Enter the blue spring(小説)#10

年末の回のあらすじ

音邪「あー、総合だりぃ。何テーマ『青春』って?
てか、論文書くのは無理だろ、どう考えても。」
快人「まあまあ、書かないと単位取れないから。」
音邪「そっか、じゃあ、カンニングするぜ!!」
快人「は?」

→本当にやる。
音邪「マスゲト(マスターゲットレイダー)でNPCの記憶を閲覧するぜ!そんでそれを俺が体験した風にして論文提出すりゃ」
マスターゲットレイダー「無理。こいつのは無理。」
音邪「あーFA◯◯!」

→邪魔者は消す思考
音邪「原因のボス倒してさっさと記憶見るぜ!そうと決まりゃ、レイダーを強化するぜ!」

→戦闘
音邪「うおお!イベント攻略してやるぜ!全てはレイダーの強化のためだぜ!」
そして近くにいた同級生が、とばっちりをくらう。
同級生「ひーー!モンスターが襲ってくるーー!」

→厨二病を発症
音邪「あー!戦ったせいで悪魔にー!」
快人「なりません。ヒーローごっこはやめましょう。」
同級生(俺たちは何を見せられてるんだ……)

→目撃者の◯害
音邪「俺の黒歴史を見た奴らは首をへし折られて死んだらええねん。」
同級生「ひでぶ!」
快人「性格の悪さまで強化されてるー!」

→逃亡
音邪「山の方にボスいるらしいから行くわ。まったねーー!」
快人「二度と来んなーーー!」

こうして、仮にも主人公の一人の清聴 音邪は、打倒『世界の理』を目指して、
カンニングを邪魔するギセ…ボスの元へ、向かうのだった……

ーー第10話 明日ねえ奴らーー

山梨県 とある山奥
音邪「え、えーっと……こいつ?もしかして?」
音邪は遂に強力なボス『世界の理』にたどり着いた。
しかし、その姿は
音邪「スーーー、これってさ、仙人とかが修行するために壊す、でっかい岩だよね。うん、ヤベデカイドウシヨウ。」
岩!!
音邪が目にした『世界の理』は、淡く青白い光を放つ岩だった。
そして巨大である!!
音邪「これさ、どう考えてもきついっしょ?
このボス多分、キルコマンドは無効だしさ。
下手するとド◯クエのメタ◯キング、いや黒◯の巨竜とかみたいなポジションじゃない、こいつ?」
マスターゲットレイダー「あっ、ついでに、マスターゲットレイダー由来の攻撃は通用しません。バリアを纏っているので。」
音邪「は?じゃあ、レイダーでの攻略は」
マスターゲットレイダー「無理です。いやそもそも、『世界の理』って、運営が倒せるように作ってないんすよ。
並行世界を弄ることが環境省の顰蹙を買ったので、急遽追加したっていう、そういう、どちらかと言えば益獣なんすよ。そんな益獣を倒すなんて、僕バカだと思うんすよね、はい。」
音邪「ハイハイそれってあなたの感想。見たところこれは卵型だな、よーし!つまり卵だから孵化させるぞー!」
マスターゲットレイダー「うーん、駄目だこいつ。」
音邪「んじゃ、お前はパーキングエリアに地下室作っといてー。」
マスターゲットレイダー「へ?」

