Enter the blue spring(小説)#9 大晦日拡大SP

パーキングエリア 上空

快人「え、どういうこと?」
音邪「さあな?お前が奴らを倒したあと、奴らのアバターを隠したんだろ?
その隠したアバターたちに聞いてみればいいんじゃないのか?」
快人「ええ?あれもう中の人いな」
ドーーーン!
突如として大きな音が空まで轟いた。
快人「な、何だ!?」

パーキングエリア 3階
未来「待て待て待てーー!今度は絶対お前に勝つからな!」
奈義子「無理ですよ。私は絶対に負けません!」
未来「いいや!PVPに絶対なんてないね!」
未来は第1話で負けた屈辱を晴らすため、奈義子をバイクモードで追っていた。
なお、二人が追いかけっこをしているのは、この建物の壁面である。
未来「今だーー!くらえーー!」
未来は奈義子に飛びかかって、強力な一撃を見舞おうとした。
奈義子「くっ!」
奈義子は緊急回避で未来の一撃をかわす。
バキーーーン!
何と!壁にメキメキとヒビが入り、壁が崩れてしまった!
未来「わぎゃとーーー!危ねえ危ねえ!崩落で落ちるわけには行かねえぜ!」

快人「わわわ!?ちょ、普通にアウトだってば!瓦礫がパーキングエリアの敷地から出て建物や人に当たろうもんなら!」
音邪「PVPがバレちまうぜ!」
音邪と快人は協力して敷地外に落ちていく瓦礫を食い止める。
ところが、
零斗「何ーー!?何で壁が!」
快人「へ?」
壊された壁からラビットザウルスレイダー、零斗が出てきた。
零斗はどうやら背中のとさかでこうげきしようと背中から突進をしていたらしく、勢いよく飛び出したはいいものの、真っ逆さまに落下してしまう。
その下にあるのはもちろん、無関係の民家だ。
快人「危ない!」
快人は何とかエンジェルレイダーの力で飛行し、零斗を捕えた。
快人「おい!気をつけてくれよ!」
零斗「フッフッフ、とまあこれも計算の内で、玲奈から逃げ切ることに成功した。」
快人「こいつ本気で蹴飛ばそうかな。」
零斗「それより良いのか?玲奈が一花と交戦状態に入った。多分建物のどこかしらが……」
パキーーーン!
快人「あっ!!」
パーキングエリアの角がきれいに切断され、そのまま敷地外へと落下する。
音邪「本気かよ~!第3回目にしてパーキングエリアが、数学の図形みてえな建物になっちまったぞ!」
快人「もーう!直すの面倒くさいんだってば!行くぞ音邪!」
音邪「おう!」
快人は零斗を雑にパーキングエリアへ放り投げると、音邪と協力して、切り離されたパーキングエリアの一部が外に落ちないように下から支える。
音邪「縁の下ならぬ三角錐の下の力持ちってか!?」
快人「ちょ、これはなかなか重いぞ……ぐぬぬぬ!」
快人はパーキングエリアの屋上に巨大な三角錐を投げ飛ばした。
快人「はあ、重かった……」

一方屋上では
レオン「危ねえ……急に建物の一部が飛んできてびっくりしたぜ……」
奈義子「さあ、最後はあなたです!必ず優勝してみせます!」
レオン「……フ、この俺にバトルで勝とうなんざ、百年早いぜ。召喚!」
スナイパーシャーク「ガーーーン!」
レオンは召喚を行って火力面を上乗せするつもりのようだ。
奈義子も同じく召喚を行う。
奈義子「召喚!」
トリチファイター「グギギギバーーーン!」
レオン「クックック、そっちも揃えたか、お互い得意は遠距離攻撃、射撃勝負と行こう。」
奈義子「望むところです!」
2体のレイドモンスター、二人のレイダー、何も起きないはずもなく……

