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塔8月号 若葉集掲載歌


171p

8月号の短歌は、「ブラックジャック展」に行った時の歌たちでした。

この展覧会は、本当に凄くて、何室もある会場の一室一室が天井までブラックジャックの漫画で埋め尽くされていたのです。
夥しい漫画のコマ。
テーマごとに分けられて、または一話ごとにまとめられて。

本当に物語が、激しく降る雨のように、天から途切れることなく降り続けるのです。


このひとコマひとコマを、手塚治虫は描いたのか。
毎週毎週、一話完結の物語を生み出していたのか。
それは、まるで狂気のような物語の数で。

そしてこの展覧会は、出版社が全面的に協賛していて、企画者は全部の原画を読み、コマを選び、並べ。
それはきっと何ヶ月も続く果てしのない作業だったはずで。

描いた手塚治虫も狂気じみているし、この展覧会を催し方も狂気じみてる、そんな途方もない熱量を感じて、私はくらくらしてしまって。


そんな、展覧会の歌たちでした。


今年三月のNHK短歌大会で、永田さんが河野裕子さんが「ブラックジャック」が好きだったという話をされてて。
新刊が出ると三冊買ってきたと。
一冊は河野裕子さんの分、一冊は永田紅さんの分、そしてあと一冊(あれ?2冊だったかも)
誰かが読み終わるまで待てないからそうしてたと仰っていて。
河野裕子さんの大好きだった漫画を全身で浴びたのか、と思うと、この展覧会を見たのもひとつのご縁だったかと思ったりして。

まぁ、勢いだけで詠んだので、出来はイマイチだったかもしれませんが。
でも、私には思い出深い歌になったのでした。

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