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~豊かなシビックプライドを醸成するために何ができるか~

こんにちは、ミライ研の阿部です。ミライ研では地域価値創造に向けた調査・研究を行っておりますが、研究員として日々の活動を通じて感じたことを本noteで綴っております。今回は第二弾です。
 
地域の新たな価値創造、というお題目で日々取り組んでいる中で、頻出ワードとしてよく出てくるのが「シビックプライド」という言葉です。自治体政策においてシビックプライドへの注目が高まっているとか、シビックプライドの醸成に力をいれる自治体が増えてきているとか。 

シビックプライド、ネットで検索してみると「都市に対する市民の誇りを示す言葉。19世紀のイギリスから興った概念とされ、日本語の「郷土愛」とは異なるとされる」と出てきます。

英語の civic は「市民(として)の、市/都市の」という意味ですが、そこには権利と義務を持って活動するという意味が含まれており、自分自身が地域の構成員であるという当事者意識をもって、主体的にその町をよりよくしていこうという「意思」が包含された言葉のようです。なので、単なるお国自慢ではなく、自らが一構成員としてなんらかの活動し、それに裏付けされた誇り(プライド)ということになります。ちょっと深い言葉ですね。

自らを振り返ってみて、果たして自分にシビックプライドなるものはあるのか? シビックプライドどころか郷土愛すら希薄だったりする自分が、シビックプライドを高めるための政策を考えたりしているのが非常におこがましいのですが、最近思うところを記載しておきます。

アラフィフ世代の私は、いわゆるマスメディアが絶大な影響力を誇っていた昭和の時代に義務教育を受け、社会のグローバル化の流れに乗り、社会人になってからは日本と海外をつなぐ業務に従事しておりました。仕事で海外に行く機会にも恵まれ、個々人がパーソナルな単位で国境を越えて繋がって、相互理解を深めていけば自然と世界は平和になるのではないか?と楽観的なことを割と真剣に考えておりました。 

足元の文化とか伝統を足枷と捉え、地域コミュニティからは距離を置き、メインストリームメディアで礼賛される都市型で国際的な生活を羨望してきた結果、シビック(市民)としての義務なんて税金ちゃんと払ってたまに選挙に行けばいいんだよね、程度の認識しか持ち合わせていない。しかも、源泉徴収されているので納税している意識も低く、何に使われようが知っちゃこっちゃない。私自身がつい最近までそうだったので、そんな感覚の同世代の方々も意外と多いのではないかと感じていたりもします。

そんな市民意識が低い(かもしれない)我々世代は、ロストジェネレーション(ロスジェネ)世代ともいわれています。これまで地域のコミュニティの中で、世代(ジェネレーション)を超えて継承されてきた文化・伝統が、ロスジェネ世代を経て途絶えてしまい、完全に人類の歴史からロストされてしまう、そんな危機感が日々募っています。

地域循環型ミライ研究所の研究テーマの一つに「地域の文化・伝統をICT技術で再興すること」があります。文化を継承していくには、世代を超えた縦の繋がりを再構築しなければなりません。

これまでのように、地域の限られたコミュニティの中の、ある意味密でウェットな人間関係の中で、口伝で紡いできた文化を、同じやり方で繋ぎ直すことはおそらく出来ないでしょう。しかし、現代のテクノロジーを駆使すれば、新しい形で異世代間の分断を繋ぎ直し、輝かせることができるのではないか。

ミライ研の活動に参画以降、地域で埋もれていた8mmフィルムを掘り起こし、現代の子供達と一緒に新たな地域映画を作成されている方や、住民参加型のデジタルアルバムを立ち上げ、高齢者から小学生まで、幅広い世代間での交流機会を創出している方に出会いました。

どちらの活動においても、次の世代に伝えたい何かを持った方(特にご高齢の方)が存在し、その思いを伝える場ができたこと、デジタル技術によってその場がよりオープンな形で創出されていること、がとても尊いと感じました。

私自身は多世帯家族に生まれ、幼少期には曾祖母も同居していたということもあり、先人達が繋いできた思いは、おぼろげではあるものの家庭の中で感じながら育ってきました。しかし核家族が当たり前になった現代で、家庭の中で子ども達が先人達の思いを継承する機会など殆どないのではないか?

シビックプライドはその土地に住む住民の誇りを示す言葉ですが、世代を超えて紡いでこそ、よりその誇りが深みを持つのではないでしょうか。

次世代を担う現在の子ども達が、デジタル技術を介して、先人達からの想いを受け取る機会を増やすこと。世代間の接点を増やす活動を、デジタル技術によって創出していくことこそが、健全なシビックプライドの醸成に欠かせない営みになるのではないか。最近の活動を通じてそんな想いが日に日に強くなってきています。 

既に、前述の地域映画の活動等、地域に埋もれている資料や映像等を収集しデジタルアーカイブ化することで、地域の文化・伝統の保存・継承に繋げる活動が各地で生まれています。ミライ研ではそのような活動に光を当て、今後、広く発信を行っていきたいと考えています。 

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