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「認知症」と「高齢者の発達障害」


こんにちは、精神科医のはぐりんです。
ご訪問ありがとうございます。

今回は「認知症」「高齢者の発達障害」
一見するとあまり関連がなさそうな2つに関して
書いていこうと思います。

やや暴論になるかもしれませんが、ご容赦いただければと思います。


認知症が原因で入院になる方


認知症が原因で入院になる方がいます。

認知症の入院者数に関して、統計的には意外にもH26→H29年は7.7万人と横ばいですが、

高齢化社会の影響もあり、体感的には増えている印象があります。

物忘れ(中核症状)により日常生活が送れなくなり入院になる方(火の消し忘れ、買い物ができない等)、

怒りっぽさや、不安・うつ、徘徊などの精神症状や問題行動(周辺症状:BPSD)が原因で入院になる方も多いです。

病院の役割としては、こういった症状を少しでも
和らげ、施設や老人ホームへの仲介役としての機能があります。

ただ一方で、中には行き先が見つからず、病院でそのまま生涯を終える方もいます。


そもそも認知症とは?

ここでそもそも

「認知症とは?」

学生や研修医にもよく聞く質問なのですが、ズバリ

「正常に達した知的機能が後天的な器質性障害によって持続性に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたした状態」(認知症テキストブックより)

ポイントは2つ、

1つは一度は正常に達した知的機能が脳の萎縮などで徐々に低下していること、

もう1つは日常生活に支障を来している、
この2つが揃った状態を認知症と呼んでいます。


物忘れがほとんどない認知症!?

先日、80代の認知症の男性が入院されました。

2年前から家がごみ屋敷状態、そのため老人ホームに移るも今度は他の入所者とケンカばかり、

「こんなとこにはおれん!」と怒りだし、半ば老人ホームを追い出される形で入院になりました。

この方は数年前から「認知症」の診断がついていたのですが、入院後改めて長谷川式認知症スケールという有名な検査を行ったところ、

30点満点で25点も取れたのです。

これは年相応の物忘れと言ってもいい点数で、実際に本人と話してみても日常会話は問題なく、

むしろ健康オタクで色々な知識を持ち、細かいことまで気にするような性格でした。

元々几帳面できれい好き(ベンチに座る際には敷物を敷いたり)だった方が、

家がごみ屋敷になり生活ができなくなる、というのは先ほどの定義に照らしても認知症と言えますが、

診断がついてから数年を経て、あまり物忘れが進んでいないのは珍しいと言えます。 


発達障害も併存していた!?

ここからは推論になるのですが、この方は発達障害も併存していたと思われます。

発達障害の方が認知症になると、物忘れよりも先に発達障害の様々な特性が前面に出てきて問題化するように思うのです。

思い通りにいかなかった際の「怒りっぽさ」は発達障害の子供のかんしゃくを思わせるし、

こだわりや神経質な性格は「先鋭化」され、周囲になじめずに衝突します。


「死んでも老人ホームには入りたくない」

集団生活が苦手で、環境変化にも弱く、周囲に馴染めない、この方に限らずそういった高齢者を数多く見てきました。

多くの方は、若いころを過ごした昭和時代には、大工や出稼ぎ、農業や資材売り、個人で書店を営業されていたような方でした。

若いころには問題なく社会に適応していたような方たちが、現代では老人ホームに馴染めない

「デイサービスなんて子供がやることだよ」、と言う高齢者もいます。

これまでの、通り一遍の老人ホームだけではなく、何か違った形の居場所が必要に感じます。

良い代替案は即座には浮かびませんが、

今回ご紹介したような、単なる物忘れだけではなく発達特性のある高齢者がいる、

というのは一つのヒントになるように思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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