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【MTG レガシー】 “黒いオムニテル”と“青いスパイ”の『モダンホライゾン3』 【初心者、復帰勢、自分と同じ親に向けて】

1.ちと、間が空きました。前回の記事では、最新セット『モダンホライゾン3』にて、“青いデプス”からの視点で、カードレビューをさせてもらったワケですが。

実際の『モダンホライゾン3』発売と、それに伴う環境の激動、さらには6月24日の禁止改訂と、変化に継ぐ変化で……うーむ。記事をまとめるタイミングが難しいぜ。

文字通り“なんやかんや”があって
「このカードはそろそろ危ない」と
警告を出されたところまでが
レガシーという長い物語の
現時点でのあらすじです

うちの記事は環境の最前線を追い続けるよりは、その隙間をぬう形で、好きなオリジナルデッキを使って楽しんでいこうぜぇ、というスローライフ、かつ人畜無害な立ち位置を目指しているのですが……これほどの大波は無視できません。
“自らがトップメタになる必要はなくても、状況次第でトップメタを叩き斬れる強さを目指す”。これが、オリジナルデッキ屋の矜持。“勝てないと面白くない”のも、また真理だからです。

まあ、大量の高パワーカード、それを活かした強敵たちという極上のオモチャをもらいましたからね。僕自身、「青黒(青単)デプス」「ストーム」「オムニテル」「スパイ」と、同時並行で5つくらいのデッキをウキウキと調整していました。今回の記事は、前回からの答え合わせ……という内容にしたかったのですが。ふむ。

不吉とは
カエルの形をしている

2.デッキごとに順を追いましょう。まず2種の「青いデプス」については……いったん保留です。「青黒デプス」に関しては、これらのデッキの中でもっとも早く形になりました。デッキリストはこう!(今日の記事は作業の効率を考え、デッキリストの紹介をXのポストで代用させてもらいます)

新カード《ネクロドミナンス》をアドバンテージエンジン、兼、《エネルギー・フィールド》と合わせた防御用のコンボパーツとみなした「青黒ダークデプス」、改め、「ネクロ・デプス」。こういうと何ですが、《ネクロドミナンス》の“真っ当な”使い方を目指したデッキです。

次に紹介するデッキが


真っ当ではないからだ!!!
《ネクロドミナンス》の
あらゆるカードが墓地に落ちなくなるハンデを逆用し
最速2ターンで完全防御
攻めの「ヘックスメイジデプス」と対をなす
守りの奥義です

「青黒」に関しては……デッキのクオリティが問題なのではなく、はっきり言ってしまうと《ネクロドミナンス》待ちです。
前回も述べたとおり、僕はこのカードの価格はもっと落ち着いてくると考えているからです。活かせるデッキがピーキー過ぎて、汎用的にどんなデッキにも入るカードではない……現に発売直後よりも、明らかに値段が下がってきています。いずれ機を見て、完成させるつもりで、きっと記事にもします。

困ったのは「青単」のほうで、こちらは目論見が外れました。前回、にぎにぎしく紹介した《海の先駆け》型が上手く形になってくれません。

「ん?」

《海の先駆け》+《暗黒の深部》コンボを達成するには、彼女をいったん戦場から除外する方策が必要となり、攻守を兼ねたエレガントな手法を思いつけていないのが理由。
それ以上に、①青青というコストが重い。彼女を唱えた上で、土地の《暗黒の深部》を新たにセット、さらに除去手段までがワンセットと考えると、見た目よりも遥かに遅く、残念ながら主兵装とするには信頼性に欠けます。現環境の速度感には合わないと判断しました。
もし、いま「青単デプス」で《海の先駆け》を使うなら。メインボードでは不採用、サイドボードでの搦め手ということになりそうです。紹介した身として申し訳ないし、世知辛いぜ。

あっ、こちらの使い勝手は
目論見通り最高でした

3.さて。MOの世界で『モダンホライゾン3』実装直後に猛威を振るったのは、先ほどの《ネクロドミナンス》をちからいっぱい悪用したデッキでした。初手《暗黒の儀式》から、ライフのほとんどを支払い、手札を19枚に膨れ上がらせて、1ターンで勝ち。「ネクロストーム」。

僕が組んだリストは、後手での弱さや、手札の融通性の無さを嫌って、《意志の力》や《思案》を採用した型で、より開幕特化の一般的な型とは異なるのでご注意を。従来のデッキだと「青黒スパイ」と「緑黒スパイ」との関係に近いかも。

《ネクロドミナンス》のせいで、手札上限5枚?
それなら終了ステップ、インスタントタイミングで
勝敗を決すれば良い!

