【MTG レガシー】 “青いデプス”の『モダンホライゾン3』カードレビュー 【初心者、復帰勢、自分と同じ親に向けて】
1.ドーモ。「青黒デプス」「青単デプス」など、“青いデプス”の開発と研究の最前線、六条屋の記事でございます(大言壮語)。
いや~、エライことになりました。もともと、うちの“青いデプス”は自分自身の趣味のため、または波長が合う誰かのため、ニッチな記事の片隅で細々と改造を続けていたもの。
ところが、2024年6月14日発売の『モダンホライゾン3』にて。尋常ではない質と量の追加パーツが押し寄せてきまして……。アカン、ほんまに流行してしまうかもしれへん。
嬉しい以上に、戸惑っています。マイナーデッキ使い特有の、“自分だけで調整してきた作品が、急に日の下に引っ張り出されそうになって、挙動不審”状態。
ともあれ、一連の記事の目的は“初心者、復帰勢向けに、高価な再録禁止カードを使わず、比較的、安価で扱いやすいデッキを紹介し、レガシープレイヤーを増やすこと”(その上で、どこかでいっしょに遊んでもらうこと)。
そして、うちの看板デッキの一角である「青黒デプス」、また姉妹機の「青単デプス」に最新セット『モダンホライゾン3』がどのような影響を及ぼすか、しっかり説明することもデッキ製作者の責任でしょう。
というわけで……今日は最新セット『モダンホライゾン3』から、「うちの青いデプス」で使えそうなカードのレビューをするぜ。まずは「青単デプス」用のカード。デッキの強さを易々と2段階は引き上げる、『モダンホライゾン3』の大本命からです。
・《海の先駆け》
「青単デプス用のオリジナルカードかな???」と言わざるを得ない性能で、はじめに見たときから正式に発表されるまでの間、“口にチャック🤐”状態をキープするために大変な意志力を必要としました。
この《海の先駆け》、昔からのプレイヤーには、青い《月の大魔術師》と言えば分かりやすいでしょうか。
ちょっと説明が必要になるのですが、《海の先駆け》、または《月の大魔術師》の影響下では、基本でない土地である《暗黒の深部》も、「島」(あるいは「山」)として戦場に出ます。
その際、“氷カウンター10個を置かれた状態で戦場に出る”能力も失っており、何らかの手段で《海の先駆け》(《月の大魔術師》)を戦場から取り除けば……問題なく“氷カウンターがないとき”の能力が状況誘発。直ちに《マリット・レイジ》顕現と相成ります。
この原理を応用した「赤単デプス」というデッキも存在したのですが、まさか「青単」で同じことが出来るようになるとは。
何だかんだ言っても、「レガシー」は「青」が強い世界です。全ての特殊土地が赤く染まるよりは、青く沈むほうが、対戦相手にとっても困らないケースが多く、色マナへの拘束力という点では《月》のほうが上かと思われます。
それでも「レガシー」を支える地盤である「デュアルランド」「フェッチランド」「2マナランド」の全て、なにより「デプス」がもっとも苦手とする《不毛の大地》の無効化を、デッキを歪めずに達成できるのは強力無比。
また《月の大魔術師》より優る点として、《海の先駆け》も「青」なので、《意志の力》によるバックアップが容易。《目くらまし》も強化され、どんな土地でも手札に戻してコストにできるように。
「青単デプス」にとって《海の先駆け》は攻守一体。《マリット・レイジ》を呼び出すため、自然に戦場から退ける手段には工夫が必要で、ここが個性の出しどころです。
なんというか……全てがデッキに噛み合いすぎて、いっそこわい。知覚の外から誰かに見られてる気がする。そんな《海の先駆け》単品でも専用カードに近い性能なのに、《モダンホライゾン3》の意味不明なところは、親切にも脇を固めるカードが同時に実装されているところ。
・《朦朧への没入》/《催眠の泉》
上の《海の先駆け》のほうは「ま、まあ、モダンホライゾンですから?」と、比較的、心穏やかに受け止めることができたのですが、実をいうと、この両面土地が発表された時のほうが唖然としました。真の「青単デプス」用のオリジナルカード? あり得ん。
わかりやすい強さの《海の先駆け》より、ある意味で《朦朧への没入》のほうが「青単デプス」の本質を補えるカードです。
今までさんざん記事に書いてきた通り、「青いデプス」の弱点として、コンボパーツの《暗黒の深部》《演劇の舞台》、それらを守るための《不毛の大地》と、“特殊土地をデッキに満載しなければならず、その多くをゲーム中に並べきれない”問題がありました。
工夫無しだと、土地が手札にやたら貯まるし、今引きのカードの質も低くなりがちです。
そのため「青黒」では恒常的な手札入れ替え手段の用意、「青単」では土地総数そのものの圧縮という工夫を施しており、絶対に表面では撃てない《海門修復》までデッキに積んでいました。
そこで《朦朧への没入》です。レガシーでの3マナインスタントは相応の重たさ、とはいえ、「7マナソーサリー」の《海門修復》よりは遥かに現実的なコスト。
パーマネントか呪文を対戦相手の手札に戻す効果は応用範囲が広く、まったく役に立たないゲームは無いでしょう。
直接的にか擬似的に、土地の総数を極限まで絞るための工夫を凝らすこと。これが、僕が「青いデプス」を組む際、もっとも注意している勘所で、急所です。
《朦朧への没入》は、事実上、呪文枠を4枚増やしつつ、デッキとして必要な青マナ量を確保してくれる、魔法のカード。さらには「アンコモン」なので、デッキ内の4枚+裏面で出したときのマーカー用の4枚を買ったとしても、なお安い!
