし、攻撃性能では、青い《タルモゴイフ》……とは言えない、という印象です。
この「青黒ダークデプス」の構造上の欠陥は、デッキ内に24~26枚の土地が手札でダブつき、ゲーム終了時までに置ききれないことでした。
今回の対戦会で「食物連鎖」「スニーク・ショー」と互角に渡り合えた理由の1つは、《帳簿裂き》が定着したゲームだと、手札の要らない土地を有効札と入れ替え続けることができたから。

言い換えれば……このデッキで優先的に捨てたいカードは、土地なのですよね。「謀議」でサイズを上げられる条件を満たせず、まー、思ったようには育ちません。もともとのパワーが1しかなく、時間をかけても、3/5になれば良いほうです。

ライフへの圧力、という一点に限れば
遠く及びませんでした
残念

ともあれ、《帳簿裂き》のおかげでデッキ全体の完成度が跳ね上がったことは間違いなく、4枚積みを崩したいとは思いません。ちょっと驚くような速さで手札を回し、状況に応じたキーカードを集めることができます。コンボ以外にも2ターン目に選べる行動の幅が広がり、初手をキープするかどうかの充分な根拠になります。

「青黒ダークデプス」における《帳簿裂き》の攻撃力が大まかに算定できたので、デッキの他のカードたちも自動的に決まってきます。たとえば《濁浪の執政》。《帳簿裂き》自体は勝ち手段としての役目に不向きだとわかったので、「マリット・レイジ」と対をなす攻撃機として、《濁浪の執政》の1枚ごとの価値が高くなります。

やはりパワーカード……

対戦会では入れ替え用の《天上の餌あさり》も用意していたのですが、《濁浪の執政》が手札に来たときに、「これがあのクジラだったらなぁ」と思ったタイミングは1度もありませんでした。むしろ、《濁浪の執政》を2枚から3枚に増やしたくなったくらい。

動き出せば、大量のカードを稼ぐ気球ですが
これまた残念
マスコット的なキモかわいさも魅力なのに

《世界のるつぼ》もデッキ方針とは合いませんでした。《帳簿裂き》を活かすには毎ターン、スペルを連打する必要があり、手札の質と引き換えに枚数の消費が激しくなる傾向があります。
そこで、手札を補充する手段がほしくなり、元ネタの「Depth still」で採用されていた《世界のるつぼ》2枚を試してみました。土地を墓地から置き、手札で余ったものを《帳簿裂き》で入れ替えていくアプローチ。
しかし、このカードは……あまりに遅かった。戦場に出たときは何もしない置物になりがちで、今の攻撃的なスタイルに合わず、重ね引きしたときの弱さも無視できませんでした。

もっと多彩な土地を活かせるデッキなら
またまた残念

《帳簿裂き》の攻撃力不足を補う必要もあるため、《世界のるつぼ》の代わりに追加のクリーチャーを採用したいところです。この枠は環境に応じて差し替えていくフリースロットと考えており、今、候補の上位に来ているのはこのカード。

今の「青黒ダークデプス」はクリーチャー同士のダメージレースを演じる場面もあり、メインボードから戦場に触れる手段を増やしたいと感じていました。厄介なパーマネントをどける手段としても。たとえば《血染めの月》や《謙虚》。

《月》の影響下だと
《暗黒の深部》が氷の無い《山》として戦場に出ます
《月》を除去すれば、「マリット・レイジ」降臨
この状況を積極的に狙うデッキが「赤単デプス」
フィニッシュ手段がクリーチャーなので
この1枚がすごく効きます
ルールが難解だったことで有名
あ、今もです

《厚かましい借り手》ならバウンス能力に加え、本体も瞬速、飛行、パワー3のアタッカーとして頼りになりそうです。細かい種類や枚数の調製はあっても、この辺りがメインボードでの主な陣容かなと思っています。

サイドボードは、思いきって元ネタの「Depth still」から離れ、「デスシャドウ」を参考にしたのが奏効したようです。
「青黒ダークデプス」と「デスシャドウ」はカラーリングだけではなく、戦略や苦手なカード、同系デッキの中での立ち位置など、似ていると感じた部分が多く、サイドボードのアップデートのために最新のデッキリストを確認する習慣ができました。