バンバンバンバンバンバンバンバン!
盛大な銃撃戦が始まった!
音邪「おいおいおい!この敷地内は外からここの様子を見たり聞いたりできないように、結界が張ってあるけどよ!」
快人「敷地外に出た弾幕は音も聞こえるし、視認もできるんだぞ!」
音邪「まずいぜ、どうにかして止めねえと……あそうだスイッチライフルで片っ端から落とせばいいんだ!」
音邪は自身のレイダーに付属するライフルを出すと、あちこちへ飛んでいく弾幕を次々と撃ち落としていった。
快人「音邪、やっぱ発生源止めないと意味ないんじゃ……」
音邪「いいやダメだ!あいつらには決着をつけてもらわないと!」
そう言って音邪は二人を止めようとはせず、とにかく弾幕をライフルで撃ち落としていった。

そして、
レオン「うう……俺の、負けだ。」
ついにレオンが降参し、宙を舞っていた弾幕が止まった。
奈義子「いいんですね。倒しちゃいますよ?」
レオン「ああ。俺の負けだ。潔く認めるよ。」
奈義子「……分かりました。」
奈義子がレオンに刃を振り下ろす。
その時ーー
レオン「不意打ち!」
突如としてレオンが攻撃を再開した。
奈義子「うっ!」
突然の攻撃に奈義子が一瞬怯む。
その瞬間をレオンは見逃さなかった。
レオン「くらえ。」
バン!
レオンの拡張武装、シャークスプラッターから圧縮された高速水流が吹き出し、レイダーの装甲を貫通して奈義子のアバターに致命傷を与えた。
奈義子「ああ!何て卑怯な!」
レオン「知ってたか?心理的油断は敗北につながるんだ。」
奈義子「ひ、ひどい!」
ログアウト……
奈義子のアバターが死亡し、レオンの勝利が確定した……

レオン「ふう、疲れたぜ。」

音邪「そうか、ならぶちのめす絶好のチャンスだな。」

かに思われた。

レオン「え?」
背後から聞こえるはずのない声がした。

バキュン!

レオン「うわあ!?」
レオンのHPが大きく減った。
音邪のサタンレイダーが必殺の一撃を叩き込んだからだ。
音邪「ほら、心理的油断は敗北につながるんだろ?気をつけなきゃな。」

快人「ああなるほど。そういう目的で俺の手伝いをしたわけ。」
快人は呆れ果て、短い溜め息をついた。
快人「まあでも、手伝ってくれて少しは助かったかな……この世界に何かあったらまずいし。」
こっちの世界には僕の住む世界にあるような、"違和感"があって欲しくない。
そんなものは間違っても持ち込んではいけない。
快人「守ろう、僕だけでも。この"違和感"のない世界を。」

レオン「チ……こいつぅ、裏方に回ったんじゃ、なかったのか……」
レオンは恨めしそうに音邪に声をぶつける。
音邪「おい、俺は言ったぞ?『ある程度済んだらそっちにも顔出す』ってな。」
音邪は変身しているため、顔は隠れている。しかし、恐らく邪悪な笑みを浮かべているであろうことは容易に想像がついた。
レオン「て、てめえ……てめえは、てめえは悪魔だぜ……」
音邪「ハッ!お前に言われたくはないね!」
音邪はそう言うと、両手にグローブのような拡張武装を装備し、レオンに殴りかかった。
音邪「オラ!」
レオン「グオオ!?」
レオンは音邪の攻撃をまともにくらった。
そこにダメ押しと言わんばかりに、音邪は立て続けに攻撃を加える。
ラッシュを受けて、レオンは大きく吹き飛ばされた。
レオン「ぐああ!?」
音邪「ふん、人にプレイスタイルを教えられるような奴ではないみたいだなー、レオンさんよー。」
レオン「くっ、こ、ここで、ここで負けたら、プライドが傷つくぜ……!」
音邪「フッ、愚かな奴だ。」
音邪はどす黒い拡張武装を自身の右手にセットすると、そこからモヤを出してレオンを眠らせた。
レオン「ぐう………」
音邪「さっさと消えてしまえ。」
グーワー!
サタンストライク!
マスターゲットレイダーから専用音声が鳴る。
音邪はレオンに必殺の蹴りを叩き込んだ!
ログアウト……
レオンは一撃でログアウトさせられた。
音邪「イエーイ!俺の勝利ーー!」