とにかく速く、4マリガンでも平気で1ターンキルできる初手条件の緩さ!
最初は、ヤベェデッキが生まれちまった、と本気で思いましたし、これを機に《ネクロドミナンス》高騰、もしくは禁止になったら困ると戦々恐々でしたとも。もっと普通の使い方をする「青黒デプス」完成のために、な(私情)。

しかし……「ネクロストーム」の化けの皮はすぐに剥がれてきましたね。このデッキの弱点は、致命的なまでの安定性の低さ。何しろ、コンボ突入後に《風に運ばれて》、そのための青マナを用意する《魔力変》、両方を引けないと成すすべなく敗北なのだから。

このカードの採用には
なるほどと感心しました
マナ源であり、手札の交換も可能
しかし、これ自体を撃つために
3マナ=指導霊3枚が要るのだ……
うきぃ←それは猿のほう

うーむ。残念ながら、「ネクロストーム」は僕が好きなタイプのデッキではありませんでした。構築面、プレイング面、双方であまりに自由度が少なすぎて、工夫の余地がなかったからです。その代わり、このデッキからは環境に対するヒントをもらうことができた気がします。

4.この辺りで《有翼の叡知、ナドゥ》の理不尽なアドバンテージの稼ぎ方が周知され始めます。「セファリッド・ブレックファースト」の超強化……というより、ほとんど主役交代劇です。

能力誘発は各クリーチャーにつき2回……しか!!?
日本語!!?
強すぎるあまり
禁止を警戒で値段が下がっていく現象が発生
一方でこちらは記事執筆時点
6000円。気絶
ついでのごとく
クリーチャー・タイプ「セファリッド」が消滅
彼は「タコ」になった。ひどすぎん?

その裏番組で僕がやっていたことは、「青黒オムニテル」の強化。半年前から少しずつパーツを集めていた、オリジナルデッキ「ダーク・オムニテル」。『モダンホライゾン3』のプレビュー直前に完成し、実践投入待ちだったのですが……。

5~8枚目の《実物提示教育》として《鏡に願いを》によるサーチ+踏み倒しを使うデッキが「ダーク・オムニテル」。最新型では《全知》→0マナ《狡猾な願い》を主な勝ち筋にしていたのに、まさかピンポイントにデッキコンセプトを粉砕してくるとは、な……。

これのせい
相性、最悪オブ最悪
相性、最悪オブ最悪オブ最悪!

実際に、他のデッキの多くがこのイライラアーティファクトを装備しはじめており、改造が必須でした。幸いにというべきか、ありがたいことに、こちらにとっても強化策があり。今回、六条屋の推しといっても過言ではない1枚です。《アヴァシンの創造》!

イラストもフレーバーも美しい
イニストラードの守護天使アヴァシンの悲劇が……

この“アンコモン”、1枚で万能サーチ+クリーチャー・カードの踏み倒しという破格の性能を誇ります。レガシーなら《暗黒の儀式》によって1ターン目から展開可能。さらに《実験的占い》の「増殖」によって「英雄譚」固有のタイムラグを埋めることを目指した、新「ダーク・オムニテル」がこう!

これ自体がパーツ探しとして
悪くない性能なのが嬉しい
手札に加えるタイプなので《オークの弓使い》に強く
《虚空の杯》《ウルザの物語》の無力化も可能

このパッケージの採用理由は《苛立たしいガラクタ》対策だけでありません。従来型の「ダーク・オムニテル」の弱点は①黒黒黒+協約コストが必要という《鏡に願いを》の気位の高さ。アーティファクト土地を満載しつつ、この濃い黒マナを用意するのは至難で、かなり扱いに注意が必要でした。唱えやすさの基準点を《実物提示教育》とした場合、《鏡に願いを》のほうが明確に後。

一方で《アヴァシンの創造》は1ターン目に《暗黒の儀式》から唱えられる上に、手札に《全知》や大型クリーチャーなどの「砲弾」を他に用意する必要がない、自己完結したカード。
唱えやすさは基準点の《実物提示教育》よりも《アヴァシンの創造》のほうが先になり、総合的な速度や安定性で従来型を大きく上回ります(その一方で《アヴァシンの創造》効果は遅効性で、できるだけ後引きしたくないという欠点があり、《鏡に願いを》型の上位互換ではない。とくに《全知》下では弱い)。

