見出し画像

万引きを繰り返してしまう女子中学生

こんにちは、精神科医のはぐりんです。精神科医のリアルな日常とホンネをお届けしています。
※3分で読めます。

「万引きを繰り返してしまう」、という女子中学生。小学校低学年のころから窃盗癖が止まらず、これまでにスクールカウンセラーや医療機関が介入しても中々行動が改善しません。

万引き自体は当然犯罪ですが、中には病的窃盗(クレプトマニア)と言って精神科的な治療が必要となる方たちがいます。今回ご紹介する女子中学生もまさにこれでした。

鑑別のポイントとしては、盗んだ物や金銭自体が目的ではなく、窃盗行為自体のスリルだったり満足感が目的で万引きを繰り返してしまう点です。

また摂食障害(拒食症、過食症)との合併もよく知られていて、病的窃盗は男性よりも女性に多いのも特徴です。

今回ご紹介する女子中学生、繰り返す万引きの背景には母親との関係性の問題がありました。

幼いころに両親が離婚し、母子家庭で育った彼女。しかし母親はその時々に付き合っている彼氏に夢中で、娘である彼女に向き合ってこなかったのです(現在も同様で、虐待事例にも挙がっています)。

無理やり抑え込んでいた、やり場のない母親への思いが、彼女を窃盗という衝動行為に至らしめていたのです。

外来にやってきてもほとんどそっぽを向き、一言二言話すのみの彼女。彼女のもう一つの問題点として、自分の気持ちがよくわからず、それをうまく言葉にできない、ストレスへの適切な対処法が分からない、という点でした。

自身の感情に気づかずうまく表現できないような状態を、アレキシサイミア(失感情症)と言います。ASDの方にも多いとされるアレキシサイミア、決して感情がないわけではなく、感情に「気づくことができない」のです。

万引きや拒食、自傷行為などの表面的な問題行動の裏にはどういったことが隠れているのか、特に(言語化できない)子供の場合には注意深く観察していく必要性があります。

今回ご紹介した中学生、今は万引き行為自体を治療対象として扱うべきではない、と思っています。かといって受診の付き添いすらしない母親への働きかけも中々できず、今すぐに事態が改善する兆しもありません。

とりあえず今はこの子が孤立しないよう、細く長く寄り添っていくことが大事なことなのかなと思っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?