【小説】#半グレ・決闘・骨肉の争い(ショートショート)
「殺してやる」
俺は言った。
唾を吐いて、前に進み出る。
目を凝らして、暗闇に潜んでいる敵の姿を探す。
「こんな倉庫に呼び出して、どうするつもりだ」
俺はポケットの中に手を入れる。
倉庫は真っ暗だ。
こっちの恐怖心をあおる為に、相手が照明を落としたのは間違いない。
なめるな。
「上等だよ」
前方から声が聞こえた。
タクヤだ。タクヤ(通称・般若)とは腐れ縁、腐れ血縁とでも言えばいいか。
「キサマは俺たちを裏切って、勝手に品川グループと手を組んだんだ。裏切りは許せねえ」
俺は怒鳴った。
タクヤは、闇の中で凶器を構えているのだろう。銃оrナイフ。いつでも、俺を攻撃するつもりに決まっている。
俺は、コルト・ガバメントをポケットに忍ばせている。
コルトを使用するのは、最終手段だ。
相手が、暴挙に出た時だけだ。
「うるせえ。品川グループに、媚びを売っていたのはキサマの方だろ。今回は、キサマがリーダーを務める六本木グループに、愛想をつかして抜けたヤツが5名いる。5名ともキサマが初めに裏切ったと証言している」
タクヤが主張する。
「まず、武器を置けよ」
タクヤが繰り返す。
倉庫の中は、まだ照明がつかないようだ。
恐怖。覚醒剤絡みの争いとはいえ、実の従弟同士がここまで憎しみ合うことになるとは。
「ポケットから手を出せよ」
とタクヤ。
(どうも、ちょっとおかしい)
肉眼で、こっちが見えるはずがなかった。
どうやら自分だけ赤外線スコープを使用しているようだ。
汚いヤツ。
「ポケットから手を出せよ。俺は武器を持っていないから安心しろ」
タクヤの声。
一瞬、闇の中で何か光った。
日本刀である。
「騙された」
俺は、コルトを抜いた。
――俺は銃口を向けると、遂に引き金に指をかけた。
「コンコン」
ノックをする音。
電気がつく。
そこには、俺とタクヤのママが立っていた。
二人とも、鬼のような形相である。
「うるさいわね。一階のリビングルームにも聞こえるのよ」
「いい加減にしなさいよ」
ママたちが言った。
「ママ、ごめんなさい。タクヤ君と、半グレごっこしてたの」
俺は頭を下げた。
俺とタクヤは、武器を捨てる。
「半グレごっこ? この前、ニュースで話題になった事件ね」
「ダメね。子供がテレビのマネするから」
ママたちは、プラスチック製の日本刀や、偽物のコルトをゴミ箱に捨てている。
「小学校最後の夏休みだから、従弟のタクヤ君が遊びに来てくれたんでしょう。仲良くしてね」
ママは、まだ、ご機嫌ななめである。
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