しかし、現実では
音邪「負けている!あろうことか4人に!青春スコアを抜かれている!」
PVPの翌日、朝早く学校に来た音邪は、青春スコアのランキングを見ていた。
音邪の上には快人や未来など、それなりにこの手のことができる人物がいる。
音邪「く、くそー!馬鹿な未来に抜かれるとは!だが、こっちだって早く彼女作るもんねーー!」
???「あ!音邪君!おはようございます!」
音邪が邪な思いを募らせていると、教室に一人の女の子が現れた。
音邪「あ、お、おはよう。今日は早いんだね。」
NPC H「電車が遅れちゃってるみたいなので、一本前の電車に乗りました。」
音邪「ああ、そうだったんだ。俺は学校が近いから、何も気にしないで歩いて来ちゃったよ。」
NPC H「そうなんですか、徒歩の人は良いですねー。」
音邪「まあまあ、あんたと話す時間や自己研鑽の時間がなくなったりするし、あんま面白くないぞ?」
NPC H「ああ、確かにそれは、あるかもしれませんね。」
お前の気を全てこちらに集中させる方針だというのに、登校のルートを合わせられないのは割と痛手なんだよ。

俺がここに来てもう一週間以上経った。
授業で言われた通りにこの女にアプローチをしようとしたが、どうもこの女は人見知りらしく、なかなか俺の手に落ちない。
だからやり方を変えた。
今は4月。
新学年で新しい人との交流をする上では、一刻も早く馬が合う人間を作りたい、というのが人間の心理であろう。
その馬が合う人間を「俺」にする。
他の奴らは既にミッションで開放したマスターゲットレイダーで、こいつとは好意的な関係になれないようにしておいた。
これでまんまとこいつの初めての友達ポジションを頂きつつ、今後クラスで俺以外の人間はこいつと友達や恋人にはなれない!
よってこいつの相関図は俺との関係一色になる!
……というのが俺流の彼女の作り方ステップ1。
このまんま関係性をコントロールして、上手くこいつを彼女にしてやる。
NPC H「そうそう音邪君!私、音邪君以外で始めての友達ができましたー!」
……マジで?
いや俺の方針崩れたんだけどー!
音邪「ほ、ほう……そうなのか。そいつは良かったね。」
NPC H「音邪君には話したと思うんですけど、私ギターを弾くのが好きなんですよ!」
音邪「おう、お互い話題が何もなくて、趣味の話になった時に話したやつな。」
あれは少し意外だった。
俺の趣味は音楽を作り出すこと。
もちろんかっこいい楽器でだ。
具体的にはピアノ、バイオリン、ギター、俺が一番好きなかっこいい楽器。
だから趣味を聴かれた時にそう答えて、
そっからこいつとギターの話で盛り上がって親睦ができた。
てっきり乗ってくるとしても、ピアノかバイオリンだと思ったぜ。
NPC H「それで、たまたまギタリストを探してる人にスカウトされて、そのままバンドを組むことになって!」
音邪「うんうん……え?」

バンド!?
バンドっておま、それ恋愛ダメなパターンのコミュニティじゃない!?
てかお前!孤独な陰キャがバンドを組むって……
『ぼ◯ち・◯・ろ◯く!』じゃないんだから〜!?
くそ、正直転がるどころか転がされる側だと思っていた。完全に見くびっていた……全く、才能のある若者ってのは怖えな!
でも冷静に考えたら、こいつが孤独なところからバンドという若者の"青春"に向かっていく過程って……
それ俺がやったことにして論文書けば、俺、かなり優秀だと思われるのでは!?

説明しよう。うちの高校の総合科には、内申と論文、2つの階段がある。
学生たちはその両輪を上手く完成させ、しっかりとした高校生でなければいけない。

内申というのは成績の右側に書かれるやつ、要は先生が記述してくるタイプのやつ。

そして論文はいわば総合科の単位のようなもの!
これが書けないと卒業はまず無理。

誤解のないように言っておくと、総合科は何も青春に全振りした科目ではない。
文字通り色んなことをやり、いろんな論文を書かされるわけだが、その中でもこの青春の論文はダントツでムズい。

しかも青春ができなくて留年は何か恥ずかしい!