最初は、より様々なクリーチャーを採用し、「オムニテル」よりも「スニークショー」に似たタイプを考えていたのですが……

2ターンの猶予と大量のライフというコストを考えると
このカードでも決戦兵器として物足りなかった
そこで「オムニテル」型に立ち戻ります
《アヴァシンの創造》から《アトラクサ》を呼び出せば
手札の質と量を最高化し
《実物提示教育》→《全知》→《エムラクール》まで
容易に繋がるから

通常は3ターン目、《実験的占い》の助けも借りれば2ターン目のインスタントタイミングで《アトラクサ》着地を高確率で実現でき、決定力も申し分なし。あと、アンコモンの《アヴァシンの創造》は「100円」で、入手性の点で大変なアドバンテージがあり、ぜひ試してみたいと鼻息を荒くしています。
まあ、僕個人は《アトラクサ》未入手で、先月の記事の時点では買わなくて済むようになったと安心していたんだがな! けっきょく、ファイレクシアの大天使からは逃げられんか~……。

5.ふぅ。ここまでが『モダンホライゾン3』発売後の、あるデッキビルダーの大まかな右往左往っぷりです。スマンな。節操がなくて。
そしてここからが……現在進行形での物語となります。
『モダンホライゾン3』の全カードが発表されて、およそ1ヶ月。全ては変わり、「ネクロストーム」の突風などで一時は混迷を極めていた環境を、今は一定の秩序が支配しているように見受けられます。……大いに問題です。世界が一変する前と、支配者の名前が変わっていない。「青黒リアニメイト+スキャム」。

上の「ネクロ・デプス」や新「ダーク・オムニテル」は、オリジナルデッキながら、自信作です。僕のプレイヤーとしての腕前は、かーなりのポンコツ寄りで、それは小さな子供たちの親で、プレイ機会があまりに希少すぎるという理由に起因するのですが、それでも並みいるレガシーのデッキ、その多くと渡り合える自負があります。
何しろ、僕が駆るデッキの詳細はこのニッチな記事でしか扱っていないのだから。
情報量の格差を活かしての奇襲、または戦略レベルで専用デッキを最適化し、構造的な隙を突くことで、“腕の差”で敗れる確率を極小化する……もちろん理想にすぎなくても、それが僕のレガシープレイヤーとしての戦い方です。

それでも、今の環境を定義する「青黒リアニメイト+スキャム」は恐い。このデッキの完成度は極まっています。フェアであり、アンフェア。《渦まく知識》や《思案》によって高い安定度が担保されており、青と黒のピッチスペルにより、超軽量にして対スペル防御も完璧、その上で攻撃力も半端ではないのだから、お手上げです。
というか……『モダンホライゾン3』で最大級の壊れカードをもっとも強い形で使えるデッキなのでは? 《超能力蛙》。

仮にもクロックパーミッションが、こんな簡単に手札を補充できるのはマズイでしょう……しかも、強化が「+1/+1カウンター」式。冗談ではなく、2パンチも許せばゲームが終わります。
前回の記事からおよそ1ヶ月を経て、今後のレガシーはこのカードを中心に回ると考えているのですが……。公に、「青黒リアニメイト+スキャム」は監視体勢にあり、特に《悲嘆》を禁止する可能性があると言及されています。しかし……たとえ、そのとおりにしても支配率が下がるとは思えません。

チャレンジャー側の視点だと「ダーク・オムニテル」は、相性差がやや辛い。分類上は「ショーテル」系のコンボデッキで、《アヴァシンの創造》採用は手札への干渉による影響を抑えるためでもあるとはいえ、《悲嘆》+《再活性》の手札破壊2連打を受けて無傷ではいられないからです。
「ネクロ・デプス」は、もう少しマシ。もともと前身の「青黒スキャム」との対決を念頭に構築したデッキでもあり、手札破壊と打ち消し呪文では止まらない「土地コンボ」でもあるから。しかし、「青黒リアニメイト+スキャム」は《不毛の大地》デッキでもあり、いささか不安が残ります。上述の《蛙》の存在も考えると、アドバンテージ勝負も挑みにくいし。

本当、なんでも出来やがるな……

それならば、どうするのか。
唐突ですが……先ほどの「ネクロストーム」は、なかなかに“いい線行ってた”デッキだと思うのですよね。
粗っぽいデッキで構造上の無理や妨害への脆さが目立つとはいえ、圧倒的な攻撃速度はどんな相手でも抵抗不可の武器になる。そのことを瞬間風速的な暴れぶりで証明してくれた気がします。

《オークの弓使い》に弱いという下馬評を
やつが出るより先に決着をつける!
という力業でクリアする潔さ、よし!