翌日
パーキングエリア 1F
音邪「よお皆!青春してるか!?」

昨日、音邪は深夜にこうロインを送った。

青春し隊
音邪『放課後、パーキングエリア集合!』

零斗『は?◯すぞ。』

玲奈『以下同文』

一花『ねむい……』

奈義子『だるい……』

未来『ごめん、明日部活』

音邪『休め』

未来『え?』

レオン『おーい、人って撃てる?』

音邪『いい加減にしろよお前!』

そして、結局誰も来てくれなかったので、

レイダーon、サミット

サミットした。

零斗「してるわけないだろ。お前が呼び出したんだから。」
玲奈「ええ本当に。野球の邪魔しないで欲しいわ。それで?私たちを呼んで、何の用?」
音邪「ああうん。俺、もう論文書けちゃうかも。」
一花「は?」
レオン「マジ、か?」
音邪「ああ、というわけで皆!今のところ成績all5の俺は単位取って卒業確定。
お前らはここでつまづいて留年確定。それじゃ!!」
一花「待たんかい!!嘘だ!嘘だと言え!私を置いてかないで!」
奈義子「そうですよ!あなたみたいな青春スコア中間層にアドバンテージを与えたら、格差が拡大するじゃないですか!」
一花と奈義子は音邪の台頭を恐れていた。
レオン「いや、それはお前らが持てるものになろうとしないのが悪いだろ。自分の行いにはしっかり責任を持とうな。」
レオンは彼女らに皮肉っぽく笑いながら、無情な現実を告げた。
レオン「ま、俺は射撃ができないくらいだったら、自害するけどね。」
未来「お前は何のために高校に通っているんだよ。」
快人「というか、お前の何処にも青春が何たるかを書ける要素、ないと思うんだけど。」
零斗「間違いない。」
未来「そうだなー。俺は先生の言われた通りに彼女作ってみたけど、特に青春のことについては……何とも思わねえな。」
確かに未来たちの言う通り、音邪は特段今回のテーマを勉強していたわけではない。
彼はどこに行こうが平常運転である。
音邪「まあ、先生の言うこと聞いたところで、どうだって話だろ。俺は青春というものをよくわかってそうな奴を見つけたからな。最強だぜ。」
零斗「そうか。しかし大丈夫か?俺たちの論文は30万字、博士論文の約2倍だぞ?」
音邪「安心しろ、記憶全部の中から漁りゃあ、ネタは尽きない。」
快人「ん?でも自分の体験した青春について記入しろって明記してあったから、お前も頑張らないと無理じゃない?」
音邪「俺が体験した風を装って書きゃいいだろ。」
快人「え、それってもはやカンニング」
音邪「はいこの話終わりー!」
快人「おい誤魔化すな!!」
零斗「しかし、最終手段としては有効だ。俺たちも探すか。」
玲奈「ええ、そうね。」
音邪「いや、無理だよ。運営がこの間対策を打ったらしい。」
零斗「何?」
零斗は耳を疑った。
運営が対策に動いたということは、もはやプレイヤーには何もできないということ。
そうかと思えば、同じプレイヤーである音邪はそれができるという。
これは一体どういうことであろうか。
玲奈「じゃああなたは、何でそんなことができるのかしら。」
玲奈もその点は気になったようで音邪に冷静に質問する。
音邪「聞きたい?」
一花「聞きたい。」
奈義子「私も、聞きたいです。」
一花と奈義子も真剣な表情で食いついてきた。
音邪「フッフッフ、それはね……


まだお前らには秘密だYO!」
一花「ええ!?ちょっと待って!」
音邪は言うだけ言っておいて肝心なことは言わずに逃げた。
奈義子「留年回避の方法さえわかれば、私も気が楽なのに……」
一花「本当だよ全く。一方的に言うだけ言って、何だったのこの時間!」
玲奈「まあいつも通りってとこね。何考えてるのかは全くわからないけど。」
未来「ったく、自慢話ならわざわざ呼ばないでくれよなー。」

零斗「ふむ………何か、裏があるな。」
快人「うん、絶対あるよ。きっとよからぬことをやろうとしているよ、あいつは。」
レオン「いくら緻密に企てたところで、どうせ最後は留年するんだよ!それが俺たちという人種だ。というわけで、俺は引き続き趣味に没頭します。」
零斗・快人「お前は考えなしに欲望丸出しで動きすぎだ!!」