だから俺も、そんなところで躓いて留年したら、どうしようかと思っていたが!
こいつの記憶を閲覧して書いていけば、もう論文など恐れるに足らず!
…………
内申は……
まあ、あの、百夜に見せるからそれなりにあれだけど?
まあ大丈夫というか?
そもそもそこで他と差をつけるのは至難の業というか?
数値ついてないから目に見えないというか?
まあどうにでもなるというか?
まあともかく、これで取り敢えず卒業は安泰。いやー1年で論文完成なんていないぞ音邪、最高だぞ音邪!
そしてありがとう後藤 ひ◯り!
じゃなかった、ええと……何だっけ?
ああもう名前さえ思い出せねえ!
まあいっか!

レイダーon、記憶閲覧
NPC H「へ?急にどうしたんですか音邪君?」
音邪は彼女にマスターゲットレイダーを向けている。
音邪「ありがとよ!これで俺は!優等生になれるぞーー!」
音邪はマスターゲットレイダーで彼女の記憶を閲覧しようとした。
しかし、
ビビッ!
音邪「へ?」
マスターゲットレイダー
「このNPCは特異点です。マスターゲットレイダーの機能の行使は、硬く禁じられております。」
音邪「…………」
ああそうだった!
このゲームこの間のアップデートで、
マスターゲットレイダーから世界を守るシステムが追加されたんだった!
最悪だよタイミング!
ええと、確か、特異点っていうのはそのアップデートで追加された敵対モブ、世界の理が守っているものの総称。
つまりこの女は守られてるから閲覧不可能と!
ふざけんじゃねえよ世界の理!
絶対倒してやるからな!
……とはいえ、肝心の守っている世界の理がどこにも見当たらない。何なら倒し方もわからない!
一体どうしろっていうんだ!

NPC H「あ、あの、音邪君?大丈夫ですか?」
音邪
「希望とは
 請うて叶わぬ
 白昼夢」
NPC H「音邪君!?」

放課後 パーキングエリア 1F
音邪「はあ、仕方ない。相手はボスだし、せめて戦力強化だけでもやっておくか。」
誰もいないパーキングエリア。
俺はここでとあるイベントを発生させようとしていた。
世界の理は最新のモブのためか、詳しい性質を調べるのには少々時間がかかる。ところが、運営に世界の守護を任されているということは、当たりデッキのレイダーでも攻略は難しいということ。
つまり、俺の場合はサタンレイダーの強化が必要不可欠ということだ。
俺はマスターゲットレイダーで、とあるイベントを探す。
そのイベントの名は
音邪「悪魔の試練……これかな?」

悪魔の試練とは、ランダムで強化されたモンスターが6体出てきて、それを全員倒してサタンレイダーの真の力を開放するというもの。
サタンレイダーに特別に設定された強化イベントである。

音邪「難易度的にはまあ大丈夫かな……俺は空手の体術もある程度習得してるし。よーし、これを発動して、俺は最強になってやるぞ!」
と、マスターゲットレイダーのボタンを押したその時、