飛行(接死)ブロッカーに弱く
白の追放除去に弱く
その代わり、手札破壊+打ち消し呪文で
青い「アンフェア」デッキに強い

サイドボーディングの部分は他のデッキとも対戦してみないと最適解を見つけづらいところですが、前回の対戦会では狙った通りの効果をあげられたと考えています。特に《トーラックへの賛歌》《ダウスィーの虚空歩き》の威力には目を見張るものがありました。

古代呪文。初出は「フォールン・エンパイア」で
なんと「コモン」
手札をかき乱されるより
《意志の力》との交換を選ばれる場合が多いようです
「シャドー」で堅実にダメージを稼ぎ
手札破壊とも好相性
ぜひ《エムラクール》や《アトラクサ》を狙いたい

サイドボードは環境に応じて刻々と変わる生ものなので、この記事では最大公約数的な形を例示するのに留めます。これらを踏まえて改良した、「青黒ダークデプス」、最新のデッキリストはこう!

2.今日の記事は、なんと! ……本編にあたる部分が、早くも終わってしまいました。感慨深くもあり、少し寂しくもあるのですが、同じ「デッキビルダー」の方になら気持ちをわかっていただける気がします。

前回の対戦会で感じたこと。「青黒ダークデプス」のデッキとしてのパワーは、ある一定のレベルに達することができたようです。相性の差や使い手の技量など、さまざまな条件で勝敗は移ろうとはいえ、レガシー環境の名高いデッキたちと競り合えるほどに。

無茶とツッコミどころだらけで、試行錯誤と暗中模索を繰り広げ、臆面もなく助けを求め……「青黒ダークデプス」はきっと、悩み深くて、いちばん楽しい、揺りかごの季節を過ぎたのです。

もちろん、「青黒ダークデプス」はまだ環境トップ級の多くと激突しておらず、致命的な欠陥に僕が気づけていない可能性もあります。しかし、あまり多くを心配してはいません。ここから先は、新しいデッキを「生み出す」のではなく、環境や仮想敵に応じ、「調整する」という分野の作業に移っていくと考えています。

今のところ、「青黒ダークデプス」は(僕が知るかぎり)使い手がこの世に1人しか存在しないデッキ。しかし、いつか、この記事を読んでくれた方の中で、同じデッキを組んでみようと言ってくれる方がいるかもしれません。いまだ顔も名も知らない誰かのために、改めて、わが子の「紹介」をしておきたいと思います。

・「青黒ダークデプス」は土地である《暗黒の深部》を中心にした「土地コンボ」デッキ。色は名前の通り、青と黒の2色。土地のサーチやマナ加速が得意な緑を中心に組まれることが多い「デプス」系の中では、異色のデッキです。

レガシーでは「コンボ」の色です

・まず、一般的な「デプス」と同じ「黒」を使う理由は、《暗黒の深部》から全ての氷カウンターを取り除ける《吸血鬼の呪詛術士》のため。1~2ターン目の最速~準最速パターンで「マリット・レイジ」を呼び出す「ヘックスメイジ・デプス」コンボに必須のカードで、最序盤から「対応を誤れば“即死”」という強い圧力をかけ続けることができます。

「バトル」実装で
一躍、シンデレラ化
在庫が払底してたんだが……

黒い手札破壊呪文で、メインボード1本目から対戦相手の情報を集められるのも利点です。

実際のゲームではこの《思考囲い》を要所要所で突き刺していくことで選択肢と主導権を奪いつつ、リズムを作っていきます。反対に言えば、何らかの理由でこのカードが使えない、または、効きにくい状況は黄色信号。

サイドボードに用意したカードも、意図的に黒の割合が多くなるようにしています。赤いデッキを相手取ったとき、2本目から積まれることが予想される《赤霊破》系への耐性という点で、黒いカードのほうが信頼性は高いからです。

・「デプス」でありながら「青」というのが、「青黒ダークデプス」の最大の特色。何よりの利点は《意志の力》を搭載できること。

特定のキーカードを通せば、そのまま勝つ「コンボデッキ」“が”。キーカードを抑え込めば、機能不全になる「コンボデッキ」“に”。それぞれの立場で特に高い威力を発揮し、レガシー環境を定義し続けるカード。
ところが「青黒ダークデプス」の本質は、同系の中では破格に呪文の割合が多いとはいえ、「土地コンボ」。特に《演劇の舞台》を介する「ステージ・デプス」コンボでは自分から呪文を唱える必要がなく、相手の《意志の力》が効きにくいです。
上述の《思考囲い》をはじめとした手札破壊呪文のサポートもあり、青い「アンフェア」デッキ同士の決戦で、構造的に有利。これが「青黒ダークデプス」を選ぶ理由にもなり得る長所だと思っています。

