漆黒 〜色彩の詩(うた)〜
「貴女には、漆黒の衣裳が似合う」と、
囁いた、魔王様。
実は、
私も、
そう思っておりました。
♠︎
私は、何度か夫に先立たれました…。
その度に、
漆黒の衣裳を身に付けました。
そして、
そこで出会った夫の友人と、
その度に、
恋に落ちたのです。
そして、
彼らを次々に失って、
その度に、
漆黒の衣裳を身に付けました。
私ほど、
漆黒の衣裳が似合う女はほかにはいないでしょう。
いかがでしょう?
私を召されませんか?
きっと、
貴方に見合う、妻になれますわ。
ご遠慮は要りません。
私には、今、夫はおりません。
漆黒の花嫁衣裳を、
見繕っていただけませんか?
きっと、
私は、漆黒の愛を、貴方だけに注ぐでしょう。
きっと、
貴方は、漆黒の愛に、満たされるでしょう。
私は、
漆黒の衣裳がほかの誰よりも、
似合う女。
ええ。
きっと、
私も、漆黒の愛に、満たされるでしょう。
きっと、
貴方は、漆黒の愛を、私だけに注ぐでしょう。
魔王様。
何人の勇者と戯れて、血反吐を吐かせましたか?
ああ…さぞや、退屈だったことでしょう。
彼らの軟弱さに、いい加減お疲れになっていませんか?
私に、お任せください。
私という、漆黒のヴェールを纏った花嫁は、
きっと、
貴方を虜にし、貴方を跪かせてみせますわ。
そう、死よりも永遠に…。
……楽しみでしょう?
さあ、もう一度、囁いてください。
魔王様。
「貴女には、漆黒の衣裳が似合う」と。
漆黒の花嫁衣裳を、
見繕っていただけませんか?
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