北坂「おいおい、この年でミステリースポットに道草食うとか、正気か?」
生徒A「ああ、俺らは至って正気だぜ。このパーキングエリアでは変な噂が絶えないんだ。」
生徒B「ある日ここに立ち入ったら天使が飛んでたとか、突然建物が崩れてすぐに元に戻ったとか。」
生徒C「不思議なのがよお、外から見てると何もないらしいんだが、敷地に立ち入るとたちまち変なことが起きるらしいんだ。今回俺たちはその秘密に迫りたいんだ。」
北坂たち、清秀沢高校の生徒がやってきた。
北坂「下らない。俺はさっさと帰るぜ!」
北坂はいきなり踵を返すと、とてつもない速さで走っていった。
生徒A「何だあいつ?ひびっちまったのかな?」
生徒B「いや、あいつは帰巣本能が強すぎて帰っただけだと思うぞ。」
生徒C「ちょっとくらい帰るのが遅れたって良いじゃねえかよ……また一つ謎ができたんだが。」
音邪「おいお前ら!」
生徒たち3人に音邪は声をかけた。
生徒A「あっ、音邪じゃん!お前もここ気になってんの?」
音邪「いや、俺は目的があってここに来たが……お前ら、ここ本気で危ないから早くここから去った方が良いぜ。」
生徒B「マジで(笑)やっぱここは何かあんのか?」
音邪「あるっていうかこれから起きるっていうか……まあ、ともかく危険だ、さっさと帰れ!」
生徒C「いやいやいや!これから起こるんだったら超見たいよ。てか、そんな危険な場所なら、何でお前は立ち入ってんだよ。生徒会の活動か?」
音邪「違う。というかもし見れたとしても生きて帰れる保証がねえ。本気でこの場から離れないとヤバ」
ブァァァア゙ア゙!
突如奥の方から地獄からの呼び声のようなおぞましい声が轟いた。
生徒A「えっ!?何!?何今の声!?」
音邪「ゲッ!?もう来ちまったのか!皆ー!逃げろー!」
ククレシタクビ(悪魔化)
「ルールールー!」
パーキングエリアの奥から巨大な生首のようなレイドモンスターが姿を現す!
生徒C「ひいい!何だよこいつ!幽霊!?」
音邪「そんなもんじゃねえ!ったく!だから帰れと言っただろ!」
サタンプラグ!
キメラデッキ!
音邪「インストール!」
音邪は急いでレイダーへと変身した。
ククレシタクビ(悪魔化)
「ルールー!!」
ククレシタクビは凄まじい波動を吐き出し、確実にこちらを仕留めようとする。
しかし、音邪は3人を引きずってどうにか逃げ切り、自身の武器を召喚した。

サタンブレード!

音邪「よし、勝算ありだ!」
音邪はサタンブレードにサタンプラグをセットし、必殺技を放った。

サタンブレードスラッシュ!
スパン!!
ククレシタクビ(悪魔化)「ウウウ………」
ククレシタクビは体が真っ二つに切断され、息絶えた。
音邪「ぐう!??」
音邪は突然しゃがみ込み、左足を抑える。
生徒B「音邪!大丈夫か!?」
生徒たちが駆け寄り、音邪を心配する。
音邪「だ、大丈夫だ!ちょ、ちょっと右足が、悪魔に近づいたってだけだ!」
生徒A「ええ!?」
生徒C「そんな!?それって大丈夫なのかよ!?」
音邪「ひ、他人の心配より、自分の心配をしろ!」
音邪は再び立ち上がり、目の前に現れたモンスターに立ち向かう。
ブーメランマン(悪魔化)「うおーー破壊破壊破壊破壊破壊!」
モンスターは恐ろしく早いパンチを音邪に放つ。
音邪「うおお!そんなパンチは当たらねえ!」
音邪はサタンブレードを投げてモンスターの頭部に刺すと、自身の手に剣を装備してモンスターの両腕を切り落とした!

ブーメランマン「な、何するんだバイブーメランマン!」
音邪「俺はそんな奴は知らねえ!」

音邪はブーメランマンをみじん切りにした。
音邪「ぬうう!!またか!今度は左足がー!」
生徒A「音邪ー!!」
魔王(悪魔化)「キエエエエ切り刻んでくれるわーー!」
音邪「あっごめん今良いところだから邪魔しないで(小声)」
魔王(悪魔化)「何?」
ドン!!
魔王「グフッ!?」
音邪は左足で魔王を蹴り飛ばすとまたしても必殺技を発動する。
サタンストライク!
音邪「でりゃああああああ!!」
音邪は馬乗りになって魔王に13発ものパンチをくらわせた!
魔王(悪魔化)「グワアアアア!?」
音邪「ふう、何とか倒した……うう!今度は、今度は右手かー!」
生徒「ああ!まずい!音邪が悪魔になっちま……ってあれ?
何で変身なんてできるんだ音邪?
ああもう!何が何だかさっぱりだ!!」