手前味噌で恐縮ですが……一例として、他の記事で紹介している「アーボーグ型ドゥームズデイ」。「青黒ダークデプス」には後述する弱点もあるため、総合的な戦闘力では「アーボーグ型」のほうが、まず間違いなく上です。

曲がりなりにも
「Doomsday」です

ただし、この2つのデッキが、もし直接、戦ったら。
おそらくは「青黒ダークデプス」のほうが上の勝率を叩き出します。まだ萌芽を示し始めたばかりとはいえ、このデッキの対青性能、対コンボ性能は、ちょっと尋常ではありません。

青を使う他の利点は、《渦まく知識》《思案》というレガシーでもっとも優秀なドロー呪文を自在に扱えること。これにより土地だけに限らず、デッキ内の全てのカードにアクセスしやすく、高い安定性と問題解決力を備えています。

レガシーにおける
青の1マナインスタント最強候補

ただし、この長所は「コンボパーツや妨害札を探すために《渦まく知識》《思案》を経由する必要がある=序盤にテンポ損が生じやすい」という短所の裏返しでもあります。
緑を用いる「デプス」のように、一挙動で土地のサーチと戦場への展開を同時に済ませることができないのも痛く、《エルフの指導霊》に相当するマナ加速も無いため、平均的な速度は同系の中では劣ります。

一方、緑の1マナインスタント最強候補

このデッキを握るときはどうしても、問答無用で斬り伏せるより、相手のデッキとの「対話」を必要とする場面が多くなる、と理解していただければと思います。

・「青黒ダークデプス」は、対「アンフェア」戦に強い反面、《剣を鍬に》《カラカス》《不毛の大地》など「フェア」なデッキの多くがメインボードから標準装備しているカードを苦手にしています。
特に、白い除去を数多く搭載した「多色コントロール」や「デス・アンド・タックス」との戦いでは注意と工夫が必要。
《悪意の大梟》《氷牙のコアトル》、各種の飛行トークンなどで「マリット・レイジ」による攻撃を凌がれ、逆転を許すことも。

その代わり、《スレイベンの守護者、サリア》や《虚空の杯》《耳の痛い静寂》《封じ込める僧侶》などは効果が薄い……もしくは、全く効きません。

分類上は「高速コンボ」で「アンフェア」デッキに属するはずが、コンボ戦用の対策カードには強く、むしろ「フェア」デッキ用の汎用カードに弱いという、なかなか変わった特性を持つデッキです。この辺りの齟齬を理解して上手く活かすことで、拾えそうな勝ちがある気もします。

「スニーク・ショー」や「リアニメイト」なら
悶絶必至……なのですが

現在の構成では、「マリット・レイジ」による強襲を封じられても継戦能力を確保するため、別の攻撃用クリーチャーを搭載しています。近年のクリーチャー性能の向上により、単騎でも充分に勝ちきれる青いフィニッシャーが実装されたことも、このデッキには追い風でした。
具体的には、墓地に貯まっていくインスタント、ソーサリー呪文を直に攻撃力へと変換できる《濁浪の執政》の採用です。

やぁ! 青はクリーチャーの色!(アイサツ)

・《意志の力》《狼狽の嵐》をはじめとした豊富な防御スペルで「マリット・レイジ」を守りつつ、前述の《濁浪の執政》《帳簿裂き》などの飛行クリーチャーによる空戦もしかけるというのが、現在の「青黒ダークデプス」の基本的な戦略方針です。

もちろん、よりコントロールに寄せたり、より速さを求めたり、他にも様々な型が考えられ、まだまだ工夫の鉱脈は深いです。何しろ「青黒ダークデプス」は……セオリーも何も定まっていない、まっさらなデッキです。ただ、どの型であっても、

①「デプス・コンボ」の初撃を防がれたあと、2撃目へのリカバリーが難しい
②デッキ内に土地カードが多いため、ゲーム終了時までに置ききれないものが手札に貯まって無駄になる
③青いキャントリップでコンボパーツを集めるのでテンポ損しやすく、「デプス」同系の中では遅い

デッキとして、これらの問題をクリアするための工夫が必要になってきます。それぞれが難問でもあり……挑戦し甲斐があるテーマでもあると思います。
また、青と黒の2色でまとまっており、デュアルランドをはじめとした高額な再録禁止カードを用いる必要が薄く、レガシーの中では安価なデッキの1つです。

