統合失調症の現状とクロザピンのススメ
今回は統合失調症について書こうと思う。
昨今のtopicでもある発達障害と比べるとあまり話題にはならない。統合失調症の有病率は1%弱、個人的には意外に多いとは思うが発達障害のそれと比べると少なく(ASD約3%、ADHD約5%)、その分世間からの関心も薄い。
ただ、今も昔も入院患者の多くを占めるのは統合失調症で、やはり無視はできない病気だ。今回は統合失調症の最終兵器とも言うべき薬を紹介したいと思う。
統合失調症と言うとどういったイメージをお持ちだろうか?幻覚妄想状態で暴れている方、妄想から意味不明なことを言っている方、無気力でボーっとしていて家にこもっている方、どれも統合失調症に当てはまる。
そのうち2-30%は従来の薬では良くならず、治療抵抗性統合失調症と呼ばれている。それでも昔と比べると良くなる方がだいぶ増えた印象があり、その理由としては薬が進歩しているからだ。その結果、入院患者さんも年々減ってきているというわけだ。
さらには治療抵抗性統合失調症の方にも一定の効果があると言われている、統合失調症の治療薬の最終兵器とも言うべき「クロザピン」という薬がある。これまであらゆる薬が効かなかった統合失調症の患者さんの、およそ60%に効果があると言われている薬だ。
これ程優秀な薬にも関わらず、現在まであまり流通していないのには理由がある。それは無顆粒球症(好中球減少症)という副作用があるからだ。
そのため、薬を飲むにあたり様々な決まり(処方の資格、最初の18週間は入院、定期的な採血など)があり、それがクロザピンの普及を妨げている。
ここからは私見になるが、治療抵抗性統合失調症の患者さんには、ぜひクロザピンをオススメしたい。これまでに何十人ものクロザピン服用患者さんを診てきたが、
実感として症状が改善している患者さんがかなりいるからだ。特に怒りっぽかったり、不安・焦燥がある方には効果的だ。
また意外に知られていないのが、無顆粒球症を除けば従来の薬よりもその他の副作用は少ない。
例えば従来の薬ではジストニアと言って首回りの筋肉が固くなり常に肩をすくめていたような方が、クロザピンに薬を変えた途端、肩がスッと元に戻り、なおかつ精神症状も安定した。
無顆粒球症に関しても私自身は経験したことはなく、血液検査でしっかりと経過を追っているので、そこまで怖がる必要はない。
クロザピンには処方にあたって色々な制約はあるが、長い目で見ると患者さん自身の症状や生活まで改善しうる薬と言える。数十年入院していた患者さんがクロザピンによって退院して生活できるようになるケースもある。
ご本人やご家族が統合失調症で、中々症状が改善せずに悩まれている方、ぜひ一度かかりつけの先生にクロザピンについて相談してみていただきたい。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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