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リア充―充実とはなにか

1.はじめに
「 リア充」という言葉を使ったことがある者は少なくないだろう。リア充とはなんだろう。
現実世界(=リアル)が充実している人たち」の略語とされている。近年”リア充”は、思春期や青年期の人々を中心に、インターネットなどの様々な場で使われ(戸高 2011)、
それには現実世界が充実している人たちに対する嫉妬や羨望(桂 2010「田中中 2010)を
はじめ、”リア充”ではない自身への失望(中中 2010)や疎外感(戸高 2011)など負の
感情が込められていると指摘されている(黒中・望月 2012:1)。
そもそもリア充とは 2005 年に 2 ちゃんねるで発信された「リアル充実組」の略である。
対義語の「非リア」「オタ充」と呼ばれるネットの世界に入り浸っている人たちやオタク活動に没頭している人たちが自虐的な意味で現実の世界が充実している人たちを指すときに使われた。発信された当初は リアル充実組こと略さずに使うのが一般的だったが、次第に「リア充」と略すことが多くなり、わずか 1 年後、2006 年には「リア充」と略して使うことのほうが主流になった。(webilio 辞書 「リア充」参照)
2.リア充とオタク
Google トレンドでの検索数の推移を見ると「リア充」の検索数のピークは 2010〜2015年の5年間である。しかし細かく見ると 2010年の爆発的な検索数の記録を境に 2015 年までの間も徐々に検索数は減っている。2016 年からは検索数の減少が著しくなり、今現在の2024 年ではピーク時の 2010 年と比べると検索数は 10%にも満たなくなっている。ではな
ぜ「リア充」という表現が使われることが減ったのだろう。ここで注目したいのがリア充の対義語の部類である「オタク」と言う単語の検索数の推移である。なんと 2010 年にピークを迎えた「リア充」とは対象的に、2010 年から現在にかけて「オタク」の検索数は右肩上がりなのである。この事実から、オタク活動など非リアに属すると考えられていた過ごし方に没頭するのも充実した過ごし方なのではないのかという価値観の多様化が進んだことにより、自虐的に「リア充」という言葉を使う人が減ったのではないだろうか。
3.意味の偏り
また、インターネット利用者の母数が増えるにつれ「リア充」という言葉は「恋人や友達付き合いに恵まれている」「サークルや飲み会に多く参加している」「恋愛面でうまく事が進んでいる、恋人がいる」などカテゴリーの限定された、偏った意味でも利用されるようになった。「 リア充」という表現自体減ってきて入るが、現在残っている意味としては特に恋愛面での意味を指すことが多い。2005 年当時の意味としては、今で言う「 陽キャ」の意味に近かったのがどうしてこうも偏った意味に変化したのだろうか。ここで先程の価値観の多様化が絡んでくるのだが、趣味の面では過ごし方やその捉え方に多様化が生じやすいが、恋愛面では恋人がいるかいないかという決定的な境目、判断基準が存在するため、リア充か非リアかの区別が恋愛面だけ曖昧にならなかった結果、リア充そのものの定義が恋愛面に偏ったのではないか、と考えられる。
4.結論
「リア充」という言葉が指す 「充実」の定義が時代とともに変わり始めているため、「 リ
ア充」という表現自体が使われなくなったり、指す意味が変わってきたりしているのだろう。
ついこの前までは「 非リア」と呼ばれた人々が自虐的な表現をすることが減ってきていることから、自分を「充実していない者」と捉えるのではなく自分なりに充実させられていると捉え、周りの目を気にして自己肯定感が下がってしまうことがないようになることを願う。
参考文献
・黒中卓哉・望月聡 2012「 ”リア充”の使用実態とそこに込められた感情」「日本心心学会会発表論文集』76
・webilio 辞書 「リア充」 https://www.webilio.jp>content

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