つまりは、「ネクロストーム」と同等のスピードとキレを持ち、より安定性が高く、各種の妨害を貫通さえすれば、確実に勝つデッキを作れば良い。その解法の1つが「アンフェア」デッキの極北、「The Spy」である!

こちらのリストは開幕特化型の一般的な「緑黒スパイ」ではありません。「青黒」。
僕は《意志の力》を使うためにレガシーというプレイヤーでもあり、先手番ならともかく、後手で1ターン目にヘイトアーティファクトを置かれると即敗けがありえる「緑黒」よりも「青黒」のほうが好みに合います。

『モダンホライゾン3』では、一見地味ながら全ての「スパイ」ユーザーにとって歴史的な変化がありまして……各色のアンタップイン両面土地=「ボルトランド」が2種類ずつの増量!
つまりは1ターン目に86%の確率でコンボスタートできる「14枚」の黒マナ源を、純粋な土地を1枚も用いず、容易に実現できるようになったのです!!!

これにより、安定性が大きく向上。スロットの削減にも成功し、《悲嘆》+《再活性》+《納墓》パッケージを搭載した「黒単スパイ」がトーナメントシーンに現れています。
一方、僕自身のアプローチは、「ダーク・オムニテル」でも用いた《アヴァシンの創造》を9~12枚目の“スパイ”として採用すること(マッドサイエンス)!

“スパイ”自体の枚数を増やすだけではなく、《アヴァシンの創造》が①黒黒という点が重要で、「ネクロストーム」と同様に《暗黒の儀式》1枚から動き出せるので、キープ基準が大きく緩和されます。
1ターン目に《アヴァシンの創造》を展開し、《欄干のスパイ》をサーチすれば、「英雄譚」のカウントアップと共に、3ターン目、彼我のどちらかが必ず、敗れる。まるで“死の宣告”で、付けた銘が「青黒スパイ【デス・センテンス】」。

問題は高速コンボらしからぬタイムラグですが、ライブラリーの全てを墓地に落とす性質上、デッキ内の《陰謀団式療法》全てをコンボ前に一斉射でき、初動で《アヴァシンの創造》さえ設置しておけば、対戦相手の手札破壊や打ち消し呪文での妨害はできません。

紹介したリストでは2枚
現在調整中の型では4枚で
手札をズタズタに撃ち破る想定

その代わりに、前述の《苛立たしいガラクタ》を含めたヘイトアーティファクトを置かれたり他の高速コンボに時間差を突かれたりすると弱いため、《否定の力》をメインボードから投入。
また現行の型ではさらに考え方を推し進め、《予見のスフィンクス》を採用することで、メインボードでは青マナを一切必要とせずに初動を安定化、黒マナによるコンボ達成と妨害を徹底できるようにしています。

誰が言ったか
0マナで青い《吸血の教示者》
《意志の力》《否定の力》《金属モックス》の
コストにもなり、意外と邪魔になりにくい
過言……か?
惜しむらくは
先手だと占術3で探したカードを
即座に手札に入れるのが難しい
あ~、このカードが使えたらな~
《陰謀団式療法》とも良相性なのだが
(無 理 !!!)

《意志の力》《否定の契約》も含めて16枚もの妨害を搭載でき、大変に僕の好みに合うデッキです。サイド後、墓地対策されるのは必至なので、別の勝ち筋を用意する必要があり、そこも個性と“腕”の見せ所ですね。

このカード、好きすぎやろ……
今はこのカードを
追加のエースにしていますが
この辺りの新カードも試してみたい
墓地依存度0の
こちらとの比較になるかなと思います
もしくは《アヴァシンの創造》から呼び出す前提で
この辺りでの強襲を狙うのも良し

ふぅ。こんなところでしょうか。僕自身の『モダンホライゾン3』との向き合いかたは。ま、エンジョイしてるほうです。たぶんね。

レガシーというのは、長い長い遊びで、物語でもあります。結末はまだ誰にもわからなくても、旅の途中でさまざまな出来事が起きる。現在の章での主人公、もしくは倒すべき魔物が、「青黒リアニメイト+スキャム」?
挑戦を受ける側と挑む側、どちらの立ち位置を選ぶにしろ……精いっぱい楽しみたいものです。いつか、遊びに満足して、それぞれが家路につく日まで。それでは、また。

1マナのプレインズウォーカーの脅威や
新生エルドラージの襲来など
まだまだ語りたいことは少なくないけれど

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