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夢めちゃめちゃあるよー!

「くすぶっているみんな、夢めちゃめちゃあるよー!」
THE SECONDの優勝者の笑顔と、このコメントに涙が出てしまった。本当に面白かった。今回はその思いについて書き記しておきたい。

そもそも私は、全てのお笑い賞レースを観なくなっていた。M-1ですら、次の日にヤフーニュースで結果を知った後で、時間がある時に話題になった芸人のネタを後でちょっと見るだけ。昔のように、1週間も前から楽しみにして、お風呂にきっちり入って、ビールとツマミを用意して準備万端で観るようなワクワク感は、もうそこには無い。

疲れるのだ。芸人のネタよりも、事前の芸人のドキュメント、審査員の人選、司会や冠スポンサーの存在感が強すぎる。漫才大会というよりは、芸人の人生を変える一大ドキュメンタリー要素が強すぎて、見る前からお腹いっぱいだ。正直なところ、他の賞レースも似たようなところがあり、ネタよりも、それをどう評価するのかという、審査員側のストーリーが主張されすぎて、観る側も気軽に見れなくなってしまっている。

ところが、このTHE SECONDは、その全てを覆している。審査員は、一般の方である。MCも東野とアンバサダーの松っちゃん以外は、フジテレビのアナウンサーだ。舞台裏のレポーターも芸人ではない。なるほど、考えてみればそうだ。THE SECONDに出てくる芸人は、いわば日陰の芸人であり、そこに今が旬の芸能人がいたら、彼らにスポットライトが当たらないのだ。そして今までのプロの審査員では日の目が当たらなかった彼らに、またプロの審査員から専門的なアドバイスがあっても、辛いだけだ。一般の人にウケたかウケなかったか、それだけで良いのである。

とはいえ、この「一般の人」というのは難しい。まず遠隔ではダメだ。視聴者投票は、ネットでつながってグループを作って投票され兼ねない。その現場にいる人じゃなくてはダメだ。観客も完全に不特定多数であると、そこに緊張感が無かったり、観る人に説得力がなくなってしまう。顔は出さないけれども、その存在を知らしめるような絶妙な存在感を演出する必要がある。今回は、座席ごとの点数は公表されており、そこに一定の責任が生まれるような加減ができていたことに、感動してしまった。

しかも相対評価ではなく、絶対評価である。できればネタ1本ごとに評価するのが良いのだろうが、それだと毎回のネタ終わりに評価する空白の時間ができてしまい、スタジオの空気が冷めてしまうのだろう。一本のネタが終わったら、すぐに対戦相手に移るところが、今回の対戦を盛り上げたと思う。ただ一方で、その熱が保たれることによって、後攻の方が有利に見えてしまったのは、課題かもしれない。1本目のネタが終わった時点で、ボタンは押さないまでも、その時の自分の評価をメモしたり、仮で押せるような仕組みがあると、先攻のネタの温度を観客が覚えておけるのではないか。

そして、このトーナメントというのが良い。熱が移っていく現象は、M-1では顕著であり、どうしても順番が最後のコンビが有利になりやすい。ところがトーナメントであれば、この熱がいったんリセットされ、2組の対決に集中しやすい。まあ、さらに言うなら私の世代は、フジテレビと言えばものまねトーナメントだったりもするので、トーナメント形式には懐かしさもあるし、フジのお家芸の復活という側面もあったのだろう。

そして何より、今回のTHE SECONDに出場した芸人の、実力がすごかった。個人的には、漫才の巧さでいえば、金属バットが圧倒的に抜きんでていたと思う。力が抜けていながら、滑舌がよくて声も通りやすく、ネタが耳に届きやすくて驚いた。アレでトップバッターでなかったとしたら、一気に優勝まで駆け抜けたかもしれない。そして個人的には、スピードワゴンである。全体的には、らしさが残る設定も楽しめたし、最後の「熱々のハンバーグ」というワードも、いわばハンバーグ師匠として活動してきた糸田の人生がフリになっているわけで、彼らの人生に自然と想いを馳せるような気持ちになって、わけもなく泣き笑いのような感情になってしまった。

そしてマシンガンズである。もうただの与太話なのだから、すごい。ネタでは無くても、その時に生まれた思いを話すことで、会場に一体感が生まれ彼らのファンになってしまうような、そんな楽しさでも上に上がっていける事も、今大会の魅力の1つだろう。プロとしての減点ポイントは、松っちゃんが指摘していたが、正直なところ紙を読み上げても違和感はないばかりか、実際にあるヤフーニュースを読んでいるという説得力があって、それはそれでよかったと私は思った。あの二人が揃って言葉を合わせてジャンプするというのは、例えば「うれしー!」といって高くジャンプしたくだりがあったわけだが、あれはアドリブのように見えて、今まであのような喜びのネタで「うれしー!」で飛び上がってウケた流れがあったから、すぐに合わせることができたわけで、そういった一つ一つのアクションに、これまでの二人の想いがみることができて、勝手に感動してしまった。

三四郎やテンダラーなどは、際どいネタやワードも多かったわけで、私も見ながらドキッとしてしまうというか、大丈夫かなと一瞬思ったわけだが、最後に賞金を渡したのがスポンサー企業では無くてフジテレビの社長だったのをみて、コンプライアンスを気にしないで済むように、冠スポンサーをもたなかったのかと驚いてしまった。そういった企業色というものが、一切排除されていて、昔ながらのフジテレビのガチャガチャしたトーナメントの雰囲気と、IPPON選手権で培ったちょうどよい緊張感と、ワイドナショーでコンビを組んだ東野と松ちゃんのコンビが見事に機能していたと私は思う。特に東野の仕切りは完ぺきだった。東野は余計なコメントが少なく、あの女性アナウンサーも本当に上手で、安心してみることができた。

そして、最後の優勝コメントだ。「くすぶっているみんな、夢めちゃくちゃあるよー!」、あの時間で、こんな素晴らしいコメントが果たして言えるだろうか。THE SECONDという企画は、おそらく今だから面白いのだ。2,3年前では、成立しなかっただろう。この30~50代で悶々とした世代が多い中で、彼らがもう一度夢を見るという姿が、一般のサラリーマンにも伝わったのではないか。少なくとも私は、嬉しかった。「やったぞー!」とただ手を上げるのではない。「夢があるよー!」と言ってくれたのだ。この言葉で、また頑張ろうと思った40代は少なくないと私は思う。ギャロップのお二人、本当におめでとう!私もがんばりますね!







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