三流知人

これまでの人生を振り返れば、人との繋がりの深さというものは、どれだけ多くの思い出を共有してきたかで区別できるのかもしれない。

例えば毎日顔を合わせていたとしても、多くの場合、飲み屋の顔なじみなんてものは些細な付き合いだろう。苦楽をともにした学生時代の部活の友人などは、一生モノの友になるーー。

先日、友人の結婚式にいった。この友人とは職場で出会った。同じような繋がりを持つ仕事仲間4人で参加した。

結婚式ではわれわれ4人が余興を任されていた。当日まで熱心に準備をし、会場にはかなりにギリギリについたと記憶している。

会場に着くとすでにほぼ満席だった。我々は1番前の席に案内された。後ろには大勢の人たちが連なるように座っている。恐らく学生時代の友人たちだろう。彼らより上座とはさすが余興係だ。仲間の一人など、後ろをチラチラみながら「高待遇だな」と頬を緩ませ鼻を高くしていた。

いよいよ式が始まる。まず初めに親族が係員に付き添われ入場した。だが直後、係員が怪訝な顔を我々に向けることになる。

「ご親族ですか?ご友人様は後列にお並びください」

わずか数分前まで、キャッキャウフフと上座に座っていた我々は「親族席」という言葉により、すごすごと退散せざるを得なかった。

「案内のお姉さんがここだといったのに」。気恥ずかしさを隠すために恨み言もボヤく。ふと見ると我々の後列にいた彼らがこちらを見て、ニンマリとした笑みを浮かべていた。

結局、我々が案内されたのは座席の最後尾だった。
元々用意されていた席は親族と学生時代の友人たちで埋まり、あぶれた我々の前には、申し訳程度に小さな椅子が置かれていた。わずか数メートル先には、1分前まで座っていた特等席が輝いているというのに。

この光景をみて、芸能人がそのセンスを競い合いあう正月特番を思い出した。その番組では、はじめに一流として紹介されるタレントたちが、様々な素養を試される。問題を間違うと一流タレントの表記が二流タレントになり、身につける衣装や座席が粗末なものに変わっていく。

「俺たち三流知人だな」

思わず呟いた言葉だったが、厳かな会場に予想外に響いてしまい、何人かが私に顔を向けた。かかなくてもよい恥までかいてしまうあたり、三流に違いはないなと納得したのであった。

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