バカスキツネ(悪魔化)「貴様ら……」
生徒B「はっ!」
気がつくと生徒たちの後ろに一体のモンスターがいた。
バカスキツネ「ワシの炎で息絶えるがよい!」
秘技 火遁の術
音邪「させるかー!」
音邪はスイッチライフルをショットガンモードにしてバカスギツネに攻撃を加える。
バカスギツネ(悪魔化)「ぬわっ!?お、おのれー!邪魔をするな!」
プラグセット!
サタンシュートストライク!
巨大なサッカーボールのような強力な魔弾が放たれ、バカスギツネに命中する。
バカスギツネ(悪魔化)「ギエエエ!?」
バカスギツネは一撃で爆散した。
音邪「ふう、危ねえ危ねえ。お前たちには生きてもらわないと困る。うっ!つ、遂に左手もか……」
生徒B「お、音邪!そんなことになってまで出会って数日の俺たちのために……」
生徒A「ごめんよ音邪…俺たちのせいでこんなことに……」
音邪「ひ、人を助けるなんて、当たり前のことだ!安心しろ、お前たちが無事なら、俺はそれで満足だぜ!」
生徒C「お、音邪……」
アークチルド(悪魔化)「キエエエエ!」
音邪「ぐはっ!?」
音邪は後ろからモンスターの攻撃を受けた。
音邪「くっ、くそ!舐めやがって!」
音邪は拡張武装を展開してアークチルドを叩きのめす。
アークチルド(悪魔化)「ウウゥ…………グハ!」
音邪「はあ……はあ……」
海竜(悪魔化)「オーーーーゴーブオオオオン!」
疲れが見える音邪に、巨大なドラゴンが襲いかかる。
生徒A「ああ!音邪やめろ!!これ以上戦ったら、お前が死んじまうぞ!」
音邪「はあ……はあ……ここで俺が逃げたとして、お前らの命がない!もう、後には引けないぜ。」

ギターバイオレンスアックス!

音邪はギターのような斧を召喚した。
生徒B「お、おい音邪!お前……今すごく!


モ◯ハンっぽいぞーーー!」
音邪「はい?雰囲気壊れるんで止めてもらえます?(圧)」
生徒B「あ、す、すみません……」
音邪「ったく。」
音邪はギターバイオレンスアックスで演奏した。
Thunder!
バリバリバリバリ!
海竜(悪魔化)「ギィィィターーーノゲェ゙エエエエン!」
海竜は全身を雷で焼かれ、灰になって死亡した。

音邪「お、終わった……」
音邪は力尽きたかのようにその場に倒れ込んだ。
生徒C「音邪ーーー!!」
生徒たちは倒れている音邪の元へ駆けつける。
生徒A「大丈夫か!?大丈夫か音邪!?」
音邪「わ、悪い……俺はもう、悪魔に魂を売っちまった……もう、悪魔になっちまう……俺が、俺じゃなくなっちまう……」
生徒B「そ、そんな……」
生徒C「音邪!俺はお前が悪魔になっても、ずっと友達でいるぞー!」