未来「あっ、俺ちょっと飲み物買いに行ってくるわ!」
一花「うん、いってらっしゃーい。」
未来は近くの自販機に飲み物を買いに行った。

30分後
未来「どうしてだ?何で帰ってこないんだ?おーい!」
レオン「帰ってこないのはお前だ、未来……何してんだ?」
自販機を掴んで持ち上げようとしている未来にレオンは聞いた。
すぐ帰ってくる筈の飲み物の買い出し。
しかし来ないので来てみればこのザマである。
未来「お釣りが出てこないんだよ。」
レオン「何円だ?」
未来「20円」
レオン「じゃあいいだろ。あと、何も金を入れなくても、マスターゲットレイダーでどうにでもなるだろ。」
未来「ええ……お前そんな犯罪者みたいなことしてんの?」
レオン「まあな。それが嫌なら、小銭を作るとかかな?」
未来「いや、偽の貨幣使用したら当然逮捕されるぞ?」
レオン「……その、何というか、IQが高いようで低いんだなお前。」
未来「へ?」

キャーーーーーーー!
未来「ん?何?特撮?いや、こんな時に誰かの悲鳴が聞こえるとか普通はな」
モンスター「コールドォォ!アイハバコールドオォ!」
女性「ゲホゲホ、うう……助けて……」
レオン「有り得たみたいだぞ、どうやら。」
道端に現れるレイドモンスター、襲われる民間人。このゲームでは日常茶飯事である。
死傷者も彼らがログインし続ける限り右肩あがりだ。
未来「何だろうな……俺ってモンスターを引き寄せる体質なのかな?この間あかりちゃんも攫われたし、ろくなこと起きねえよ、ホント。」
レオン「色んな意味で面倒くせえなお前。さて、まずは検索しますかね〜。えーっと、
アイハバコールド 細菌のような性質と巨大な体躯を持つアイハバ族の1種。風邪を引き起こす菌をばらまく。」
未来「なーんだ!ただの風邪か!」
レオン「なお感染した生命体は30分で死に至る。」
未来「いややばすぎるだろ!?絶対止めなきゃ!」
未来はデッキをセットしてボタンを押した。
未来「インストール!」
ローディングレイ
未来「おい!こんな時にロードしてんじゃねえ!」
ガシッ
未来はくるくる回るドローンを無理矢理掴んで頭に取り付けた。
レイダー!
レオン「面倒くせえ〜。インストール。」
ローディングレイドシステム!
レイダー!
レオンもレイダーに変身し、戦闘態勢に入る。そして、
未来「波動!」
モンスター「グエッ」
未来「噴石!」
モンスター「イタイ!」
レオン「ヘッドショット。」
モンスター「グフ!」
レオン「はい急所ー。んで、申し訳程度に凍らせて」
レオンは手から吹雪を出して病原菌(モンスター)を凍らせる。
未来「んじゃ、早く止め止め!サンダーストーーーム!」
未来は電蛇タイヤーを取り出すと高速で回転し、凍りついたモンスターを削り始めた。
レオン「何だそのだっせえ技名。まあでも、強いからいいかな。」
ガキーン!
氷がバラバラに砕け、アイハバコールドも完全に息絶えた。
なお、戦闘開始から終了までわずか1分半。
未来「よーし倒した!これで死の危険はなくなるはずだ。」
女性「ありがとうございます、本当に助かりました!」
女性は未来に何度もお辞儀をしながら去っていった。
レオン「なあ。」
未来「ん?」
レオン「良かったのか?記憶を消さなくて。」
未来「いいよ。何かかわいそうだし。」
レオン「確かにな。」
ピコンッ
未来「おっ、メッセージだ。」
グループロインに新着のメッセージが届いた。

一花『こっちの課題より現実の課題の方がやばいので皆ログアウトします。』

未来「そっかー。皆忙しいんだなー。課題の答え、実は全部アだって教えとこうかな。」
レオン「いや、そんなことはなかったぞ。」
未来「イイッ゙!?マジで!?昨日あんなに頑張って解いたのに!」
レオン「やれやれ……」
間の抜けた未来には調子が狂う、と思いつつ、密かに付き合うのも悪くないと思う、レオンであった。

