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諦めても試合終了しなかったこと【高度不妊治療♯1】

「諦めたらそこで試合終了ですよ…?」。誰もが知る某名作マンガの某名監督の台詞である。私もそう思います安西先生。何事でも諦めない、継続する努力が重視されがちな日本社会において、この台詞はまぁまぁ説得力があるし、実際に大体のことはそうだ。
でも。不妊治療は違う。
年齢、持って産まれた卵子の数に代表される妊孕性、パートナーの有無・協力、金銭面…そこには圧倒的にどうにもならないことが数多くある。全ての条件を満たして、スタート地点に立てたとして、食事や生活で並々ならぬ努力をしても、報われないことがたくさんある。皆、本当にエライ。尊敬してる。もはやスキかも。
不妊治療は期待しては挫かれることの連続だ。身体的負担はさることながら、治療の一貫で意図的にホルモンもぶん回されるので、そのメンタルや爆裂お父さんのジャイアントスイング(フロムめちゃイケ)の様相を呈するのである。だいじないのちを授かるのだから、辻元清美ばりに「負けへんで!」精神で挑むものの、各方面からやられまくってメンタルも財布もすぐにガリガリになる。
治療がある程度進むと、期待するのをやめる。意図的に諦めようとする。傷付くのが怖いから。履歴書に特技、諦めること、と記載できるようになる。この思想がまたメンタルを蝕む。

今回、私は5月の中旬に5日目胚盤胞を移植した。移植した人なら必ず通るコース(マックのポテトを食べる、パイナップル食べる、「妊娠超初期症状」鬼検索、身体の異変と思しき症状を記録しまくり等)を経て、移植後7日目に期待値MAXでフライング検査を実施した。
…眩しいほどの白。あーはいはいはい。これね。このパターンね。よし、次行こっ。とりあえず、判定日は帰りに海鮮丼食べよ。あ、JALのセールするから、来月飛行機乗って一人旅予約しよ。と、リニアの速さで諦めると同時にChatGPT並に前向きワードを生成し、実行に移す準備をした。休職中の私には時間が無限にある。諦め関連のお楽しみは東京卍會よろしくヤリタイ放題なのだ。とりあえずヒヨってはいられないので、美容室を予約して、髪をブリーチすることにした。薬も確信犯的に飲み忘れた。判定日の前日は、ここ最近運動不足を感じてたのでランニングした。同日夜は、最近仕事が忙しくて治療に積極的にコミットしてこない夫に対して腹が立ってきて、寝しなにブチギレのちソファでふて寝した。

そして、迎えた判定日。クリニックが混んでいて、予約時間から1時間経っても呼ばれない。陰性を告げられるだけだから、お菓子とか食べながらの片手間でいいからはよ呼んでほしい、お腹すいた。とやさぐれていたら、呼ばれた。
怖い女医「陽性判定出てます。」
私「…えっ。」
絶句とはこのことを言う。動揺した私は、言葉が見付からず、
私「このあと海鮮丼食べようと思ってるんですけど…。」
怖い女医「それはやめてください。」

まだまだこれから乗り越えないといけないことが山ほどあるけれど、拝啓安西先生、諦めても終了にならない試合もあるっぽいです。
リバウンドを制するものは試合を制する!


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