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ASDの方の責任能力について

こんにちは、精神科医のはぐりんです。
※この投稿は2分で読めます。少しお時間いただき最後までお読みいただけたら嬉しいです。

以前、入院中のASD/ADHD併存の方(Aさん)が、無抵抗の他患(Bさん)を何発も殴ってしまうということがありました。

Aさんは、日頃から病棟内でBさんからちょっかいを出されており、ある日溜まりに溜まった怒りがついに爆発し、無抵抗のBさんを何発も殴ってしまったのです。

私がこの報告を受けた時の第一感は、Aさんは入院中ではありますが傷害事件としての刑事告発も含めて警察に通報する、というものでした。つまり主治医として普段から診ている中で刑事責任能力がある、と直感的に思ったのです。

しかしよくよく本人に話しを聞いてみると、必ずしもそうとは限らない様相が浮かんできました。うっ憤は溜まっていたものの計画性はなく、通りがかりにふとBさんを見かけ殴りかかったこと、また無抵抗のBさんを一方的に殴り続けるという誰が見てもAさんに非がある状況にも関わらず自分が悪いとはほとんど思っていないこと、

その理由として妄想的なおかしな理由ではなく、本人なりの理屈を主張し悪くないと言い続けるのです(取り繕うことも謝ることもなく、当然許しを乞うこともなく)。

こうなってくるともはや「是非弁別の能力に欠ける」つまり何が正しくて何が悪いのか判断できない状態と言えます。ASDの想像力のなさや融通の効かなさ、入院生活へのストレスと刺激への過敏性が相まって起きてしまったことと言えると思います。

またこの方の場合、過去に急に自分でもわからないうちに物を壊してしまうということを頻繁に繰り返すという、ADHDの方にも併存する間欠爆発症という診断も疑っていました。Wikipediaによると間欠爆発症は「状況ストレスに対する衝動的で計画外の反応」とあります。

おわりに。今回のタイトル「ASDの方に責任能力はあるのか?」に答えるなら「case by case」判断に迷う難しいケースが多く、今回ご紹介したケースのように専門医が詳しく吟味して判断することになると思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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