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 お菓子は、老若男女、心が落ち着いていない時でも幸せな気分にしてくれる魔法をもっている。しかし、私は、小学校高学年までほとんどお菓子を与えられたことがなかった。家庭の教育方針であるが、ほとんど食べたことがないお菓子を食べることのできる場所があった。それは祖母の部屋だった。
 高齢の祖母は心臓が悪かったので、玄関わきの部屋にいた。風邪などをうつすといけないから、出入りはなるべく避けるように言われていたが、私が部屋に行くと、祖母は満面の笑みで迎えてくれた。
「よく来てくれたのう。」祖母は嬉しそうにそう言って、部屋のどこからか、おはぎや羽二重餅やあんころ餅などの和菓子を出してきて、一緒に食べた。祖母は目も悪く、ほとんど目を開けていなかったが、目尻の深いしわが、笑うと一層柔らかくなって、温かい笑顔に癒やされたし、和菓子のうまさも身にしみた。私の頭をなでながらいろいろ話をしてくれる祖母と一緒に和菓子を食べるのが本当に楽しみだった。私の和菓子の思い出は大好きな祖母と共にある。最近の和菓子は、見た目もきれいなので、こんな進化したおいしい和菓子を和菓子好きの祖母に食べさせたかったと、想いを募らせている。

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