塔8月号 若葉集より好きな歌五首
毎月恒例になってきました、短歌結社誌「塔」・若葉集から、私の好きな歌五首です。
いつものように敬称略、個人的な感想を綴ります。
もし、作者の方で、「こんなこと書いてほしくない!」という方がいらしたら、すぐにご連絡ください。削除します。
連作のほかの歌から、あの3.11のことについての歌だとわかります。
大林さんは、宮城にお住まい。あの震災で大きな被害を受けた地域です。
この連作を読んで、どのくらい月日が経とうとも、やはり想いはそこへ帰ってゆくのだなぁ、ということを思いました。
美しく詠っていらっしゃいますけれど、その内にあるとても大きな悲しみを感じました。
満月の光は、降り積もり降り積もり、いつまでも骨を照らし続けるのだろうと思います。
このお歌には、とても共感しました。
なにせ、私もまったく同じだからです。
私は厳密には二十歳まで同居していましたが、短大を家から遠い場所に選んだので、往復に時間がとられ、早朝から深夜まで家にいませんでした。
そして、卒業後、職場に通えるところに引っ越しましたので、母から料理を習う時間がありませんでした。あ、いや、本来なら、もっと幼いころにお手伝いでもして、少し母と一緒に料理などすればよかったのですが、それもやらない親不孝な娘でした(^^;;)
その後、私の場合、二十二で母が脳卒中で倒れてしまい、なにもかもの記憶を失ったので、たとえば結婚するから、と料理を教えてもらう、ということもできませんでした。すべて、本で覚えました。
それも、ちょっとした後悔とともに心に残っています。
YASUKOさんも、そうなのだな……、お互い、切ないですね、と思って読みました。
引っ越しをする準備をしているのだと思います。
長く住んでいたのでしょうか。さまざまなものを整理し、新生活に必要のないものを捨てていきます。その中には、雑誌や本もあったことでしょう。なにかメモを書きつけた紙もあったのかもしれません。
そんなたくさんの片づけの様子を、「これはうれしい紙これは悲しい靴」と詠まれます。
「紙」と「靴」という選択がとても効いているように思いました。
記憶が紙や靴と結びついている。
こうして、短歌など、文字で表現する人ならではだと思います。
実際にその紙になにかが書きつけたあるわけではないでしょう。そもそも紙ごみなんて、そんなに出なかったのかもしれません。それでも、「記憶」は「紙」や「靴」に結びついているのです。
新生活が佳き滑り出しであることを祈っております。
子どもの点・点と脱ぎ散らかした靴下を集める日常的な動作が、どうしてこんなに綺麗な歌になるのでしょう。
小金森まきさんは、いつもながらとても素敵な、詩情あふれる歌を詠まれるなぁ、と、ほうっとため息が出ます。
連作の中の
「このなかにちつちやいママがすんでるの」つみきの家のわれに会ひたし
というお歌も好きです。
この感性、すごいですよね!
明朝体の歌を読んだときに、じゃぁ、ゴシック体はどんなかなぁ、と思っていると、つぎつぎと「江戸勘亭流」まで続くのです。
そんな風に字を思える余裕とユーモアがとても好きです。
そして一回読んでしまうと、もう明朝は優等生に、ゴシックは運動部のガタイのいい人にしか見えなくなります。
これからは文字を読むのが楽しくなりそうな連作でした。
以上、いつものように、好き勝手書きました。
いつも、素敵な歌を読ませてくれる、「塔」の若葉集が、大好きです。
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