???「安心しろ、そいつが悪魔になることはない。」
生徒C「え?」
生徒たちが後ろを振り向くと、そこには清秀沢高校の有名人がいた。
生徒たち「快人!!」
快人「フ、何が起こったのかと来てみれば、盛大な自作自演だなー音邪。」
音邪「……チッ」
生徒B「じ、自作自演?どういうことだよ、生徒会長?」
快人の思わぬ言葉に生徒たちは困惑する。
快人「こいつは自分が強くなるために、あのモンスターたちを自分で呼び出して倒そうとしたんだ。
君たちが来たのは想定外だったみたいだが、この厨二病な俺の弟は、同級生に自分のかっこいいところを見せるために、わざと悪魔化に苦しんでいるように装いつつ、戦闘を長引かせながら戦っていたんだ。そうだろ、音邪?」
生徒A「そ、そんな!違うよな!?音邪……」
音邪「……」
音邪は何も言わない。
快人「そもそも、俺たちに痛みや苦しみ、疲れなんて概念は存在しない。
だから音邪は体が悪魔化しようと平気でいられるはずだ。」
生徒C「あっ!確かに!右足が悪魔になったのに、左足を抑えてた!」
音邪「く、しまった……」
致命的なミスをして落ち込む音邪に、快人はこう続ける。
快人「お前がやったのは、悪魔の試練というイベントだな。
そのイベントは、上級のモンスターが出てくる危険なイベントなんだぞ。
一般人が近くにいるようなら、どこか別の場所にマスターゲットレイダーを使って転送させれば良かったはずだ。
ましてや、一般人が巻き込まれているのに戦闘を長引かせるなんて、言語道断だ、音邪。」
生徒A「まあまあ!責めるのはそれくらいにしてやれよ!俺たちは無事だったし、音邪も、無事ってことだよな?」
快人「ああ、肉体は悪魔になるかもしれないど、多分平気だぞ。」
生徒A「そっか!ならいいじゃねえか!皆無事に生きて帰って来れたし。」
生徒は明るい声色で音邪を気遣う。

生徒A「かっこつけなくたって、お前はクラスの人気者なんだぞ〜音邪。それに、俺たちみたいな友達もいるしな!」
音邪「友、だち?」
生徒A「そうそう、友達。俺たちはお前の仲間なんだぞ、音邪。」
他の生徒も笑顔で頷く。
音邪「皆……」
快人「いい友達を持ったな、音邪。これからは大事にするんだぞ?」
生徒A「そうだ!北坂いなくなっちまったし、一緒に帰ろうぜ!」
音邪「……うん!」
音邪はゆっくりと立ち上がった。
ズバン!
快人「……は?」
生徒Aの頭が、真っ二つに切れた。
音邪「この俺の黒歴史を見たんだ。土に還ってろ、ゴミめ。」
音邪が、やった。
悪魔の肉体を手に入れた音邪。
彼にかかれば人間を殺すなど、容易い。
生徒B「え……ど、どうして……?」

この場にいる全員が、状況を理解できずに固まっている。
音邪は軽やかに走り出すと、生徒Bの胸ぐらを掴んで壁に叩きつけた。

生徒B「ぐあ!?」
快人「はっ!や、やめろー!」
快人が止めるよりも早く、音邪はスイッチライフルを召喚し、必殺技を放つ。

サタンシュートストライク!

ドガン!!!

爆発音が響き、生徒Bは骨を残して全焼し、辺りに黒煙が立ち込める。
快人「す、スイッチライフルだと……悪魔の試練を達成した効果で、生身の状態でもレイダーの力が使えるようになったのか……!」
音邪「ふん、変身すれば、これ以上に強い力が使えるぜ。」
生徒C「あ、ああ……お、音邪は、音邪は悪魔に、なっちまったんだあああ!!」
生徒Cは恐怖のあまり、全力で逃げ出す。
音邪「逃がすか!」
快人「やめろーー!」
快人は変身してレイダーとなり、音邪を食い止めようとする。
音邪「どけー快人!俺の歴史が黒く染まる前に、奴をぶっ殺す!」
快人「黒く染めたのはお前だろ!この人でなしー!」
快人はいつも以上のパワーで音邪に殴りかかるが、音邪も負けじと快人に蹴りを入れて対抗する。
音邪「くっ、とにかく邪魔な兄貴だ!ログアウトさせてやる!」
快人「やってみろよ!」
音邪は右足に邪悪なオーラを纏う。
快人に飛び蹴りをするつもりだ。
快人はエンジェルレイダーの羽毛で壁を形成し、音邪の攻撃に備える。
音邪「快人ーーーーー!!!!!」

