黄色いバラ（またはバグ）　世界の果てにある孤島

真珠のような満月が、歪に嗤う午前2時
ナマコの群れのような夜の雲が、ウヨウヨと
夏の枯れたシクラメンの葉を揺らす風に流され、
その世界の果てにある孤島バグにたどり着く。

バグは、この孤島に集められ、
黄色いバラに変えられる。
ナマコの群れのような夜の雲は、ソヨソヨと
夏の破れかけたうちわが起こす風に揺すられ、
地に堕ち、
真珠のような満月が、歪に嗤う午前2時
黄色いバラの下僕となる。

バグは、この孤島に集められ、
黄色いバラに変えられる。
黄色いバラに埋め尽くされていく。
巨大な絶海の孤島バグになる。
この島に人はいない。
バグがあり、黄色いバラになるだけ。
美しくも混沌とした魅惑の芳香を漂わせ、
世界をバグで覆うだけ。

美しい詩はここにはない。
ここにはバグがあり、バラになるプロセスがあるだけ。
バラはやがて散り、
土に還るだけ。
新しいバラは咲かない。
新しいバラの芽など出ない。
なぜなら、ここには美しい詩はなく、
バグがバラになるという死があるだけ。

筋の通った理はここにはない。
ここにはバグがあり、バラになるプロセスがあるだけ。
バラはやがて散り、
土に還るだけ。
新しいバラは咲かない。
新しいバラの芽など出ない。
なぜなら、ここには筋の通った理はなく、
バグがバラになるよというお断りがあるだけ。

この孤島に、
たどり着いたなら、
あなたもまたバグだ。
どこからか来たバグだ。
バグはバラになる。
あなたもまたバラになる。

黄色いバラになる。

そして、

ナマコの群れのような夜の雲を、
やがて下僕とするだろう。


真珠のような満月が、歪に嗤う午前2時

※バグ=bug（虫）、またはコンピュータのプログラム上の誤りや欠陥。