たとえば、うちのデッキでは
これを使っています
まだ、求めるレベルには達しておらず
「宇宙」ではないですけどね

この一連の記事は、初心者や復帰勢の方をレガシーの世界に誘うために書かれています。「青黒ダークデプス」。以前の記事よりは自信を持って、こう言えます。ここまで工夫を重ねてきた全ては、ただひたすら、この一文に厚みを持たせるため。
“「スペルコンボ」の緻密な呪文の駆け引きと「デプスコンボ」の一刀両断の斬れ味と、その両方の魅力を兼ね備えたこのデッキを、レガシーの入り口に選んでくれれば、それは望外の幸せ”。

使用感が爽快で、気持ちの良いデッキです。そのことに関しては、保証書を出しても良いほど。名勝負製造機のような性質があり、勝っても負けても「レガシーで戦っている」という醍醐味を充分に味わうことができるはずです。
そして今なら、ある特典がついてきます。実際にこの「青黒ダークデプス」を組みたいと言ってくれる初心者や復帰勢の方がいるとすれば……ぜひとも、ご一報ください。必ず、“応援をします”。

……「それだけ?」

ええ。申し訳ないことに、それだけです。
僕は他の方に適切なアドバイスなどができるほどのプレイヤーではありません。もちろん、このデッキについて相談を持ちかけてくだされば、能力が許す全力をもって、できるかぎりをお答えします。しかし、大して有益なことを言えはしないでしょう。
新しい世界に飛び込もうとする誰かのためにできることは、応援し、背を押すこと。そうして、旅立ちを祝福し、道のりの晴れやかさを祈ること。結局のところ、それしか無いのではないかと感じています。

もし、レガシーの広い世界のどこかで、テーブルをはさみ、同じデッキを手にした誰かと出会えれば? そのとき、ようやく「青黒ダークデプス」は“孤独”ではなくなる。
僕がこのひとつながりの長い長い記事から何らかの報酬を得られるとすれば、それです。その瞬間と出会うために、あらん限りの力を燃え立たせます。きっと、今後も変わらず。

《孤独》か……
モダホラ2ァ!!!

3.ふぅ。このあたりで、いったん筆を置こうと思います。ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

正直に白状すると、悔いが1つ。まだ機会を得られず、「青黒ダークデプス」を“実践”ではなく“実戦”の場……大会に持ち込んで、結果を問うことができないでいます。
それだから、このデッキはまだ、肝心のところが試されておらず、真価は未知数です。「ある程度の」「一定のレベルで」という風にしか表現できなくって……。
僕は田舎暮らしの上に、まだ小さな子供の親でもあります。“夜はなるべく家族と共に過ごす”というルールを自分に課しており、休日の昼間くらいにしかチャンスが得られないのですよね……それだと、なかなか店舗大会とスケジュールが合わねぇ。

《夜のスピリット》
「ミラージュ」で
このカードと出会ったことが始まりでした
今でもバインダーの最初のページが定位置

何だったら自分で公民館に電話もしますので、四国……香川県の西のほう、休日昼にレガシーの草の根大会を開いたら、どなたか参加してくれないでしょうか!? 試しに遊びに寄ってみるかと思ってくれた方も、気軽にご一報を。もうすぐ家族が1人増えるので、さっそく今すぐ、というわけにはいかなくても、いつかの未来のためにぜひ。
初心者、復帰勢、大歓迎です。何しろ、僕がそうですから。

そのときは、今までの記事で
たびたび登場してきたレガシー友達さんも
エントリーしてくれねぇかなぁ……
のび太がドラえもんに泣きつく構図やな
突然の「鉄人兵団!」
手札4枚を公開、8マナを追加して!
負けました!!!

それでは、これで。
「青黒ダークデプス」の長い記事は今回で一区切り……というつもりですが、どこかの大会に出られたり、新しい工夫を思いついたりしたときに、しれっと特別版を書いている気がします。その折は、どうぞ良しなに。

最後に改めて、感謝を。熟練者、初心者、復帰勢、そんな些細なことは問わず、レガシーを愛する全ての方々へ。”我らが女神“「マリット・レイジ」の加護があらんことを。

やっぱり、オーロラの風が吹きすさぶ
「コールドスナップ」版が至高やな……

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