【創作の中毒×中毒の創作31】
「マッドサイエンティストめ」
俺はドクターに殴りかかった。
これは、自分でも想像していなかった行動である。
「いてて」
医師は頬を抑えたまま蹲った。
「大丈夫ですか」
俺は医師の傍らに、座り込んだ。
「大丈夫じゃないよ」
「本当だ。腫れている。かわいそうに」
「かわいそうにじゃないよ。殴ったのは君だろ」
「それはそうだが」
「ふざけるな。患者のくせに。このキ●ガイめ」
医師は、俺の靴の先に唾を吐きかけてきた。
言っていることも、行動もマトモな医師のすることではない。
「おい。きたねえだろ。なめろよ」
俺は怒鳴った。
言わずもがな、自分の医師に対して、こんな言葉をつかったことはない。
さらに、
『ドカッドカッ』
俺は、医師の腹部を唾のついた靴の先で、何度も蹴り上げていた。
「ごはっ」
医師は血を吐いた。
アスファルトの地面に血だまりができている。
「マズい」
俺は走り出した。
(死んだな)
俺は、自分が生まれて初めて犯罪者になったと思った。
とにかく遠くまで走れ。
俺は、動かなくなった医師の死体に背を向けて、全速力で走り続けている。