住宅街 (夜)
音邪「おいおいおい、やっていいことと悪いことの区別もつかねえのか〜!このカスモンスター野郎!」
モンスター「グウウ!離せーー!」
そして数時間後、日夜感じの悪い音邪は、道端で出くわしたモンスターの首を絞めていた。なお、このモンスターと遭遇したのは4度目である。
音邪「ここまで俺の活動の邪魔をしたモンスターは初めてだ……俺がストリートピアノを始めて2秒でウイルスをバラ撒き、仕方ないからライブハウスに行けばまたもウイルスをバラ撒き、やっぱり仕方ないからサッカーをしていたら、友達全員ウイルスで殺すだけ殺して、謝りもせずそそくさと逃げやがって!俺が何をしたって言うんだ!エェ゙!?名前どおり吹けば飛ぶ存在のくせに、調子乗ってんじゃねえよ!」
音邪は今日は取り敢えず何かしたい気分だった。故に活動の1つや2つレイドモンスターに邪魔されたところで、他の事をやればいいだけの話。
しかし、このモンスターはそれら全てをことごとく邪魔してしまった。
怒られて当然である。
モンスター「や、やかましい!私はアイハバ・アンオルク!ウイルス民族の王なんだ!あんな三密が揃ったような状況、見過ごせるものか」
音邪「うるせえ!青春ってのは密なんだよーーー!」
バゴン!
音邪は変身もせずモンスターをぶん殴り、10m先までモンスターをぶっ飛ばした。
モンスター「ぐはーー!おのれー!多様性の時代に、私の個性を否定するのか!?」
音邪「あのねえ!他人に迷惑をかける行為を『個性』として周囲に認めさせるのはね、ただの横暴なんですね、はい。うちの同級生に銃をぶっ放すのが個性の奴がいますがね、あんな奴放っておいたら大問題ですよ、はい。ん〜マアデモオレハシラ
話を戻すぜ!つまるところお前は死ぬべき存在!というわけで死刑!」
モンスター「最後頭わるっ!?」
音邪「うるせえ!死ねーーー!」
音邪は走り出して必殺技を発動する。
モンスター「うおお!こんな馬鹿げた理由で死ねるか!!死ぬのはお前だーー!!」
アンオルクも自身の武器、荒対剣で音邪を倒しに行く。
音邪とアンオルク、先に攻撃したのはアンオルクだった。
しかし、
バキッ
音邪「その剣では悪魔と化した俺の肉体は貫けない。」
モンスター「なっ!?お、折れた!?」
サタンストライク!
音邪「消えろ。」 
モンスター「グハア!?」
モンスターは音邪の必殺の蹴りをもろにくらった。
音邪「じゃあな。」
モンスター「ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!?」
モンスターは体が霧散し、死亡した。
音邪「ハーッハッハッハ!やはり、この俺こそが!真のヒーローなんだ!正義は勝つ!アーハッハッハッハッハ……アッ」
盛大にダサいセリフを吐き、油断していた音邪。しかし、目の前には
NPC H「………あう!え、えっと、えっと、わ、私はその、な、何も見なかったということで〜……アハハ……」
同級生がいた。

音邪「み  た  な」

ゲームルール
プレイヤーは自由にログイン、ログアウトができる。

次回予告
未来「よっしゃーー!ついに10円玉2枚、取り返したぜーーー!」
レオン「お、おう……良かったな……ところで、どうやったんだ?」
未来「自販機をマスゲトで直して、しっかり出してもらった!」
レオン「ほう、まともな使い方だな。」
未来「いやー、俺さ、弁護士目指してるからさ〜、やっぱ法に抵触するのちょっと抵抗あるんだよね〜。だからさ、やっぱこうやって合法で解決しないと、性に合わないわ。」
レオン「残念だが、課題の正答率を見る限り司法試験は大分厳しいと思うぞ。」
未来「お、おい!それを言うなって!何だよもう、応援してくれよ!」
次回 enter the blue spring 第11話 街を駆ける
分かったよ、せいぜい足掻け(笑)








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?