進むコメ離れ コメ中心のライフスタイルで日本の食料自給率を救え
【安全の国をつくる】第7回 黒瀬さん取材レポ
一日三食、コメを食べる人は日本にどれほどいるだろう。日本の主要作物であるコメを食べ、守っていくことが、今後の日本の自給率を支える鍵になるのではないか。「ほんの少しのライフスタイルの変化だけでも、日本の自給率は大きく変わる――」。そう語るのは、秋田県大潟村で農業を始めて17年のコメ農家、黒瀬友基さんだ。
NHKのデータによれば、62年前の1962年に比べると、現在のコメの消費量は半分以下にまで落ち込んでいるという[1]。食の多様化や、低糖質志向の影響により、コメが選ばれなくなってきているのだ。こうした現状を踏まえ、コメづくりの現場大潟村では、消費者に安心してコメを買ってもらえる工夫が進んでいる。例えば、有機農法の一つ、合鴨農法だ。通常、稲の成長を妨げる雑草を除去するために除草剤を撒くところを、約600羽の鴨のヒナを水田に放し、餌として草を食べさせ駆除させる方法である。鴨が食べる草にもばらつきが出るため多少の不出来はあるものの、一切農薬を使わないという点では消費者安心の「天然の除草剤」なのだ。
しかし、有機農法で成功してきた大潟村も陰りが出てきている。1964年、大潟村では全国から入植者が募集され、日本農業のモデルとして大規模な豊かな水稲栽培を確立し[2]、全国5位の水稲生産を誇る[3]。当初はコメの需要や売上の安定性から、後継者が自然とやって来る土地であったが、近年の需要の大幅な低下などにより、大潟村の拡大はストップしてしまっている。農業従事者の減少は、コメの主要な生産現場にとって懸念材料である。
重要なのは、消費者の行動ひとつが、日本の食料自給を変えるということだ。現状日本の食料自給率は38%と言われているが、これはカロリーベースの数値、すなわち国民一人当たりの1日の摂取カロリーの中で国産品が占める割合を指す。品目別で見れば、コメは日本国内でのほぼ100%の生産量を実現しており、かつ栄養価も高いため、コメの消費が増えれば必然と日本の自給率は向上する。
日本の食料自給率に影響を与えうる私たちが、日頃の食生活を振り返り、今後日本が「安全の国」であるためには何が必要か、考える意義は大きい。
大潟村でのコメ生産をヒントに、食の安全について話し合ってみませんか?
(文責・山浦理桜)
[1] 農林水産省(2022)「お米と安全保障」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_majime/content/attach/pdf/food-1.pdf
[2] 大潟村役場 総務企画課「大潟村の農地と農業の移り変わり」
https://www.vill.ogata.akita.jp/encyclopedia/agriculture/index.html
[3] 農林水産省 東北農政局統計部(2023)「まふナビ東北:水稲の生産量」
https://www.maff.go.jp/tohoku/stinfo/bunseki/attach/pdf/maffnabi-22.pdf
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