「青単デプス」にとって、『モダンホライゾン3』での収穫は、現状ではこの2枚です。『モダンホライゾン』シリーズの目玉商品となりつつある、新ピッチ呪文《拒絶の閃光》も、もちろん試してみたのですが……。
今のところ、使い勝手がよろしくない……上の《海の先駆け》を生け贄にする手段として最適かと考えたのですが、能動的に使うことができず、「青単デプス」ではトークンではないクリーチャーの単価が高いため、手札で持て余す時間が長すぎました。
「マーフォーク」くらいクリーチャー総数が多いデッキじゃないと活かしきれないんじゃないかな……。もしくは、《瞬唱の魔道士》をフル投入でもしないと。
さて、次は「青黒デプス」です。クロックパーミッション要素が色濃い妹機の「青単」とは、まったく別の方向で強化がありまして……。
先ほど「青黒」を活かすには“恒常的な手札入れ替え手段”が必要、と書きました。次のカードは、それの究極形。
半ばギャグとして「レガシーで《ネクロポーテンス》解禁を希望!」と言い続けてきたけれど、真に受けるやつがあるか!!?
・《ネクロドミナンス》
亜種は数知れないとはいえ、往年の極悪ドローエンジン《ネクロポーテンス》の、直接の後継カードがついにオンステージです。そんな、むちゃくちゃな……。
最近の僕が何をやってたかというと、ひたすら、こいつを活かせるデッキの探求だったり。ちなみに本家《ネクロポーテンス》がこれ↓な。
ライフ1点をカード1枚に変換し、爆発的な手札量で対戦相手を圧倒、またはコンボパーツを一瞬でかき集めて勝つ、「黒」の象徴。伝説に謳われる、1996年「ネクロの夏」の主人公。
後継機《ネクロドミナンス》では、さすがに数々のセーフティロックが施されており、使用感はかなり異なります。
・“カードを手札に加える”のではなく、“引く”形式になっていること。
・“捨てたカード“だけではなく、“全てのカード”を対象とした、墓地の完全封印。
・“手札の上限5枚”。
とくに、最後の制約が曲者で……ええ~、はっきり言ってしまいましょう。《ネクロドミナンス》をまともに使いこなせるデッキ(とくに、コンボ)は、とても少ないはずです! 値段も、きっと発売前の今より下がる。どんなデッキにも入る汎用カードではありません!
《ネクロドミナンス》で得られるもの。ターン終了時に、5枚。
行儀よく、手札上限の枚数に合わせるように引くより、ずっと多く引いた中から最適な5枚を残す……ドローエンジン+大規模ルーティングマシンとして扱うほうが強そうで、「ストーム」の亜種に入れてみたのですが……、
もし、攻撃に5枚の手札を全て回せるなら。
それはたぶん、勝てます。しかし、相手の手番には完全に無防備。対戦相手のタイプによっては即死があり得るのが「レガシー」です。ただでさえライフをしこたま消費するカードなのに。
もし、防御に《意志の力》を構えるなら。
《意志の力》+コスト1枚を守りの札とし、攻撃に使えるのは3枚。……今度は、かなり心もとない数字です。防御札に《夏の帳》などの手札を消耗しないタイプのカードを使うなら、少しはマシそうですが。
僕が試した限りでは「ストーム」系など手札にパーツを揃えるタイプのデッキに《ネクロドミナンス》は不適格。“手札上限5枚”の制約では、攻守の両立が極めて難しいです。“墓地封印”の制約から、“墓地コンボ”系でも使いづらい。
そのために《ネクロドミナンス》は使用に耐えないかといえば……それも、否。
それなら、あらかじめ戦場にコンボパーツを揃えるタイプのデッキで用い、《ネクロドミナンス》でかき集めるカードは5枚全てを防御札だけに統一すればいい。
また、ターン終了時にドローする関係上、次ターンに使用できるまでタイムラグがある手札破壊よりは、対戦相手の手番でも身を守れる打ち消し呪文のほうが望ましく……とくに0マナで撃てて、手札コストの消費を《ネクロドミナンス》で容易に補える《意志の力》とは、最高の相性です。
つまり、土地コンボであり、墓地に全く依存しない「デプス」……それも《ネクロドミナンス》の「黒」と《意志の力》の「青」との要素をあわせもつ「青黒デプス」でなら、かなり高いレベルで真価を発揮できるはず。デッキリストは、こう!
