創作大賞応募:聞こえない

題名:聞こえない

 聞こえない
 
わたしはおとがきこえない
 
   いえのなかは
テレビ、せんたくき、でんしレンジ
インターホン、でんわのよびだし
いろいろなおとがあふれている
 
   そとにでると
くるまのうごくおと、とりのなきごえ、
いぬのなきごえ、こどものこえ、
しんごうきのかっこうのおと、あるくおと
いえのなかよりもっと、
たくさんのおとがあふれている
 
わたしはほちょうきをつかっている
ほちょうきをつかわないと、
おとがきこえない
 
でも、ほちょうきをつかってもきこえない
おとがきこえないのではなく、
おとはあるが、あたまのなかにとどかない
みぎからひだり、ひだりからみぎに
くものようにながれていく
 
わたしはおしゃべりがだいすき
おとうさん、おかあさん、きょうだい、
ともだち、せんせい、
みんなとおしゃべりがしたい
だけど、きこえないから
つたえたいことがつたわらない
 
「きょうは、いいてんきだね」
「きょうは、かにたべたい」
「なにをいっているの」
きこえないから、おしゃべりがつづかない
くちのうごきをみて、
なにをおしゃべりしているのかかんがえて、
おしゃべりする
 
せかいじゅうでかんせんしょうがおこって、
マスクでくちのうごきがみえない、
ビニールシートでスーパーやコンビニの
レジにいるていいんさんのこえがきこえないレジのおかいけいがゆがんでみえない
こんなにもみみがきこえないことが
たいへんになるとはおもわなかった
 
それでも、かみとペンやカード、
タブレットをつかって
おしゃべりができることが
うれしい、たのしい、つたわったと
かんじられるようなまいにちがあるから、
きょうもげんきにあるいていける。

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