快人「音邪ーーーーー!!!!!」
音邪の飛び蹴りが快人の形成した壁に当たるのかと思われたその時ーーー

音邪「と、見せかけて二段ジャンプ!」
音邪は空中でもう一段ジャンプし、快人の作った壁ーー引いては快人をも越えていった。
快人「はっ!しまった!狙いは僕じゃない!」
音邪の真の狙いーーそれは、
生徒C「ひい、ひい、逃げなきゃ、逃げなきゃーー!」
バキッ
生徒C「グゲッ!?」
生徒Cの首が折れた。
音邪「脊椎の骨折により、即死か。こいつが俺の本当の狙いよ。」
快人に邪魔されるのが面倒だった音邪は、快人を心理的に誘導し、まんまと最後の関係者の命を奪った。
快人「ダメだ、死んじゃーー」

快人の目の前には、変わり果てた人間が転がっていた。
そして近くに立っているのは、
人の姿をした悪魔ーー自らの弟だった。
快人「音邪ーー!」
快人は音邪の胸ぐらを掴んだ。

快人「どうして、どうしてこんなことを!」

音邪「何を怒っている?ただゲームキャラが死んだだけで。変わった奴だなお前。」
音邪はヘラヘラ笑いながら快人に無情な現実を突きつけた。
そう、これはただのゲーム。並行世界で行われているただのゲームなのだ。

快人「お前こそ……お前のつまらない見栄のために、ゲームの中の話なのに……どうしてそこまで!」

音邪「俺の生き方はどこであろうが変わらない。常にかっこよく、誰にもかっこわるい姿は見せない。見られてしまったのなら、そいつを始末するだけだ。
むしろ、簡単になって良かったぜ。ゲームの中では俺がこいつらを始末しても、バレないしなー。」

快人「な、何て、何て軽薄な奴なんだ……お前は!お前にとってはただのゲームでも、他の人たちはそうじゃないんだよ!命は無限じゃないし、今を必死に生きて」
音邪「わあったわあった。そこまで言うなら復活させてやれよ、その機械でな。」
音邪は快人の左手についているマスターゲットレイダーを指差した。
音邪「な? で き る だ ろ?」

快人「くっ……!知ってるくせに!僕が復活を使いたくないことを!知ってるくせに!」

音邪「はいはいはい知ってますよー。よーくご存知です。んじゃ、俺が代わりにやってやるよ。もちろん、記憶は消してな。」

レイダーon、記憶操作 復活

音邪はマスターゲットレイダーの力で3人を復活させた。
音邪「うーむ、脈があるな。しっかり息を吹き返してるぜー。」
音邪は生徒Cの脈を測りながらニヤニヤしつつ呟いた。
快人「許さない……!お前のその行いは……死んでも許さない!」
音邪「勝手にすればー?勝手に怒って、無駄にエネルギーを消耗してくださーい。」
音邪は皮肉っぽく快人に吐き捨てると、まるで急いでいるかのように走り出した。

とある建物の屋上
???「へーえ?あいつかー。この世界に手を出そうとする奴は。」
黒いモヤのような謎の生命体が、音邪の様子を観察していた。
???「どこであろうと、悪い奴はいるもんだねー。」
黒いモヤは独り言を呟きながら、どこかへと飛び去った。

音邪「世界の理が現れたってのは本当なんだろうな?」
マスターゲットレイダー
「ええ、この反応は恐らく。」
音邪はマスターゲットレイダーと話しながらどこかへと向かう。
どうやら都市から離れて山の方へ向かっているようだ。
音邪「グッドタイミングだ。パワーアップしたレイダーの力で奴を倒し、今年の優等生ポジションは俺が頂くぜー!」

論文を誰よりも早く書き上げ、周りから承認されたい、良く見られたいと考える音邪。
その承認欲求の暴走は、どこへ向かい、どんな結果をもたらすのかーー


株式会社ツブエス オフィス
クデラ「いいね。それでこそ、私たちのゲームのユーザー。」
暗く、電気のついていない部屋。
一人の会社員が、一連の様子をPCで見ていた。
クデラ「環境省のせいで改悪アップデートをしなければいけなくなったが、この手のプレイヤーが増えてくれると、私としては万々歳だよ。」
会社員は歪んだ笑みを浮かべる。
クデラ「今はあまり表に出なくなったが、この作品の正式名称を、ユーザーの皆には思い出して欲しいものだね。
その名はーー」

ENTER THE BLUE SPRING
OF THE WORLD.



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