シン【ソウサクの中毒⇔中毒のソウサク③

「ソウサク、ソウサクやい」
 ドアが勝手に開いた。
 母親が部屋の中を覗き込んでくる。

「ドア勝手に開けるなよ。こっちは、開けていいと言ってないだろ、無礼だろ。“どこでもドア”じゃないんだから」
 俺は文句を言った。
 俺は勃起したペ●スを隠しながら、母親を睨みつけている。

「ソウサクやい。アタシはソウサクのことを心配しているんだよ。今、独り言ブツブツ言っていたけどアタマ大丈夫かい?」

「アタマ大丈夫って。それ自分の息子に言うことかよ」
 俺が怒鳴る。
 俺にとっては、ウザいオフクロの存在そのものが悩みのタネなのだ。

「悪夢でも見たのかい?」
「悪夢?」
 俺の脳裏に、白塗りした人々の映像がよぎっていった。

「ソウサク。ソウサクは、子どもの頃からおかしな夢を見てうなされる癖があったからね。アタシに言ってごらん。悩みがあるなら、人に言うと楽になるよ」
 お袋は、疑るような目をして話し続ける。
 どうやら俺が、股間を隠していることに気がついているようだ。
 
「うるせえよ」
「うるさいですって」
「ああ。うるさいよ、マザーファッカー」
 俺は、ドアを閉めた。
 ようやく、母親を部屋から追い出した。
 
 次の瞬間
「ドガガガガガガ」何かが階段から転げ落ちる音がした。

「嘘だろ」
 俺は勢い余って、母親を殺めてしまったのか。
「お袋、冗談は顔だけにしてくれ」
 俺は慌てて廊下に飛び出した。(④へ続く)

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