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擦りまくった思い出

忘れられない人って何かしらいると思う。
過去に付き合った忘れられない子がいて、本当に魅力しかない子だった。音楽のセンス、絵のセンス、見た目も中身も好きな人だった。ちょっと自分は器用であると自覚してるような所も好きだった。
その子が好きだったバンドは今も好きでよく聞くし、その子との思い出がある街は今でも特別な場所に思えてしょうがなく、別段、いいものがあるわけではないけど、よく行ってしまう。

 いつまでも数年前の思い出に引きずられていると感じては情けなくなるけど、気持ちよく過去を思い出して懐かしむことができるから、まだ健全な方だと勝手に考えている。
もう思い出を擦りきれるくらい何回も繰り返したから、濾過されてしまって、きれいな思い出しか残っていないような感じもする。

去年久しぶりに会った。もうかなり垢抜けてしまっていて、俺の知っていたあの子は過去のものだと実感した。
結構へこんだ。
カフェで頭かかえてた。幻影を追いかけていたんだと気づかされる。
お茶もせず、ええ感じの世間話軽くしてすぐに帰ったのは少し後悔してる。未練たらたらに見られたくないというプライドが邪魔してコーヒーに誘えなかった。

なにかと元気にしているだろうかとか、
それこそ教えてもらった曲をなんとなしに聴きながら、ふと思い出したりする。
伏見稲荷の鳥居を何回も何回もくぐりまくったこととか。何してんだろうか。あのいっぱい鳥居あるシュールさは楽しかったなとか、ホラー映画を観に行ったことやら、初々しいやり取りの数々が時々顔を出してはあの頃は良かったとしみじみしている。

迷惑もかけたし、実際相手にとってイヤなことをしてしまった後悔もある。
年上の俺がもっと気を遣ってあげられなかったのが、いまでもごめんねと思う。
ただもう少しうまくやれてたらという念は消えることはないし、教訓としてずっと考えながら生きて行くんでしょう。

別れってのはゲー吐きそうなほど辛かったけど、まあ心も一段と頑丈になったのでいいでしょう。痛みからしか学べないこともあると今も感じる。

別れて数ヶ月後、思い出に浸る余裕もなく令和になってしまった。
容赦がなく日常は止まってくれやしない。もう少しあの幸せだった時間の中に生きていたかった。
思い出を眺めては今を生きなければと思い、また思い出に戻る。後ろ向きのまま前に進んで行くんだと思う。

君を越える人が現れたときに、俺の中の思い出は成仏するんだと思う。
もうなにもできないけど、好きだった人がどっかで楽しくやれてんのなら、それでいいのだと思う。

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