《暗黒の儀式》採用型、純コンボタイプの「青黒デプス」。銘はシンプルに「ネクロ・デプス」。
メインボードに《ネクロドミナンス》3枚を採用。サイドボードの《濁浪の執政》3枚はそれとの対で、《オークの弓使い》のせいで《ネクロドミナンス》の使用が危険すぎる、黒いデッキ相手への入れ替え用。従来型のようにクロックパーミッション気味に振る舞うこともできます。
基本的に、《ネクロドミナンス》は「ヘックスメイジ・デプス」や「ステージ・デプス」コンボで疲弊したあとのリカバリー用。
またパーツを揃えて“次のターンで斬る”と決めた際、ライフを安全圏ぎりぎりまで燃やし、大量の打ち消し呪文を手札へと一気に集約させるために使います。
理想の5枚は、《意志の力》2セット+α。勝負どころで瞬間的に手札の量と質を極限化する術は《一つの指輪》でも敵わない差別点。
また、《マリット・レイジ》と並び立つフィニッシャー《黙示録、シェオルドレッド》がいれば、ターン終了時、即死しないぎりぎりまで……具体的には10枚くらいを引き、完璧な5枚を作ることができます。
支払ったライフは、すぐ2倍になって、20点くらいキャッシュバックされるから大丈夫。
注意点は、このデッキにおける《ネクロドミナンス》採用は、《剣を鍬に》や《カラカス》など《マリット・レイジ》が苦手とする除去カードを満載した、コントロール気味の白いデッキを仮想敵としていることです。「土地単」などの苦手デッキや、コンボ同士の決戦時にも。
反対に、積極的にライフを狙ってくるアグロなデッキ……とくに「黒」が見えたら、無理には設置しないこと。こいつ↓に蜂の巣にされる未来しか見えません。
それならば、そういう相手にはどう対処するのか? 最速「ヘックスメイジ・デプス」で真っ二つにしてやればエエんじゃぁ!!!
まだまだ試運転ですが、なかなか楽しいデッキです。青黒「ネクロ・デプス」。今までの型より純粋なデッキパワーが高く、生死のぎりぎりの間合いを計る感覚が、まさに「黒」で。
ところで、『モダンホライゾン3』で「デプス」界隈を大きく騒がせた1枚を今回のリストでは、あえて採用していません。最後にそのカードを紹介してから、今回は筆をおきましょうか。
・《変異した信者》
なに、このオリカ!!?(何回目)
《暗黒の深部》の氷カウンターを、“唱えたとき”の誘発型能力で取り除けば、お手軽に《マリット・レイジ》登場。ついでのように「10マナ」を軽減して、何でも出来るよ? と書いてあります。くーん……(悪夢)。
たとえば、1ターン目《暗黒の深部》+《水蓮の花びら》+《暗黒の儀式》+《変異した信者》=《マリット・レイジ》+……まぁ、これがデザインされたゴールでしょう、《穢すもの、ウラモグ》。
圧倒的破滅的、オーバーキル……!!!
《変異した信者》は唱えたときに能力が誘発するので、通常の打ち消し呪文が当たらず、本人が戦場に残るので、布告よけにもなると至れり尽くせり。
「デプス」は特殊土地が大盛りで、色マナを用意するのに苦労するデッキなので、《吸血鬼の呪詛術士》と比べても黒マナが1つで済むのも助かります。
もちろん《ネクロドミナンス》と同時に《変異した信者》も試してみたのですが……。
う~む。現状では《吸血鬼の呪詛術士》や《演劇の舞台》の上位互換というほどではないですね……少なくとも《ネクロドミナンス》搭載の「ネクロ・デプス」では使いにくさのほうが目立つ。
《変異した信者》の長所である“唱えたとき”の誘発型能力は、裏を返せば、ソーサリータイミングでの使用が固定されてしまいます。《呪詛術士》や《演劇の舞台》のように、インスタントタイミングでの起動を巡る駆け引きが使えず、やや真っ直ぐすぎる。
こと新式の「ネクロ・デプス」では、あらかじめ戦場に置いておくことが出来ず、手札1枚の貴重な枠を固定されてしまう点で《ネクロドミナンス》との噛み合わせが悪かったですね……。
あと、超、上振れ狙いの《ウラモグ》とか、《暗黒の深部》+《変異した信者》が揃ってないときは、常に特大ノイズとして円滑なプレイングの邪魔をしてくるんですが、それは……。
《変異した信者》の動向に関しては、今後も注視するつもり。打ち消し呪文がとても多い環境だと、このカードと《演劇の舞台》とで、対戦相手の干渉をほぼ無視して勝つような「デプス」も作れるかもしれません。
まあ、きっと、僕とは違うタイプのデッキビルダーが、世界のどこかで思いもよらない使い方を編み出してくれるでしょう。
『モダンホライゾン3』には、他にも《アヴァシンの創造》など面白いカードが多く、まだまだ語り尽くせないのですが、そろそろ紙面のほうが尽きました。
続きは……6月14日の発売後かな? ぼくは率直に、未知との出会いが楽しみです。不安もふくめて、楽しむことにしましょう。それでは、また。
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